今回はジェイソン・レナルズ氏の『エレベーター』を紹介する。書店で本書を手にとったとき、違和感を覚えたのである。上の写真を見ればわかるとおり、背表紙が左側にあるのだ。

上下が逆だったのか?
そう思うものの、帯が下側にあるのでまちがっていない。

あれ? それなら表と裏が逆なのか!
そんなこともなく、わたしはパラパラとページをめくってみたのである。
上の画像を見ればわかるように、この本は横書きなのだ。そして、「斬新な手法で描かれる復讐のゆくえは」と帯に書かれているし、10賞を受賞したらしい。そのため、読みたくなるのは必然なのである。
ということで、まずはあらすじを紹介する。本書の冒頭は、主人公の“ぼく”の自己紹介からはじまる。“ぼく”は、ウイリアム・ホロマン……ウイリアム……“ぼく”をよく知っているような人たちは、ウィルと呼ぶのだという。
ウィルには兄がいた。しかし、銃で撃たれて殺されてしまった。おとといのことである。そのため、だれがつくったのかわからない掟に従って、ウィルは復讐をしなければならないのだ。
掟
#1 涙
泣くな。
なにがあろうと、
けっして泣いてはならない。P37
#2 密告
密告はするな。
何があろうと、
けっして密告してはならない。P38#3 復讐
愛する誰かが
殺されたなら、殺したやつを
見つけだし、かならずそいつを
殺さなければならない。P39
掟に関する補足事項
掟には、かならず従わなければならない。
掟は、誰かに傷つけられた者こそが従うべきものである。
P41
ウィルは拳銃を隠し持ち、自宅のある8階からエレベーターを使って地上へむかう。しかし、ここからおかしなことが起きるのだ。ウィルを乗せたエレベーターが各階に停止し、ひとりずつ乗りこんでくるのだった。
だが、その人たちは会えるはずのない人物なのだ。幽霊なのか……妄想や幻覚なのか……それとも、別の世界にきてしまったのだろうか……という物語なのである。
本書の欠点は文量のわりに値段が高すぎる。文字数の多いマンガの単行本ほどの文量なのにもかかわらず、1,800円くらいの額なのだ。さすがに高すぎる。30分ほどあれば読めてしまう。どれだけ遅く読んでも、1時間あれば読了できるはずである。
それに内容は、よく使われるテーマである。だが、この著者が書いたからこそ、評価されたのだろう。『斬新な手法』というところは、ふつうの小説のように書いてあったとしても、わたしの評価はかわらない。この手法だから効果がある、というわけではないのだ。
これから読もうと思っている人は、著者の経歴を見ずに手にとったほうがいいだろう。そして、読了して著者の経歴を目にしたとき、著者の伝えたかったことが胸に響くかもしれない。
#掟:愛する誰かが殺されたなら、殺したやつを見つけだし、かならずそいつを殺さなければならない。―ウィルの兄が射殺された。悲しみに暮れるウィルが兄の洋服箪笥から見つけたのは、1挺の拳銃。仲間内に伝わる「掟」に従って犯人を殺すため、彼は部屋を抜け出し、エレベーターに乗り込む。自宅のある8階から地上に降りるまでの短い時間に出会ったのは、もう会えるはずのない、「やつら」だった…少年の復讐のゆくえを斬新な手法で描く衝撃作。アメリカ探偵作家クラブ賞、ニューベリー賞銀賞など全10賞受賞。
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