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『純子』-赤松利市氏-少女はフェーロモンを放つ女性になれるのか……

赤松利市氏の純子という本小説
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今回は、2019年07月16日に発刊された赤松利市氏の『純子』を紹介する。

汚い話が出てくるので、食事中の方は食後に以下を読むことをおすすめする。汚い話が無理な人は、ここから先を読まないほうがいいだろう。

発売日に大型書店へ駆けつけたわたしは、楽しみにしていた本書を手にとった。その瞬間、帯に書かれた文言が眼に飛びこんできて、「2度見、3度見し」→「またたきし」→「眼をこらした」のである。

“少女とうんこのとても美しい物語”と書かれていたからだ。うんこ?何度も見たが、うんこなのである。「なんじゃそりゃ」と思いつつ購入して読みはじめた。そして読了したとき、「最高だ!」と歓喜したのである。

ということで、少女とうんこのとても美しい物語”である、赤松利市氏の『純子』のあらすじと感想を書いていく。

便所に三匹の蛙

昭和33年〜の話である。舞台は、

純子の暮らす里はしみやまと呼ばれていた。名の通り水が沁み出る里だった。
その水をもたらしているのが西瓜すいかぶちだ。豊饒な湧水の淵だった。
讃岐さぬき山脈の北斜面に里はある。山深い里には家々が二、三軒ずつ固まって点在している。西瓜淵を源流とする里の外れの川縁に一軒離れて建つあばら家が純子の家だ。P17

その家に、祖父、祖母、叔父の4人で暮らしている。祖父と叔父は、里の家々の下肥を汲んで駄賃をもらっていた。つまり、うんこをかき集めて運ぶということだ。

そして、祖母は駄賃の集金と仕事伺いをしていて、純子は小学校に上がる前から仕事伺いに付き合わされていた。竹竿を持っていき、それを暗い便槽につき入れて、糞尿のたまり具合を確かめる。これらを勝手にやるのだ。

あげくの果てに、竹竿に付着した糞を指でさわって舐めるふりをしたり、糞の臭いを嗅いでみたりしたのち、「変な味がする、血が混ざっている、これは病気の兆候だ」と告げ、「こんなことを吹聴されたら大変だ」と脅しのようなことを言うのだった。

その結果、小金、米や野菜などをもらうことができるのだ。そんなことをして、4人は逼迫しているものの、なんとか生活をしている。

ある目的のために、祖母は里人が読み古した成人雑誌をもらってくるのだ。毎夜、純子に卑猥な記事を読み聞かし、純子をフェーロモンが出る女にするのだという。

「なあなあ、バアチャン。どうやったら、そのフェーロモンを出せるようになるんじゃ。オレもフェーロモンが出る女になりたいけん」
「そうそう簡単に出せるものではないわ。それに誰ばれ、出せるもんじゃないけん。あれは、選ばれた女の股から自然と出るものなんよ。ただしフェーロモンが出る女は、千人、万人にひとりじゃけん。バアチャンもくるわで働いているときにはフェーロモンが出たけんな。フェーロモンが出ると、男は忽ち畜生になったもんよ」P27

祖母の目的は、純子をフェーロモンが出る女にして売り飛ばし、4人が貧乏な生活から抜け出せるようにすることだった。

祖母の願いは叶うのか……純子の住む農村がピンチに陥り、それを救えるのは純子だけ?……その方法は……ラストを知った読者は茫然自失!……という物語である。

祖母のキャラクターがすばらしい。たとえば、誰かれ構わずに成人雑誌をもらってくるので、色狂いのババアと陰口を叩かれている。そのため、「恥ずかしいからやめてくれ」という叔父に対して、

「陰口なんぞ糞喰らえじゃ。純子を、蜜の滴る女にするんじゃけに。それしかオレらが、今の暮らしから逃れる方はないんじゃけに。中学を出たら、どこぞの商家に奉公に出す。こんな貧乏人しかおらん里じゃ埒が明かん。町場じゃ。高松でも岡山でもええ。広島もある。神戸も大阪もある。奉公先で御手付きにでもなったらしめたもんじゃ。嫁でのうてもええ、妾でも構わんきに。何にしろ高う売れる女に育てるんじゃ。それしかオレらが、糞担ぎの仕事から逃れる途はないんじゃけに。先のことも分からん糞蠅なおまえが、あれこれ口出しすな。おまえは黙って、他人様の糞尿を運んどったらええんじゃ。この糞蠅めが。糞を担ぐしか能がないなら糞を担げ。ジイチャンと一緒に、できるかぎりの糞を担ぐんじゃ。糞じゃ、糞。今の暮らしから抜け出るために、純子を磨かなあかんのじゃ。そのためにはゼニが居る。お前の担いだ糞がゼニになる。糞を担ぐんじゃ。糞を担いだらええんじゃけに。オマエは黙って糞を担いどれ。糞じゃ糞、糞尿じゃ。糞を担ぐんじゃ。この糞蠅めが」P25〜26

「糞」を連発しすぎである。それに、叔父はひどい言われようだ。「糞蠅」って……。

「覚悟して読んでください。」「汚くて過激な昭和のファンタジー小説です。」と帯に書かれているので、汚い話が苦手な人におすすめすることはできない。ここでは書いていないが、もっとひどい(汚い)描写がたくさんある。

ぶっ飛んだ内容と、ユーモアがあふれているため、個人的にはかなりおすすめである。なにかを食べながらこの本を読むのは絶対にやめておいたほうがいいだろう。

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