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大門剛明氏-文庫本-『完全無罪』と『両刃の斧』の2作を紹介するよ!

大門剛明氏の完全無罪と両刃の斧という本国内ミステリー
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大門剛明氏といえば、「驚愕のラスト、横溝正史ミステリ大賞の傑作・社会派ミステリ」の『雪冤 (角川文庫)』という作品が有名である。

未読の人は、これから紹介する2作品とともにぜひ手にとってほしい。

完全無罪

主人公は若き女性弁護士である。

失礼します、と千紗は資料をめくった。飛びこんできた目次を見ただけで手が止まった。そこには『綾川(あやがわ)事件 再審請求資料』とあった。二十一年前に起きた少女誘拐殺人事件の資料だ。犯人はすでに逮捕されていて、無期懲役で服している。P21

被害者の毛髪が車内から発見されたため、有罪の証拠となった。それと、12日目の取り調べのときに自白し、遺体を棄てた場所を指示したのである。その男が無罪を主張しているという。

そしてこの事件が起きたころ、10キロ圏内で少女を狙う事件が3件起きている。ひとつは少女の失踪事件。最後のひとつが……主人公が誘拐された事件。つまり、主人公の若き女性弁護士は、誘拐された被害者のひとりだったのだ。

幼少のころの自分を誘拐した犯人は無期懲役の男だと思っていたが……その真相を女性弁護士は追うのである。

一方、警察組織を定年退職した男性の視点になる。現在は被害者サポートセンターで働き、犯罪被害者たちの相談を聞く日々である。しかし、あることがきっかけとなり孤立無援になってしまう。

そして現状から脱却するには、「無期懲役の男は無実でないという、新たな証拠を見つけること」だと……その結果、「自分たちがやった捜査や取り調べはまちがっていなかった」ということを証明するために、正義を貫くために、元刑事の男は動きだすのである。

「警察の正義とは犯人を逮捕すること、検察の正義は負けないこと、私のいた裁判所の正義とは法的安定性。はっきり言って全部、それだけでは意味のないものにすぎない。弁護人の正義だって同じさ。そんなことが通じないにもかかわらず決まりきった弁護をし、不当判決だ何だと吠えるだけで現実に目を向けていない。誰もが正義に埋没して、泣くのは無実の人間、弱い立場の者だけ……困難な戦いだ。だがこの歪んだ司法、腐りきった正義のあり方に風穴を開けてやろう」P83

正義とはなにか……。『慟哭の「冤罪」ミステリー』と帯に書かれている。中盤からこれでもかってほどひっくり返してくるので、かなり楽しめる作品である。

ミステリー好きなのに、「つまらない」と言われたら、わたしはお手あげかもしれない。

21年前の少女誘拐殺人事件の冤罪再審裁判に抜擢された期待の女性弁護士・松岡千紗。しかし、千紗はその事件で監禁された少女の一人だった。間一髪で自分を殺めたかも知れない容疑者に千紗は敢然と対峙する。罪を作り出す罪、「冤罪」法廷が迎える衝撃の結末。大ベストセラー『雪冤』を超える傑作。

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両刃の斧

15年まえに起きた未解決の殺人事件を捜査することになった。ひとり暮らしをしていた保育士の女性が、自宅で殺害されたという事件である。

殺害された女性の父親は刑事だったが、七年まえに定年退職している。その後輩刑事が事件を追うのだ。当時から家族ぐるみでつき合っているため、だれよりも犯人を捕まえたいと思っている。

元刑事の男性は不幸である。ふたりいた子どもはどちらも他界した。長女は殺害され、次女は急性骨髄性白血病。それに妻は現在、入院しているのだ。

そして、この事件が未解決事件専従捜査の対象になった直後、警察官が遺書を残して自殺する。

保育士の女性はストーカー被害を警察に相談していたこと、ストーカーは元警察官であること、ストーカーの氏名、それらのことを伝えようとしたが、上司に黙っておけと言われたこと、ストーカー相談の調書は破棄されていること……ということが書かれた遺書だった。

犯人の氏名が書かれていたため、事件を解決することができると思いきや……捜査をすすめて逮捕する直前、元警察官の男が何者かに殺害されてしまう。元刑事の父親が復讐のために殺害したのか……。

だとしたら、警察組織のなかでも一部の人間しか知らなかった情報だったため、それを漏洩させた人物がいるということになるのだ。

仲間が情報を洩らしたのか、先輩の元刑事が復讐のために殺害したのか……刑事は、真相を明かしてはいけない迷宮に立ち入ってしまったのだろうか。そう迷いながらも真相を追っていると、携帯電話に着信があり、

「川澄さん、両刃の斧というのを知っていますか」
「両刃の……斧?」
「ええ、両刃の斧はラブリュスと言って、怪物の閉じ込められた迷宮に掲げられていたそうです。ラブリュスはラビリンス、迷宮の語源とも言われています」
それがどうした。川澄は言いかけたが、先に相手が口を開いた。
「あなたには娘さんがいるんでしょう?」
「ああ?」
「迷宮を切り拓こうとするあなたの刃が、あなた自身や、大切な人を傷つけることにならないといいですがね」
「なんだと!」P241

相手は公衆電話からかけてきて、ボイスチェンジャーのような機械で声をかえているのだった。

そして読了したとき、複雑な気持ちにさせられる。そのため小田和正氏ではないが、感想を言葉にできない……。

さいごに

どちらもよい作品である。しかし似ている箇所が多い。そのようなことが気になり楽しめないという人は、間隔をあけて読むことをおすすめする。

捜査一課の刑事・柴崎の娘が刺殺体で見つかった。懸命な捜査にもかかわらず、事件は迷宮入りとなった。十五年後、後輩刑事の川澄は犯人と目される男の身元を特定。だが逮捕を目前に、男は殺害された―。殺したのは柴崎なのか。これは解いてはいけない迷宮だったのか。事件の裏に隠された、慟哭の真実とは?

15年前、京都。男子学生と十九歳の女性が殺され、一人の男が逮捕された。元弁護士の八木沼悦史は、死刑囚となった息子・慎一の冤罪を信じ、一人活動をしていた。だが、息子は面会を拒絶、弁護士に無罪を訴える手記を手渡す。一方、殺された女性の妹・菜摘に、真犯人を名乗る人物・メロスから電話が。メロスは悦史に自首の代償として五千万円を要求するが―。驚愕のラスト、横溝正史ミステリ大賞の傑作・社会派ミステリ。

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