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翔田寛氏の『人さらい』は誘拐ミステリーの傑作か⁉

翔田寛氏の「人さらい」という本国内ミステリー
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翔田寛(しょうだ かん)氏の『人さらい』という作品は、タイトルのとおり誘拐ミステリーである。

誘拐ミステリーといえばコンゲームであり、犯人側と追う側の、ふたつの視点を楽しむことができる。そのため、わたしの大好物である。

もし自分が犯人だったら……どのようにして身代金を奪取するのか?

その逆の立場だった場合、どのようにして犯人を確保するのか?

そう考えながら読みすすめると、楽しくてたまらない。そして今回、『人さらい』がおもしろかったので、あらすじと感想を書いていこうと思う。

あらすじ

舞台は静岡県である。通信司令課と直結した「誘拐専用電話」の着信音が鳴り響く。

「小学校4年生の女児が行方不明となり、誘拐したという電話が母親のところにかかってきた」

そう告げられた捜査一課特殊班の課員たちが、誘拐された子どもの家に向かうのである。

そこで場面が切り替わる。

ふたり(どちらも浜松中央署の捜査員)で連続放火事件の捜査をしていたところに電話があり、

誘拐事件が発生したこと
誘拐された子どもの家族は放火事件の被害者でもあること
そのふたつのことを教えられて署にもどる。

連続放火事件と誘拐事件は関係があるのか……ワクワクする展開である。

身代金の額は?

1億円!明日までに金を用意しなければならない。金は、ウールの毛布で包み、荒縄で厳重に結束すること。

腰をぬかすほどの金額だが、父親は都市銀行の支店長であり、代々地元の資産家として知られている。そのため、難なく用意することができたのである。

 
 
 

感想

伏線が張りめぐらされていて、よくできた作品であることはまちがいない。しかし欠点はある。

 
 

欠点とは?

ネタバレになってしまうので詳しいことは書けないが、警察組織の人間が集まっているのに「あれ」を見抜けないのはいかがなものか……。

だが、小さな瑕疵だと思うので、それほど気にならないだろう。

 
 

さいごに

カメラはいたるところにあり、スマートフォンがあるのでだれでも撮影者になることができる。それに車載カメラもある。そのため、警察をあざむくことはほぼ不可能に近い。

そして科学捜査などが発展した昨今、警察小説を書く作家たちは大変だろうと思う。警察が失態を演じて犯人を取り逃したように書けば、ご都合主義のレッテルを貼られるだろう。

では、だれも思いつかないような完全犯罪の方法を書いた場合はどうだろうか?

それもダメなのである。犯罪を助長する犯罪マニュアルになってしまう。そのため、これもまた批判される対象になるだろう。

つまりなにが言いたいのかというと、『人さらい』は読む価値のある、おもしろい作品である。そう言いたいのだ。

収拾がつかなくなってきたので、これで締めくくることにする。

さいごのさいごに……『人さらい』は『真犯人 (小学館文庫)』シリーズだが、『人さらい』から読んだとしても、『人さらい』だけを読んだ場合も、どちらであっても問題はないだろう。しかし、『真犯人 (小学館文庫)』もおもしろいので、おすすめできる作品である。

静岡県浜松中央署管内で、小学四年の村木千夏ちゃんが誘拐された。犯人は身代金一億円を要求、静岡県警は総力戦でのぞむが…。誘拐ミステリーの金字塔『真犯人』シリーズ最新作。

平成二十七年八月、東名高速道路の裾野バス停付近で、男性の他殺死体が発見された。裾野警察署の日下悟警部補は、被害者・須藤勲の長男・尾畑守が昭和四十九年に誘拐されていたことを知る。犯人は身代金受け渡し現場に現れず、守は遺体となり東京都大田区の多摩川で発見された。未解決となったこの事件については、時効直前の昭和六十三年に再捜査が行われていた。日下は、再捜査の陣頭指揮を執った重藤成一郎元警視に協力を願い出る。四十一年の時を超え、静岡県警の矜持を賭けた三度目の誘拐捜査が始まった。誘拐小説の新たな金字塔、連続ドラマ化と共に文庫化!

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