ピエール・ルメートル氏の新作である、『監禁面接』のあらすじと感想を書いていこうと思う。
ミステリー小説が好きな人であれば、ピエール・ルメートル氏のことは知っているだろう。『死のドレスを花婿に』や『その女アレックス』などの作品は有名なので、読んだことがある人は多いはずだ。

ピエール・ルメートル氏のことをはじめて知ったという人は、上記の記事の『9』番目で触れているため、そちらを参考にしていただければうれしいのである。
あらすじ
主人公は57歳の男性で、かつては企業の人事部長だった。だが、4年まえにリストラされる。再就職先を懸命にさがすが、年齢のことが原因なのか、なかなか見つけることができない。
そのせいで、主人公はフリーターのような生活をしていた。妻とふたりの娘がいるため、肩身の狭い思いをしつづけていたが、チャンスがめぐってきたのである。
エントリーしていた大企業の、人事副部長の候補に残ったという報せがあったのだ。しかし、採用試験をやっていた人材派遣会社に告げられた最終試験の内容は、就職先企業の重役会議を襲撃することだった……。
襲撃するといっても、ドッキリのようなものである。つまり襲撃者を装うのだ。
どうしてそんなことをするのかというと、大きなプロジェクトの責任者を選ぶためである。そのため、重役たちを監禁する部屋に隠しカメラを仕掛け、重役たちのストレス耐性などを査定する。
そして、ほかの最終候補者よりもよい成果をだせれば、念願の人事部長の座をつかむことができるのだ。だが、道徳的に問題があるからと、妻に最終試験をうけることを反対される。
そんな主人公は、どのような言動をするのか……。
感想
よかれと思って行動した結果、それが裏目にでることはよくある。相手が望んでいると思いこむのは最悪だ。
行動するまえに徹底的に言葉を交わすことができれば、すれちがいや、誤解されることも少なくなるだろう。
主人公はクズであることはまちがいないのだが、『主人公』『主人公の妻』『主人公の子ども』『主人公の同僚』『主人公が義父』『主人公の友人』などの、どの視点で読むのか……。それによって楽しみ方がちがってくるだろう。
「そのまえ」「そのとき」「そのあと」の三部構成であり、「そのまえ」のところで主人公のクズっぷりに辟易し、おもしろくないと感じてしまう人がいるかもしれない。
それと会話文が少なく、文章がパンパンに詰まっているので、そのような本が苦手な人はつらいと感じてしまうだろうか。
しかし、相手が望んでいることをやる、言葉を交わすことの大切さ、それらのことを教えてくれる傑作であるため、数多くの人に読んでほしい作品である。

重役たちを襲撃、監禁、尋問せよ。どんづまり人生の一発逆転にかける失業者アラン、57歳。企業の人事部長だったアラン、57歳。リストラで職を追われ、失業4年目。再就職のエントリーをくりかえすも年齢がネックとなり、今はアルバイトで糊口をしのいでいた。だが遂に朗報が届いた。一流企業の最終試験に残ったというのだ。だが人材派遣会社の社長じきじきに告げられた最終試験の内容は異様なものだった。―就職先企業の重役会議を襲撃し、重役たちを監禁、尋問せよ。重役たちの危機管理能力と、採用候補者の力量の双方を同時に査定するというのだ。遂にバイトも失ったアランは試験に臨むことを決め、企業人としての経験と、人生どんづまりの仲間たちの協力も得て、就職先企業の徹底調査を開始した。そしてその日がやってきた。テロリストを演じる役者たちと他の就職希望者とともに、アランは重役室を襲撃する!だが、ここまでで物語はまだ3分の1。ぶっとんだアイデア、次々に発生する予想外のイベント。「そのまえ」「そのとき」「そのあと」の三部構成に読者は翻弄される。残酷描写を封印したルメートルが知的たくらみとブラックな世界観で贈るノンストップ再就職サスペンス!
コメント