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『呪護』お祓い師と警察官の4人が、宗教団体の不思議な謎を追う物語……

今野敏氏の呪護という本国内ミステリー
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今野敏氏の「呪護(じゅご)」は、鬼龍光一シリーズの4作目である。警視庁生活安全部少年事件課の警察官と、お祓い師である鬼龍光一。そのふたりが活躍する物語で、シリーズの順番は、

  1. 鬼龍 (角川文庫)
  2. 陰陽 鬼龍光一シリーズ (角川文庫)
  3. 憑物 鬼龍光一シリーズ (角川文庫)

上記のとおりである。

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警視庁生活安全部少年事件課の男性が主人公である。刃物による傷害事件が発生したため、後輩の警察官を連れて現場に駆けつけた。

現場は神田学園高校の実験準備室だった。実験室のとなりにあり、化学担当の教師が使っている小部屋だという。男性教師が2年生の男子生徒にナイフで刺されたのだ。そのときに現場にいたのは3人である。

2年生の女子生徒もいて、教師が刺されるのを目のまえで見てしまったことから、精神的なケアのために刺された教師とおなじ病院に運ばれたのだ。そのため、主人公と後輩の警察官は病院へ行くのである。

病室

女子生徒に事情を訊くと、とんでもないことを言うのだった。性交していたところ、教師が刺されたという。女子生徒は「セックス」とあからさまに言うのだ。

そうなると、被害者の男性教師は17歳の女子生徒と性交したことになり、淫行条例違反で捕まることになる。それを女子生徒に伝えると、

「淫行なんかじゃなくて、必要なことだったんですけど……」
「何がどう必要だったんです?」
「法力を発揮するために必要だったんです」
「ホウリキ……」
「そう。法力です」
妙な話になってきた。P15

一方、教師を刺した男子生徒は、女子生徒が強姦されていたのでとっさに刺してしまったのだという。

しかし、ナイフはどこにあったのか……たまたま所持していたのか……。そして神田署の強行犯係の連中は、強制性交等罪を適用して教師を逮捕しようとしているのだ。

「適合者?」
「誰とでもヤればいいってもんじゃない。法力を得るためには、それなりの相手を探さなきゃならないんだ」
「それは、相性みたいなものなのか?」
「うーん。強いていえば、陰陽のバランスかな……。儀式は陰と陽の交わりなんでね」P77〜78

女子生徒にとっては、男性教師が適合者なのである。適合者を見つけるのはかなりむずかしいことなのだという。

「適合者というのは貴重な存在なんですね」
「ええ。多くの場合、夫婦となります。それくらい貴重な出会いなんです」
「夫婦になる……?」
「ええ。私たち夫婦もそうです。私は妻の適合者でした」P100〜101

上記のように、女子生徒の父親が語るのである。それほど貴重な存在である教師が逮捕されると、宗教上の計画が頓挫するのだ。

そのため、計画のことを女子生徒の母親に訊ねると、「話すと殺される」と言われ、警察官であったとしても教えられないという。

「家内の言うとおりです。ですから、お話しすることはできないのです」
「誰に殺されるというのですか?」
「どんな刺客が来るかはわかりません。しかし、秘密をしゃべった者は確実に消されます」
あまり現実味がないと、富野は思った。
誰が殺すのか知らないが、秘密をしゃべったことが、どうしてその人物の耳に入るというのだろう。
そして、もし秘密を洩らしたというだけで、本当に人を殺すのだとしたら、その人物を検挙する必要があるだろう。P99

ふたつの宗教が争っているようである。そして、女子生徒は法力を使ってなにをしようとしているのか……お祓い師ふたりが警察官ふたりに協力し、それらの謎を追うのだ。お祓い師のひとりは、鬼龍光一である。

鬼龍光一は、鬼道衆(きどうしゅう)という終段に属するお祓い師だ。鬼道衆は、何でも卑弥呼(ひみこ)の鬼道を今にも伝える一派なのだそうだ。P22

鬼龍光一は、シャツもジャケットもズボンも靴も、すべて黒だ。P21

上記のような人物である。おかしな宗教、眉唾な教義、法力、パワースポット、お祓い師など……オカルト要素がぎっしり詰めこまれている。そのため、リアリティを求める人におすすめすることはできない。

しかし、現実味がないわけではない。性交すると法力を使えるというのは知らないが、『おかしな宗教』『眉唾な教義』『パワースポット』は実在するのだ。宗教についてすこしでも興味がある人は、下の本を手にとってみてほしい。

これは、教祖になるための指南書という体(てい)で書かれた、とてもおもしろい本なのである。宗教に深く信仰している人におすすめすることはできない。なぜなら、揶揄されていると感じるかもしれないからだ。

「なぜ、あの人はカルト宗教にどっぷりハマるのか」と首をかしげるような人であれば、必ず楽しめるだろう。

そして「呪護」を読む場合、本作から読んでも楽しめるが、ほかの3作品をさきに読んだほうがよりおもしろく読めるはずである。

古代から受け継がれる鬼道衆の末裔として、「亡者祓い」を請け負っている鬼龍浩一。「亡者」とは、嫉妬や憎しみ、恐れ、あらゆる欲望といった陰の気が凝り固まったもの。今回依頼されたテレビ局のお祓いも、単純な仕事だった。さらに日本橋の食品会社で起きた異変の解決を頼まれた鬼龍は、出向社員になり、会社に潜入した。だが、会社には女子社員を中心に想像を絶する陰の気が渦巻いていた…。傑作エンターテインメント。

若い女性を狙った凄惨な連続殺人事件が都内各所で発生した。捜査に駆り出された警視庁生活安全部の富野輝彦は、現場にあらわれた黒ずくめの男に気づく。男は鬼龍光一と名乗り、「お祓い師」をしていると言う。不審な鬼龍を警戒する富野。さらに事件の容疑者が逮捕されたものの、鬼龍は事件が『警察の手には負えない』ものだと言う。そして、彼の言葉通りに、新たな事件が発生して…。異色コンビが、不可解な事件の真相に迫る!

深夜の渋谷のクラブで15人もの惨殺死体が発見された。店内で従業員や客同士が互いに殺し合ったというのだ。急遽、現場に駆り出された警視庁生活安全部の富野輝彦は、現場に残されたマドラーの六芒星に違和感を覚える。さらに、都内各所で同様の事件が続発。各々の現場でもどこかに六芒星のマークが残されていた。常識外れの殺人事件に、富野は祓師の鬼龍光一に再び協力を求めるが…。異色のコンビが、驚愕の真相に迫る。

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