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【フーガはユーガ】伊坂幸太郎氏の1年ぶりの作品は、双子の物語……

伊坂幸太郎氏のフーガはユーガという本国内ミステリー
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伊坂幸太郎氏の『フーガはユーガ』は、1年ぶりの新作である。張りめぐらされた伏線をさいごに回収していく、「さすが!伊坂氏」という作品だったため、わたしは小躍りしてしまった。そんな『フーガはユーガ』のあらすじと感想を書いていく。

1年に一度の決められたある日、双子のいる場所が2時間おきに入れ替わる。その「特殊能力?」を使い、さまざまな困難を乗り越えていくという話である。

どちらも男である双子の父親は、双子が幼少期のころからふたりに対して暴力をふるっていた。そのような話を双子のひとりである『僕』が、仙台市のファミレスの店内で東京在住のフリーディレクターの男に話している。

ふたりが話すきっかけとなったのは、

「ええと今、新しい番組の企画で、変わった動画を探していてね。うちのバイトに、こんな動画が送られてきて」
「送られて? タレコミというやつですか」
「なんと呼ぶかはさておき。観てくれるかな」
鞄からノートパソコンを取り出すと、開き、キーを叩く。
「面白い映像ですか」
彼と僕の中間あたりに横向きに置かれたパソコンの画面上で動画が再生される。
よく分からず眺めていると、そこが小さな個室、トイレだど認識できた。
「これは」
「アーケード通りの、ファストフード店の二階、そこのトイレなんだって。男女共用らしく。早送りするよ」
男性や女性が便器に座る姿がちらちらと映るものだから目を逸らす。
P9

映像を観ていると、『僕』が映しだされ、「これは君だよね」と言われるのである。そして、その映像がおかしいことを指摘されるのだった。

便器に座っていた『僕』が立ちあがるのとほぼ同時に、それまでは顔になにも貼っていなかったにもかかわらず、絆創膏が貼られていることに気づくのである。一瞬にして絆創膏が貼られたことに、フリーディレクターの男は興味を示したのだ。

そこで、専門の人間に映像を調べさせたところ、加工された形跡はないのだという。だとしたら、なにかしらのトリックがあるのか……。

ここから、双子のいる場所が2時間おきに入れ替わるという、その過去の話が進んでいくのだ。いくつもの点がさいごのほうでつながっていく手法は、さすが伊坂幸太郎氏である。

わたしの父親は、この小説の父親よりもひどい暴力をふるう人物だったので、共感できるところが多かった。たとえば、自分の家庭が異常であることに気づかない。

  • ガラスの灰皿で頭を殴られる。ガラス窓に頭を突っ込まれる。どちらもさいごは救急車に乗せられて病院。
  • 木刀でボコボコにされて半殺し。
  • 太ももの内側を包丁で刺される。

上記の3つは、わたしが父親にやられたことのほんの一部だ。男であればおなじようなことを父親にされていると思っていたが、そうではないことを知ったのは20代前半のときである。

友人たちが話さないのは当たり前で、自分の家庭の恥部を吐露するわけがない。そのため、言わないだけでおなじようなことをされているはずだ。そう、わたしは思いこんでいた。滑稽である。

あいつ(父親)は他界しているのでありえないが、もしいま、わたしの目のまえにあいつが姿を現したとしたら、この小説の下記の部分を読ませてやりたいと思う。

「それだけは勘弁して、と言いたくなるようなことを他人にするのはどういう感覚なんだろうな」
「自分たちだけ幸せなら、あとは知らない。そういう人間は多いよ」
P115

家族でもおなじだと思う。まあ、「家族」だと、わたしは思っていないのだが……。

つまらない話になってしまったが、『フーガはユーガ』はおもしろいので、たくさんの人に読んでほしい作品である。

常盤優我は仙台市のファミレスで一人の男に語り出す。双子の弟・風我のこと、決して幸せでなかった子供時代のこと、そして、彼ら兄弟だけの特別な「アレ」のこと。僕たちは双子で、僕たちは不運で、だけど僕たちは、手強い。

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