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石井光太氏の『43回の殺意』

石井光太氏の「43回の殺意」という本小説以外の本
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川崎中1男子生徒殺害事件のことを思いだせない人は少ないだろう。しかし、知っていることはほんの一部である。『43回の殺意』を読み終えたとき、マスコミやインターネットの情報では語られていなかった真実を知ることになるだろう。

【目次】
  • プロローグP1〜
  • 第1章.惨殺P17〜
  • 第2章.家族P65〜
  • 第3章.逮捕P117〜
  • 第4章.犯人P171〜
  • 第5章.遺族P237〜
  • エピローグP270〜
  • あとがきP286〜

「僕が新太郎に手を上げたのは、しつけのためです。虐待をしたわけじゃありません」
「しつけって言っても手を上げたわけですよね」
「それはそうですが……」
「やったならば、虐待です。子供の嫌がることをしてはいけません」
「ちょっと待ってください。悪いことをしたり、約束を守らなかったりしたら、親としては叩いてでもわからせようとするのは当然でしょ。そんなことを一々虐待と言っていたら何もできない」
「手を出すことは一切認められません。お父様がそれをしているのを確認すれば、我々はお子さんを保護することになります」
「何を言ってるんだ。だったら、もし子供が他人の命を奪おうとしたらどうするんだ。それを殴ってでも止めるのが親だろ。それも虐待だって言うのか」
「いかなる理由があっても、子供に手を出すことは認められません」P82〜83

上村遼太くんの父親と、児童養護施設の職員の会話である。新太郎とは遼太くんの兄だ。遼太くんの両親がまだ離婚するまえのことであり、この一件が離婚のきっかけになっている。

たしかに子どもに暴力をふるうのはよくないが、「子供が嫌がることをしてはいけません」というのはおかしな話である。

そんなことを言いだしたら、なにもできなくなるだろう。親は子どものイエスマンではないのだから……。

虎男は未成年だったため、事件後の報道では虎男の暴力とアルコールの関係性についてほとんど語られてこなかった。だが、松本俊彦氏(国立精神・神経医療研究センター部長)は、事件の経緯からするにアルコールの影響が事件に一定の関与をした可能性を指摘している。ちなみに、犯罪とアルコールの影響は深く、「傷害および殺人事件」の40〜60パーセント、「強姦事件」の30〜70パーセント、「DV事件」の40〜80パーセントにアルコールが関係しているという。(「毎日新聞」2015年4月9日)P205

虎男というのは、主犯の少年Aのことである。酒癖が悪いことは有名だったようで、自転車で通りかかった50代の男性を鉄パイプで殴ったことがあるという。50代の男性はなにもしていないのに、ただ通りかかっただけで殴られたのだ。

そのときも酒を呑んでいた虎男は、殴った記憶がないと言ったのだとか……。この事件で少年鑑別所へ送られて保護観察処分を下されたが、虎男は生活態度をあらためることはなかったようだ。

今は、もう事件のことで騒がれたくないという気持ちが大きいかな。ただ、時間が経つにつれて、遼太のことが人々の記憶から薄れていっていることも実感しています。
僕としては、世間から忘れられるのは仕方ないにしても、遼太のことを知っている同級生や大人たちの記憶の片隅には残ってくれないかなという思いがあります。やっぱり、一方的に殺されて、誰にも覚えていてもらえないというのはつらい。P267

遼太くんの父親の言葉である。読書中は、腹が立つかもしれないし、悲しい気持ちになり涙をこらえられなくなるかもしない。

この『43回の殺意』という書籍を読むことによって、ひとりでも多くの人の記憶がよみがえり、遼太くんのことが心に残ることを願っている。

上村遼太くんのご冥福をお祈りいたします。

二〇一五年二月二十日、神奈川県川崎市の多摩川河川敷で十三歳の少年の全裸遺体が発見された。事件から一週間、逮捕されたのは十七歳と十八歳の未成年三人。彼らがたった1時間のうちに、カッターの刃が折れてもなお少年を切り付け負わせた傷は、全身43カ所に及ぶ。そこにあったあまりに理不尽な殺意、そして逡巡。立ち止まることもできずに少年たちはなぜ地獄へと向かったのだろうか。インターネットを中心に巻き起こった「犯人捜し」の狂騒。河川敷を訪れた1万人近くの献花の人々の「善意」。同じグループで「居場所」を共有していた友人たちの証言。遺族の「涸れることのない涙」―浮かび上がる慟哭の瞬間。

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