藤崎翔氏の『時間を止めてみたんだが』という作品について書いていく。これはミステリー小説だが、男性ならばタイトルを見て察することができるだろう。
下ネタがあるので、苦手な人はこの記事を読まないことをおすすめする。
高校一年生の男子である主人公は、同級生の男女にいろいろなことを指示される。
たとえば、購買部へいってパンやジュースなどを購入してこいと言われたり、サッカー部のクラスメイトに尻を蹴られて周りの同級生に笑われたりする。しかし本人は、決していじめられているとは思っていないのである。
あるとき、「変な顔をして笑わせろ」とムチャぶりされ、あらゆる変な顔を披露して笑いをとっていた。
だが、急に無反応になったため、変顔をやめてしまう。
すると、「なんでやめるんだよ。もっとやれよ」と要求されるのだ。それをなん度かくりかえしたとき、主人公の男子高校生は気づくのである。
急に無反応になるのは、時間が止まっているのではないのか?
そう思いながら、5時間目の数学の授業を迎える。時間を止めるという、そのような能力があるのかを試すために授業中に変顔をやってみたが……。
「じゃあ、次の問題を……って、笹森!何だその顔は、馬鹿にしてんのか?」
クラス中が俺に注目する。俺はとっさに「あ、すみません、鼻がかゆくて」と言い訳をした。P27
上記のように先生に叱られてしまうのだった。笹森というのは、主人公の名字である。
そして、放課後のコンビニのバイトを終えて自宅に帰った主人公は、自室にこもって変顔の練習をした結果、
『左目を閉じて右目を開けて、鼻で上唇を吸い寄せて、両方の鼻の穴を完全に塞いだ状態をキープしたまま、呼吸とまばたきを止めている間だけ、時間が止まる』
P39
時計の秒針を見ながら研究したおかげで、上記のことがわかったのだ。だが、呼吸とまばたきを止めていないと時間がすすんでしまうため、時間を止めていられるのは20〜30秒ほどである。
この能力をどのように使うのか……能力を使っているところを撮影してユーチューブにアップすれば、金を稼ぐことができるかもしれない。そのように企むが、動画も止まってしまうのだ。
それならば、銀行強盗などをやれば稼げるかもしれない。しかし、20〜30秒ほどで完遂させなければならないので、この能力が役に立たないことに気づくのだった。そこで、主人公はあることに思い至るのである。
この能力を使うことができるのは自分だけなのか?
そのためスマートフォンを使い、ネット検索すると、
すると、最初に目に入ったのは、「時間を止められる男は実在した!」という一文だった。おお、やっぱり同じ能力の人がいたんだ、と俺は興奮を覚えながら、その検索結果のタイトルを即座にクリックした。P46
そう、アダルト動画が流れるのだ。偽者だったことに落胆した主人公だったが、そのアダルト動画を見てヒントを得たのである。
時間を止めることができるのは20〜30秒ほどなので、そのあいだに童貞を捨てるのは難しい。しかし、女子の胸を触ることができると歓喜するのだ。
そして翌日、時間を止めて胸を触った。だが、手のひらに違和感を覚え、胸ポケットに紙片が入っていることに気づくのである。それを盗み、ひとりになったところで見てみると、
あなたのいじめにもう耐えられません。
うちの部活で使う金属バットで何度も頭を殴られ、お金を取られ、もう限界です。
今日の午後四時に屋上に来てください。あなたが謝ってくれないならば自殺します。
私は本気です。あなたがこの手紙を読んでいる間、私は屋上のフェンスの外に立っています。いつでも飛び下りることができる状態です。
P56
上記の手紙がきっかけとなり、自殺を阻止するために奔走するという展開である。
さいごに
笑うことができ、ミステリーの部分もかなりしっかりしているので、男性諸君にとくにおすすめしたい作品である。それと、藤崎翔氏の最高傑作である『殺意の対談』を未読の方は、下記の記事を参考にしてほしいと思う。

今みんな止まらなかった!?高校生の笹森陽太はひょんなことから自らの「時間停止能力」に気づく。その能力で同級生の美人・麗奈や、隣の組のハーフ美人・沙織の胸を…と卑わいなことを企むが、彼女らの胸ポケットには遺書めいた手紙、そしてナイフが!?下心が一転、学校の闇に立ち向かう陽太の運命は―。
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