新野剛志氏の『ヘブン』は、『キングダム (幻冬舎文庫)』の続編である。
暴走族の武蔵野連合。そのOBたちが集まったグループが「ムサシ」である。多摩川の河川敷で現役暴走族と乱闘事件を起こした結果、相手のひとりを殺害してしまった。「ムサシ」の主立ったメンバーも乱闘に参加していたため、「ムサシ」のナンバー2の真嶋は国外逃亡する。
だれもが「ああ、あの事件を下地にしているのか」と思うはずだが、「それは言わない約束!」である。
それから4年後を描いたのが本作の『ヘブン』で、タイに逃亡していた真嶋が暴力団への復讐のために、東京の覚醒剤ビジネスを暴力団から奪いとることを企てる。
主な登場人物は、
- 「ムサシ」の元リーダー
- 芸能事務所の社長
- 元刑事の探偵
ムサシの元リーダーは現在、東京で覚醒剤ビジネスに手を染めている。アイドルの女の子が覚醒剤の所持で逮捕され、そのときにいっしょにいたのが俳優の男だった。小さな芸能事務所の社長が、その謎を追うのである。
そして、元刑事の探偵がイカれている。目のまえで交通事故に遭った娘は他界し、そのあと離婚する。暴力団員からの調査依頼をうけ、探偵の業務をおこなう。覚醒剤中毒者なので、ひんぱんに幻覚や幻聴がある。
探偵が監禁されるシーンでは、「そこで見ているのはだれだ!」とか「黙って見てないでなんとか言え」とか、そのように叫びちらす……。
しかし見張り役に、
「口をテープで塞いでおけばよかったね。クールな探偵に見えたから、わめいたり、叫んだりしないと思ったよ。まさか、いかれたジャンキーだったとは。――そうなんだろ。こんな汗かいて、おかしなこと言うのは、覚醒剤やってるからだろ」
P284
「これはどんな探偵だよ」とツッコミたくなる。しかしこの幻覚や幻聴が、最後の最後で効果を発揮する。それをここに書くとおもしろくなくなってしまうので書かないが……。
それに、登場人物のほとんどがイカれているのである。おすすめしたい作品であるが、女性を強姦するシーンがなん度かあるので、そのような描写が嫌いな人は読まないほうがいいだろう。
どちらの作品も未読で、これから『ヘブン』を読もうと思った方は、『キングダム (幻冬舎文庫)』をさきに読んでおくことを強くおすすめする。
「お高いんでしょう?」
そのような質問があると思う。1944円なので少々お高めかもしれない。だが、600ページほどあり、読みごたえがあり、ほんとうにおもしろい作品である。そのため、多くの人に読んでほしいと思っている。
岸川昇は、リストラにあい失業中。偶然再会した中学の同級生、真嶋は「武蔵野連合」のナンバー2になっていた。真嶋に誘われ行った六本木のクラブでは有名人たちが酒と暴力と女に塗れ…。そんな中、泥酔し暴れる俳優に真嶋が「自分で顔をナイフで切れ」と迫る―。絶叫と嬌声と怒号。欲望を呑み込み巨大化するキングダム。頂点に君臨する真嶋は何者か。
東京の裏社会に王国を築いた元「武蔵野連合」の真嶋貴士。暴力団に歯向かい多くの犠牲者と復讐者を生み出し姿を消した。数年後、真嶋の姿は、タイのジャングルの奥深く、麻薬王のアジトにあった。覚醒剤ビジネス、大物政治家との癒着、アイドルの黒い噂、売春斡旋、当籤金詐欺、宗教団体の罠、暴力団の報復…タブーに挑んだ怪物的エンタメシリーズ第二弾!
コメント
久々に超絶に面白く、読み応えのある作品に出会えました。馳星周の不夜城を読んだ時と同じくらいのインパクト。ノワール系のぺージターナー登場です。早くヘブンの続編を詠みたいと思うのは自分だけ?映画化にも耐える内容ですね。
TONE様、コメントをありがとうございます。
馳星周氏の不夜城!おもしろいですよね。
不夜城は正当に評価されているにもかかわらず、『ヘブン』はミステリーランキングの上位に入らなかったし、それにまったく注目されていないように思います。それが残念でなりません。不夜城とおなじように傑作だと思うのですが……。
わたしも続編を待ち望んでいます。そして映画化されたら最高です。注目されて原作が多く売れた結果、「早急に続編を書くぞ」と新野剛志氏が思ってくれれば幸いなのです。
「久々に超絶に面白く、読み応えのある作品に出会えました。」とTONE様が書かれたとおりだと、わたしも思います!
超絶におもしろい作品ですよね(^_^)