サムエル・ビョルク氏の『フクロウの囁き』は、「北欧発! 世界中が震撼! 北欧ベストセラーのサスペンス・スリラー、待望の日本上陸! 」と帯に書かれていた『オスロ警察殺人捜査課特別班 アイム・トラベリング・アローン』の第2弾である。
そして第1弾の『オスロ警察殺人捜査課特別班 アイム・トラベリング・アローン (ディスカヴァー文庫)』が文庫化(2019年3月26日)された。


それとおなじ日に、第2弾の『フクロウの囁き』も発売されたのである。
ということで、あらすじと感想を書いていく。
「被害者は十代の少女。十六、七歳のようです。裸で、なんと言うか……なにかの儀式のように見えます。身体の下に羽根が敷きつめられていて、それから蝋燭が……」
ムンクはまた耳に指を突っこんだ。先ほどのパトカーに続き、さらにもう一台が青色灯を点滅させながら通りすぎる。
「……シンボルのような形に並べられて……」
キムの声がまたさえぎられる。オルセンを睨みつけたものの、携帯電話で話しながら、立ち入り禁止テープのほうへ向かってなにやら合図するのに忙しそうだ。
「なんて言ったの?」
「五芒星の形のようです」
「なんだって?」
「少女は十代。死体は裸で、妙なポーズを取らされています。目はあいたまま。羽根がそこらじゅうに……」P40〜41
上記のような死体が発見されたのである。そして捜査を進めていくと……死体で発見された少女は失踪時、標準的な体重だった……だが、発見されたときはひどく痩せ、骨と皮のような状態だったという。
それに、胃のなかから動物の餌が出てきたのだ。そのことから、監禁されて動物の餌を食べさせられていた、と推測するのだった。
そのあと、ハッカーが映像を見つけてしまう。殺害された少女が監禁されている様子を記録したものである。
壁に映った影。
その影が、カミラ・グレーンが監禁された地下室の動画で見たものと重なる。
羽根をまとった人影。
羽根人間。
P287
犯人は羽根人間なのか……羽根人間の目的はなんなのか……という物語なのである。この作品の欠点は、登場人物がかなり多いことだ。巻頭の『登場人物紹介』のところを数えてみると、30人なのである。
2、3回ほどしか登場しない人物に名前があるので、たとえば「○○校の教師」とか「○○の同級生」とか「○○の母親」と表記して減らせばよかったのに……と思う。
しかし!だからといって読まないのはもったいない!なぜなら……とてもおもしろいからである!
謎をだすタイミング、それを解明するタイミング、謎の多さ……それに、読者を飽きさせない構成にページをめくる手がとまらない。そして魅力的な登場人物たちはすばらしい!たとえば、
白い自転車用ヘルメットをかぶった男は外出が嫌いだったが、冷蔵庫が空っぽなせいで、出かけるしかなくなった。P158
火曜日には、電話やトイレを貸してほしいと言われないようにバスルームに隠れている。まえにそう頼まれたことがあるからだ。そのときは手袋をしたゴミ収集員に便座を小便で汚され、家のなかでヘルメットをかぶっていることを笑われたから、それからは収集日のたびにバスルームに隠れるようにしている。P158〜159
家のなかでも、白い自転車用ヘルメットをかぶっている男!魅力的な登場人物!どうしてヘルメットをかぶっているのだろうか?毎日、防災訓練をしている?謎!
これ以上説明すると楽しめなくなるので、締めくくることにする。そして、この作品から読んでも楽しむことはできるが、より楽しむために『アイム・トラベリング・アローン』をさきに手にとることをおすすめする。
下記のリンクは『アイム・トラベリング・アローン(単行本)』のレビューページである。
いまのところ(2019年5月6日時点)、文庫本のレビューがふたつしかないなので、レビューを参考にする人のためにレビュー数の多い単行本のほうも貼っておく。
しかしそのまま購入すると、単行本を購入することになってしまうので気をつけていただきたい。
オスロの山中で見つかった六歳の少女の首吊り遺体。首には「ひとり旅をしています」のタグがかけられていた。鷲のタトゥーの男、謎の宗教団体、忌まわしい過去―。それぞれの物語が複雑に絡み合い、ひとつにつながっていく。北欧ベストセラーのサスペンス・スリラー。
敷き詰められた羽根の上に横たわる少女の裸の死体。口には白いユリの花が押し込まれ、周囲には蝋燭が五芒星の形に並べられていた。しかも、少女は死ぬ前におぞましい虐待を受けていたことがわかる。困難な状況の中、捜査を進めるムンクとミアだったが、やがて彼ら自身の周囲にも何者かの暗い影が忍び寄る…世界各国でベストセラー、オスロ警察殺人捜査課特別班シリーズ待望の第2弾!
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