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『カッティング・エッジ』-ジェフリー・ディーヴァー氏-構成の巧妙さに愕然!

4.5
ジェフリー・ディーヴァー氏の『カッティング・エッジ』という本海外ミステリー
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シリーズ14作目の『カッティング・エッジ』を紹介する。本書の帯には「シリーズ原点回帰の傑作」と書かれいるが、傑作という文言を使ってハードルをあげてしまって大丈夫だろうか……そう思いながら手にとったのである。

前作の『ブラックスクリーム』はちょっとできがよくなかったため、本書を手にとるまえは今回の作品に対してハードルがさがっていた。あまり期待していなかったのである。

にもかかわらず、帯を使ってハードルをあげてしまうのは、愚行としか言いようがないのでは?

そんなふうにプンプン怒りつつ読みはじめたのだった。

そして読了した結果、すばらしい作品だったのである。しかし、このシリーズのほかの作品を読んでいない人におすすめすることはできない。

そのため、前作のあらすじとシリーズの順番を知りたい人は、下の記事を参考にしていただければ幸いである。

【ブラック・スクリーム】リンカーン・ライムシリーズ13作目!
今回は、ジェフリー・ディーヴァーの『ブラック・スクリーム』を紹介していく。成人男性ひとりが、べつの成人男性ひとりに路上で拉致される。それを目撃していたのは、9歳の女の子だけだった。子供ひとりの証言では頼りないが、犯人が名刺代わりに首吊り縄を置いていったことから、ライムたちは犯人を追うことになる。

ということで、『カッティング・エッジ』のあらすじと感想を書いていく。

ダイヤモンドとカエル

殺人事件が起きた。現場はダイヤモンド店である。ダイヤモンド店の経営者とカップルが殺害されたのだ。しかし犯行の目的を推測できず、現場に駆けつけたアメリア・サックスは苦悩する。

ダイヤモンド店の商品にいっさい手をつけず、3人の所持品を奪取することもなく、犯人は立ち去っているからだ。殺害することが目的だったのか……それならわざわざカメラなどのセキュリティがある店内で殺した理由はなんだったのか……。

店の経営者のジャティン・パテルもやはり喉をかき切られて死んでいた。一つ違うのは拷問を受けている点だ。P35

サックスは最終的にひとつの仮説を導きだしのだった。犯行におよぶまえに自分の顔を見たかもしれない〈S〉という人物の名前を訊き出すために経営者を拷問した。そして、立ち去る直前に店に入ってきた〈VL〉という人物を殺し損ねて逃げられる。

これほど陰惨な犯罪を無造作にやってのける男が、目撃者を生かしておくわけがない。P47

犯人を追うとももに、〈S〉と〈VL〉という人物をさがして保護することを決めたのだ。

にわとり

いやしい“クーリ”を二羽、見つけ出さなくてはならない。
鶏を二羽、切り刻んで茹でてやらなくては……
知りすぎた二羽のクーリ
とっくに死んでいるはずだった鶏。なのにまんまと逃げた鶏。
情けない、情けない、情けない話だ。だが、何もかもがかならず思いどおりに進むとはかぎらない。P56

一方、上記は犯人の最初の描写である。やはりふたりの人物を狙っているようだ。そして犯人は、ニューヨーク周辺のテレビ局やラジオ局にプリペイド携帯を使ってメールを送るのだった。

婚約の概念は、男が許嫁いいなずけと契りを結ぶという拘束力のある約束に基づく。私にも約束プロミスがある。私はおまえゝゝゝを探している。あらゆる場所を探している。指輪を買い、美しい指にはめよ。私はおまえを見つけ出す。おまえは愛のために血を流すだろう。

プロミサー

P104〜105

「プロミサー」と名乗る犯人は、なにが目的なのだろうか……「ダイヤモンド店で3人を殺す」→「目撃されたから目撃者を殺す」。

5RIRA
5RIRA

あれ? 当初の目的はなんだったのだろうか

ライムは犯人にむけて問うた――なぜだ。おまえはなぜこんなことをする?
「その答えは単純明快」女性の艶のある声が答えた。
ライムは向きを変えた。いつのまにか、アメリア・サックスがブルックリンから戻ってきていた。それに、ライムは気づかぬうちに疑問を口に出していたらしい。ライムは尋ねた。「単純明快な答えとは何だ」
「単に頭がおかしいのよ」P129

サックスがリンカーンに言っているように、単に頭がおかしい犯人が、わけのわからない理由で殺人をつづけているのだろうか……。

指輪と寝るカエル

男は愉快そうに眺めていた。「苦しそうだな、めんどり。これでわかったろう。ダイヤモンドを痛めつけると、ダイヤモンドがおまえを痛い目に遭わせる」P200

結婚間近の女性を襲い、指にはめた婚約指輪を飲みこむか、ナイフで喉を切られるか……どちらかを選べと言うのだ。

そのあと、女性が指輪をのんだとき、プロミサーが上記のセリフを言うのである。

ほかにも、

「ダイヤモンド、大地を罪から救う」男は乗り出していた体を起こし、カッターナイフの三角形の切っ先を二人に交互に向けた。
こいつ、本当にいかれているらしいぞ。
床に座らされ、両手を背後で縛られてはいたが、マイキーは角度や距離を目測した。今回は慎重にいこう。
男が言った。「なのに、レイプされた。だいなしになった。大地の魂、つまらないかけらになって、おまえの指にはまっている」
「ごめんなさい。私……私たち、そんなつもりはなかったの」
男はエマの手を引き寄せて光にかざした。「見えるか」
ダイヤモンドがプリズムのように日射しを跳ね返し、七色の光が周囲を舞った。
男がささやき声で言う。「この光、“ファイア”だ。神の怒りのファイアだよ。奇跡を切り刻んで、おまえの指を飾るちっぽけな歯にしたせいだ」P113〜114

プロミサーが結婚間近のカップルを襲ったときの描写である。頭のイカれ具合がわかることだろう。

それに、ここでは触れないが、いろいろなことが起きるのだ。物語の後半、それらがつぎつぎとつながっていき、「どんだけひっくり返すんだよ!」となるはずである。ジェフリー・ディーヴァー氏の得意芸である複雑な構成になっているので、絶対に楽しめるだろう。

だが、シリーズ7番目の『ウォッチメイカー』という作品の内容に触れている箇所があるため、『カッティング・エッジ』を『ウォッチメイカー』よりもさきに読むのはやめておいたほうがいいだろう。

まあ、『カッティング・エッジ』をさきに読んでしまうような人はかなり少ないと思うが……。未読の人は楽しんでちょうだいな!

【ブラック・スクリーム】リンカーン・ライムシリーズ13作目!
今回は、ジェフリー・ディーヴァーの『ブラック・スクリーム』を紹介していく。成人男性ひとりが、べつの成人男性ひとりに路上で拉致される。それを目撃していたのは、9歳の女の子だけだった。子供ひとりの証言では頼りないが、犯人が名刺代わりに首吊り縄を置いていったことから、ライムたちは犯人を追うことになる。

イタリアを舞台にした前作『ブラック・スクリーム』から一転、ニューヨークに跳梁する殺人者との対決を描く本書は、『ボーン・コレクター』『ウォッチメイカー』の路線を引き継ぐ原点回帰の作品となりました。ダイヤへの妄執と婚約したカップルへの殺意を宣言する殺人者プロミサー。後半に入るや、次々に意外な真相が明らかになり、大胆な犯罪計画が姿を現わす―まさに“ドンデン返しの魔術師”ディーヴァーの面目躍如の傑作です。

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