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深木章子氏の『極上の罠をあなたに』-悪人たちが共食いをする短編集-

4.0
深木章子氏の『極上の罠をあなたに』という本国内ミステリー
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今回は、深木章子氏の『極上の罠をあなたに』を紹介する。謎の便利屋のダイレクトメールが4つの物語に関わり、悪党たちはその便利屋の男を利用して悪事を企むが、そこに群がるのも悪党たちなのである。

そして本書を読了したとき、ピカレスクやコンゲームが好きな人は歓喜するだろう。

ということで、あらすじと感想を書いていく。

罠にハマるカエル

『極上の罠をあなたに』の【目次】
  • 第一話.便利屋P5〜
  • 第二話.動かぬ証拠P59〜
  • 第三話.死体が入用いりようP117〜
  • 悪花繚乱りょうらんP183〜

ここでは、『1話』と『3話』のあらすじを紹介する。これから読む人のおもしろさを損なわないようにするためである。

便利屋

机の上の手紙

(5月某日)

男はそのダイレクトメールを手に、さっきからじっと考え込んでいた。
ダイレクトメールといっても、宛名だけで差出人の表示はない。そして、中身はいかにも安手な一色刷りの紙ぺらが一枚。
どうせろくなもんじゃないさ。そう思いながらも目がくぎづけになったのは、そこにこんな記載があったからだ。

人には頼みづらいが、自分でやるのはちょっと……
そんな問題でお悩みのあなた
便利屋を利用してはいかがですか
簡単な雑用から重大な任務まで、なんでもお引き受けいたします
アリバイ確保、物品投棄についてもご相談ください
なお、ご依頼事項の処理は先着順となっておりますので、その旨ご了承ください

便利屋

プリントされているのは携帯の電話番号だけ。住所はおろかメールアドレスもない。
便利屋などと名乗ってはいるが、本当のところは、悪事の手伝いを買って出る従犯屋に違いない。泥棒なら見張り役、詐欺なら金品の受領、そして殺人ならアリバイ証言に死体遺棄――。P6〜7

ある男のもとに便利屋のダイレクトメールが届く一方、代議士の息子が誘拐されてしまう。常に家を監視しているため、警察に通報したと思われるようなことがあった場合、すぐに息子を殺害すると脅されるのだ。

代議士は犯人の言いなりになり、警察に通報せずに身代金を払おうとする。しかし、代議士の妻は警察に連絡してうまくやってもらうことを主張し、代議士夫婦の意見が対立するのだった。

そしてその結果、妻の意見はとおらず……代議士の第1秘書の男が動きだす。事務所にある大金を持ってくるように、と代議士に指示されるのだ。その大金は表にだせないものであった。

つまり黒いお金である。秘書は事務所に大金をとりにいったが……ある方法で大金を奪われてしまうのだった。

代議士、代議士の秘書、代議士の妻、刑事、便利屋……全員が悪党なのか……一部の人物が悪党なのか、悪党はひとりだけだろうか……ひねってひねってひねりまくりの展開を楽しんでちょうだい。

死体が入用

男は追いつめられていたのだった。背任、詐欺、業務上横領などの犯罪に手を染めてきたことが露呈し、このままでは人生が終焉してしまう……。

しかし、安全確実に自分の存在を消してしまえばいい。そのような秘策があり、実行することにしたのだ。

いわく、安城やすき式典には、通常の葬儀とは別に〈特別案件〉と呼ばれる特殊な葬儀方式があるそうな。その〈特別案件〉の担当者は、社長以下ごくわずかの幹部社員のみ。秘密厳守を最大の売りに、他の葬儀社が二の足を踏むわけありの死体も〈応ご相談〉。そして、お値段については〈要ご相談〉。
当然、その詳細はつまびらかではない。要するに、怪しさ満点ということだ。P121

墓場にカエルの幽霊

怪しい葬儀会社を使い、自分は死んだことにして葬式をとりおこない、そのさきは別の人間として生きていけばいい。それに、便利屋のダイレクトメールがある。このふたつを使えば、作戦は確実に成功するはずなのだ。そう思い至ったのである。

男の秘策は成功するのか……葬儀会社の社長と社員、病院、医師、刑事、そして便利屋……悪党たちの頭脳戦を楽しんでいただきたい。

さいごに

冒頭で書いたとおり、ピカレスクやコンゲームが好きな人は歓喜するだろう。気持ちよく騙されてちょうだいな。

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