志駕晃氏は、「スマホを落としただけなのに」の著者である。そのシリーズの第3弾なのかと思って本作を購入したが、ちがったようだ。つまり、著者のことを知らなかった人や、シリーズを読んでいない人であっても、『あなたもスマホに殺される』を読んだ場合、まったく問題はない。
ということで、あらすじと感想を書いていく。
主人公は公立中学校の男性教師である。慢性的な不眠症に悩まされ、毎日のようにベッドをぬけだして暗いリビングでスマホをいじる。それが日課になっていた。怪しいメールが送られてきたその日も、深夜の3時なのにリビングでスマホをいじっていた。
いよいよやることがなくなって、もう一度メールの転送アプリをチェックする。つい十分前にも同じことをしていたので、こんな深夜に新しいメールが着信していて驚いた。
その表題には、「自殺相談室」と書かれていた。
その不穏な表題に、強い警戒心とともに強い好奇心を私は抱いた。P6
さらに表題には「一人で悩んでいる人にアドバイスをしてあげてください。ゲーム感覚の新しいソーシャルネットワークサービスです」と書かれていて、職業的な好奇心から本文を読んでみたのだった。
「中学二年の男子です。学校でひどいいじめにあっています。明日、学校に行きたくありません。こんな僕にアドバイスをしてください。○先生に相談する○友達に相談する○親に相談する○自殺する(選択肢の中から一つを選び、送信してください)」P7
選択肢のなかからひとつを選んで送ったが、「先生に相談をしたら、もっといじめがひどくなった」とか「友達はいません」とか「両親はケンカばかりしているので、相談できない」という文言が返ってくるのだ。
けっきょく、『○自殺する』を選ばせるためのゲームなのか……それとも、これにはなにか目的があるのだろうか……。そして10回以上も『○自殺する』以外の選択肢を選び、それを送りつづけると、
「お疲れ様でした。本日は、10自殺ポイントを進呈します。どうもありがとうございました。自殺相談室」
自殺ポイント?
……なんだ、やっぱりゲームだったのか。
ちょっとがっかりもしたが、その反面ちょっとホッとした気持ちにもなった。自殺ポイントという言葉はかなりブラックだが、このゲームは案外流行るかもしれない。――P13
そして、主人公はいろいろな悩みを解決していくことにのめり込んでいき、学校の教師や生徒たちにも「自殺相談室」が蔓延する。その結果、新人教師が自殺してしまう。「自殺相談室」とはなんなのか……という話である。
この作品は、すぐに読むことをおすすめする。いらない情報をどこかで得てしまう可能性があるからだ。それを知ったとしても楽しむことはできるが、知らずに読めばもっと楽しめるだろう。
ミステリー好きにはたまらない仕掛けがあり、それは帯に書かれることがしばしばある。帯に書いたらかなり売れると思うが、わたしとしては書かなかったことをとても高評価している。出版社のKADOKAWAに感謝したい。ありがたいことである。
志駕晃氏はほかにもおもしろい作品を書いているので、下の記事を参考にしていただければうれしい。


2019年8月現在の最新刊である「オレオレの巣窟」がかなりおすすめ!

ついでに下記の3つの記事を見ていだければ幸いである。きっと読みたくなるミステリー小説を見つけることができるだろう。



中学教師・鈴木のスマホに、ある日「自殺相談室」という怪しいSNSから招待が届いた。自殺志願者の匿名の相談に、4択から1つ意見を選び答えていく中で、鈴木は他人の人生を覗き見るような感覚の虜になっていく。しかし、担当クラスの女子生徒・雨宮を招待して以降、いつのまにか「自殺相談室」が学校中に蔓延し、ついには新人教師の山本が自殺してしまい…。あなたも他人事ではいられない、驚愕のサイバー・ミステリー!
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