ニ〇一八年十月、ホラー映画『ハロウィン』の続編がアメリカで公開になりました。本書は、その公式小説です。
一九七八年制作のシリーズ第一作目は、精神病棟を脱走した殺人鬼が、ベビーシッターを含む若者ばかり五名を惨殺するハロウィンの一夜をスタイリッシュに描き、低予算のインデペンデント映画ながら大ヒット。P410(訳者あとがきより)
そして本書の帯には、「2019年4月12日(金)全国ロードショー!」と書かれていて、日本で映画が公開となった。
ということで、この記事は「さきに小説を読みたい」「小説も読むぞ」という人のために、ジョン・パサレラ氏の『ハロウィン』という小説を紹介する。
1作目の「ハロウィン」は1978年である。それから40年後の2018年のイリノイ州を、本作は舞台にしている。記者の男女コンビが、40年まえの犯人であるマイケル・マイヤーズに会うために、医療観察センターを訪ねるところから物語がはじまる。
しかし、ふたりが質問をしたり挑発するようなことを言ってみたりしても、マイケル・マイヤーズは無反応だった。いっさいしゃべらないし、ピクリとも動かないのである。気味が悪い……。
その一方、マイヤーズに友人たちを殺され、自身もあやうく殺されかけたローリーが登場する。ローリーは、40年まえの事件の、唯一の生存者である。
自宅を要塞化し、裏庭の私設射撃場で射撃の腕を磨く日々を送っているのだという。その理由は、マイヤーズがふたたび殺しにやってくると思いこんでいるのだった。
ローリーの娘夫婦と孫娘は、そんなローリーのことを理解できずにいた。その結果、家族関係はぎくしゃくしていたのである。
そして、施設に入れられていたはずのマイヤーズが解き放たれたのは、ハロウィンの前夜のことである。別の施設への移送中、マイヤーズは数名を殺害して逃亡したのだ。
「動機不明、感情不明、人知を超えた怪力、そして不死身――」と帯に書かれているマイヤーズ(ブギーマン)が、次々と人を殺していく。
水槽の左側に白いシーツ(物干し用ロープからとってきた?)に覆われた人物が座り、シーツの目に当たる部分に穴を開け、幽霊のコスチュームを作っていた。
ホーキンスは部屋に入り、銃を幽霊に向けた。
どっきりゲームか何かか?
「ジョークは終わりだ、そこの。シートをとって――ゆっくりとだ――両手を出してこちらに向けなさい」
反応なし。相手はぴくりとも動かない。
悪い予感がした。
銃を幽霊に向けたままもう一方の手で注意深くシーツをはぐ。
「何てこった」ホーキンスは恐怖におののいた。
シーツの下にいたのは、きれいなブロンドのティーンエイジャーで、血がべっとり付いたラグランシャツに濃紺のジーンズとグレイの靴下姿。ということは、おそらくはここに住んでいる――いた、か。もうひとつの可能性がひらめく。ベビーシッター。複数の刺し傷があった。肩の傷。前腕の防御創。のどはぱっくり割かれている。検視官の検視を待つまでもない。最後の傷が致命傷だ。
かわいそうに。殺人者は女の子を椅子に座らせて、ポーズをとらせ、それからむごたらしいハロウィンのデコレーションに変えた。
だが、彼女の死を悼むのはあとだ。
殺人者はまだ家のなかにいるかもしれない。P268〜269
マイヤーズは家に侵入して、殺人を重ねていくのだった。そしてマイヤーズが逃亡したことを知ったローリは、自分を殺しに来るはずだと確信する。殺されるのを待つよりは、自らマイヤーズを倒しにいくほうがいい。そのように決断し……暴れまわる怪物を排除できるのか……という話である。
もちろん、小説ならではのアレンジを加えているところも多く、映画ではカットされた場面もたくさんあります(そのうちのいくつかは、米版DVD/BDの特典映像に削除シーンとして収められています)。なんといっても、登場人物たちの内面描写を読めるのが〈小説版〉の醍醐味のひとつですしね(ご安心を、寡黙な〈シェイプ〉がペラペラしゃべったり、つらつら考えを披露して興ざめするようなことはありません!)。P412(訳者あとがきより)
小説では、もうひとつの異名〈シェイプ〉をマイヤーズの呼称として使っている。「動機不明、感情不明」なので、〈シェイプ〉の内面描写はいっさいなく、ロボットのように殺しまくるのだ。
そのような話が苦手な人におすすめすることはできないが、ホラー好きであれば楽しめるだろう。ハラハラドキドキさせられる「ハロウィン」をぜひ手にとってみてほしいのである。
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