ハリー・ボッシュシリーズは、マイクル・コナリー氏の作品である。18作目の「贖罪の街」が発刊されたのは、半年ほどまえの2018年12月14日だ。
そのあいだ、1か月に一度ほどのペースでハリー・ボッシュシリーズ(1〜17)の在庫を確認していた。半分以上の作品の在庫がなかったからである。
「贖罪の街」が出版されたので、ほかの作品も便乗して重版されるだろう。そのように思っていたが、入荷されることはなく、「入荷予定あり」と表示されることもない。
Kindle版はあるものの、紙派の新品を購入したい人にとっては悲しいことである。そのため記事にするのを躊躇していたが、読んだ内容の記憶が薄れそうなので書くことにした。
おもしろいシリーズなのに、このまま重版されずにうもれてしまうのはもったいない。わたしは重版されることを願っている。
ということで、まずはハリー・ボッシュシリーズの順番を書いておく。
「ハリー・ボッシュ」シリーズの順番
- 『ナイトホークス〈上〉 (扶桑社ミステリー)』
『ナイトホークス〈下〉 (扶桑社ミステリー)』 - 『ブラック・アイス (扶桑社ミステリー)』
- 『ブラック・ハート〈上〉 (扶桑社ミステリー)』
『ブラック・ハート〈下〉 (扶桑社ミステリー)』 - 『ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)』
『トランク・ミュージック〈上〉 (扶桑社ミステリー)』
『トランク・ミュージック〈下〉 (扶桑社ミステリー)』 - 『エンジェルズ・フライト〈上〉 (扶桑社ミステリー)』
『エンジェルズ・フライト〈下〉 (扶桑社ミステリー)』 - 『夜より暗き闇(上) (講談社文庫)』
『夜より暗き闇(下) (講談社文庫)』 - 『シティ・オブ・ボーンズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)』
- 『暗く聖なる夜(上) (講談社文庫)』
『暗く聖なる夜(下) (講談社文庫)』 - 『天使と罪の街(上) (講談社文庫)』
『天使と罪の街(下) (講談社文庫)』 - 『終決者たち(上) (講談社文庫)』
『終決者たち(下) (講談社文庫)』 - 『エコー・パーク(上) (講談社文庫)』
『エコー・パーク(下) (講談社文庫)』 - 『死角 オーバールック (講談社文庫)』
- 『ナイン・ドラゴンズ(上) (講談社文庫)』
『ナイン・ドラゴンズ(下) (講談社文庫)』 - 『転落の街(上) (講談社文庫)』
『転落の街(下) (講談社文庫)』 - 『ブラックボックス(上) (講談社文庫)』
『ブラックボックス(下) (講談社文庫)』 - 『燃える部屋(上) (講談社文庫)』
『燃える部屋(下) (講談社文庫)』 - 『贖罪の街(上) (講談社文庫)』
『贖罪の街(下) (講談社文庫)』 - 『訣別(上) (講談社文庫)』
『訣別(下) (講談社文庫)』
ハリー・ボッシュ・シリーズ19作目『訣別』(2019年7月12日発刊)の個別記事は下記をどうぞ。

「1」から読む人は、記事の下部に発表順を記載しているので、そちらを参考に手にとることをおすすめする。
「贖罪の街」のあらすじと感想
「俺を雇う?どういう意味だ?」
「いまレクシー・パークス事件を抱えているのを知っているだろ?わたしはダクァン・フォースターの弁護を担当しているんだ」
ボッシュは会話が予想外の方向転換をしたのに面食らっていた。
「ああ、知っている。きみはフォースターを手に入れた。それがいったいなんの関係が――」
「実を言うと、ハリー、裁判が六週間後に迫っているのに、弁護するための材料がまったくないんだ。あいつはやっていない。なのに、われらがすばらしき司法制度に完璧に叩き潰されようとしている。こちらが重要な証拠を手に入れないと、あいつはパークス殺害の罪を着せられるだろう。あんたを雇って、わたしのために働いてもらいたいんだ」
ハラーは切迫した様子でテーブルの上に身を乗り出した。P38〜39
レクシー・パークス事件とは、女性公務員が自宅で強姦されたのちに撲殺されたという、強姦殺人である。被害者の身体に残られた精液のDNAが一致したことで、ダクァン・フォースターという男が逮捕されたのだ。
その男はハラーの古くからの顧客であり、元はギャングの一員だった。しかし逮捕された当時は更生し、画家として生計を立てていたのである。
警察官を引退しているボッシュは最初、協力を渋るのだった。刑事弁護士に協力するのは、警察官仲間に対して裏切り行為になるからだ。
原題のThe Crossingは、「横断」という原意から、ボッシュが、法廷の原告側テーブルと被告側テーブルのあいだを横断した、すなわち、刑事訴追側の立場から、弁護側の立場になったことを指す。それは警察仲間からは「裏切り行為」と見なされる、やってはならないタブーであり、あえてそれを冒しても真実を求めるボッシュの姿が本作では描かれている。邦題は、原題の意を汲んで『裏切り』とする手もあったが、――P311(下巻)訳者あとがきより
しかし、事件の詳細を知るにつれ……興味を抱くことになり……その結果、ハラーの陣営に加わる。だが、悪徳警官ふたりが事件調査を妨害し、真相に迫るボッシュに次々と危機が襲ってくる……という物語である。
刊行即ベストセラー入りするのが当然のようになっているコナリー作品だが(四世紀ほぼずっとその状態をつづけているのは、凄いとしか言いようがない)、本書も好評を博している。書評をいくつか紹介しよう――
「だれもマイクル・コナリーのように警察小説を書けない」ジャッキー・K・クーパー(ハフィントン・ポスト)P313(下巻)訳者あとがきより
一作目の「ナイトホークス(1992年)」、18作目の「贖罪の街(2018年)米国では(2015年)」……18作品すべてがおもしろい、ということはできない。
「ふつう」「これはちょっと……」って思う作品が合計すると3つほどある。しかし面白い作品に当たる確率が15/18なら、かなりすごいシリーズなのでは?
そう思うのである。
そして、
サンフェルナンド周辺で発生していた連続強姦事件を、サンフェルナンド市警の女性刑事ベラ・ローデスとともに調べ、真相に迫りつつあったが、パートナーのローデスが突如姿を消し……。
私立探偵兼嘱託刑事というボッシュ・シリーズの新展開を期待できる作品に仕上がっているこの作品は、二〇一九年前半にお届けする予定である。
『中略』
次作のこの作品を含む三冊の版権を講談社ではすでに取得しており、――P316(下巻)訳者あとがきより
次作のこの作品を含む三冊の版権を講談社ではすでに取得している。ということなので、楽しみで仕方がない。
わたしは、訳者の古沢嘉通氏に言いたいことがある。
朝食に拘置所で出されたボローニャ・サンドと林檎をパスしていたので、ハラーは腹を空かせていた。P163(上巻)
ダジャレだろうか?そんなわけないか……。
これから、ハリー・ボッシュシリーズを「1」から読もうと思う人は、作品発表順に読んだほうがいいだろう(このシリーズ以外も含む)。
シリーズ以外の作品とリンクしていたり、スピンオフの作品があったりするからだ。そのため下記にマイクル・コナリー氏の作品を発表順に書いておくので、参考にしていただければ幸いである。
- 『ナイトホークス〈上〉 (扶桑社ミステリー)』
『ナイトホークス〈下〉 (扶桑社ミステリー)』 - 『ブラック・アイス (扶桑社ミステリー)』
- 『ブラック・ハート〈上〉 (扶桑社ミステリー)』
『ブラック・ハート〈下〉 (扶桑社ミステリー)』 - 『ラスト・コヨーテ〈上〉 (扶桑社ミステリー)』
『ラスト・コヨーテ〈下〉 (扶桑社ミステリー)』 - ザ・ポエット「ノンシリーズ」
- 『トランク・ミュージック〈上〉 (扶桑社ミステリー)』
『トランク・ミュージック〈下〉 (扶桑社ミステリー)』 - わが心臓の痛み「FBI捜査官(テリー・マッケイレブ)シリーズ」
- 『エンジェルズ・フライト〈上〉 (扶桑社ミステリー)』
『エンジェルズ・フライト〈下〉 (扶桑社ミステリー)』 - バッドラック・ムーン「ノンシリーズ」
- 夜より暗き闇【「FBI捜査官(テリー・マッケイレブ)シリーズ」(ハリー・ボッシュ・シリーズ)と共通】
- 『シティ・オブ・ボーンズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)』
- チェイシング・リリー「ノンシリーズ」
- 『暗く聖なる夜(上) (講談社文庫)』
『暗く聖なる夜(下) (講談社文庫)』 - 『天使と罪の街(上) (講談社文庫)』
『天使と罪の街(下) (講談社文庫)』 - 『終決者たち(上) (講談社文庫)』
『終決者たち(下) (講談社文庫)』 - リンカーン弁護士「刑事弁護士(ミッキー・ハラー)シリーズ」
- 『エコー・パーク(上) (講談社文庫)』
『エコー・パーク(下) (講談社文庫)』 - 『死角 オーバールック (講談社文庫)』
- 真鍮の評決「刑事弁護士(ミッキー・ハラー)シリーズ」
- スケアクロウ「ノンシリーズ」
- 『ナイン・ドラゴンズ(上) (講談社文庫)』
『ナイン・ドラゴンズ(下) (講談社文庫)』 - 判決破棄 リンカーン弁護士「刑事弁護士(ミッキー・ハラー)シリーズ」
- 証言拒否 リンカーン弁護士「刑事弁護士(ミッキー・ハラー)シリーズ」
- 『転落の街(上) (講談社文庫)』
『転落の街(下) (講談社文庫)』 - 『ブラックボックス(上) (講談社文庫)』
『ブラックボックス(下) (講談社文庫)』 - 罪責の神々 リンカーン弁護士「刑事弁護士(ミッキー・ハラー)シリーズ」
- 『燃える部屋(上) (講談社文庫)』
『燃える部屋(下) (講談社文庫)』 - 『贖罪の街(上) (講談社文庫)』
『贖罪の街(下) (講談社文庫)』 - 『訣別(上) (講談社文庫)』
『訣別(下) (講談社文庫)』
ハリー・ボッシュ・シリーズ19作目の『訣別』が2019年7月12日に発刊された。あまりのおもしろさにびっくりすることだろう。
とくに上巻のラストあたりでは予想外の展開が待っている。『訣別』という必読の作品を未読の人は、下の記事を参考にしていただければ幸いである。

- 『The Black Echo (Harry Bosch Series)』
- 『The Black Ice (Harry Bosch Series)』
- 『The Concrete Blonde (Harry Bosch Series)』
- 『Last Coyote (P/B)』
- The Poet (Jack Mcevoy 1)「ノンシリーズ」
- 『Trunk Music (Harry Bosch Series)』
- Blood Work「FBI捜査官(テリー・マッケイレブ)シリーズ」
- 『Angels Flight (Harry Bosch Series)』
- Void Moon「ノンシリーズ」
- A Darkness More Than Night (A Harry Bosch Novel)【「FBI捜査官(テリー・マッケイレブ)シリーズ」(ハリー・ボッシュ・シリーズ)と共通】
- 『City of Bones (A Harry Bosch Novel, 8)』
- Chasing the Dime「ノンシリーズ」
- 『Lost Light (A Harry Bosch Novel, 9)』
- 『The Narrows』
- 『The Closers (Harry Bosch Series)』
- The Lincoln Lawyer (Mickey Haller Series)「刑事弁護士(ミッキー・ハラー)シリーズ」
- 『Echo Park (Harry Bosch Series)』
- 『The Overlook (Harry Bosch Series)』
- The Brass Verdict (Mickey Haller Series)(ミッキー・ハラー)シリーズ」
- The Scarecrow (Jack Mcevoy 2)「ノンシリーズ」
- 『Nine Dragons (A Harry Bosch Novel, 14)』
- The Reversal (Mickey Haller Series)「刑事弁護士(ミッキー・ハラー)シリーズ」
- The Fifth Witness (A Lincoln Lawyer Novel)「刑事弁護士(ミッキー・ハラー)シリーズ」
- 『The Drop (A Harry Bosch Novel, 15)』
- 『The Black Box (Harry Bosch Series)』
- The Gods of Guilt (Mickey Haller Series)「刑事弁護士(ミッキー・ハラー)シリーズ」
- 『The Burning Room (Harry Bosch Series)』
- 『The Crossing (Harry Bosch Series)』
- 『The Wrong Side of Goodbye (Harry Bosch Series)』
- 『Late Show』
- 『Two Kinds of Truth: A Harry Bosch Thriller (Harry Bosch Series)』
- 『Dark Sacred Night: A Ballard and Bosch Thriller』
- 『The Night Fire: A Ballard and Bosch thriller』
ついでに、マイクル・コナリー氏が絶賛した、「カナリアはさえずる(2018年12月27日発刊)」の記事をどうぞ!
English Editionをさがしている方は下記のページにまとめてあるので、参考にしていただければうれしいのである。
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