マイクル・コナリー氏の『訣別』は、ハリー・ボッシュ・シリーズの19作目である。
原題のThe Wrong Side of Goodbyeは、作中で何度か言及されているが、少し説明を要する。直訳すれば「サヨナラの反対側」になるのだが、wrong side of heaven(天国の反対側)=right side of hell(地獄のまっただなか)と同様の婉曲表現でwrong side of goodbye(グッドバイの反対側)=right side of wrong goodbye(ひどい別れ、悪い別れ)になる。P338「下巻」(訳者あとがきより)
ということらしい。
そして、前作のハリー・ボッシュ・シリーズ18作目である『贖罪の街』の下記の記事には、ハリー・ボッシュ・シリーズの順番とマイクル・コナリー氏の全作品を記載してあるので、ついでに読んでいただければ幸いである。

ということで、『訣別』のあらすじと感想を書いていく。
「ハリー・ボッシュ・シリーズ」と書いてあるとおり、主人公は刑事兼私立探偵の“ボッシュ”という男性である。「刑事」ではあるが正規の「警官」ではなく、予備警官として勤務している。
ある日、ボッシュはクライアントに呼びだされる。ボッシュを呼びだした人物は、セキュリティ会社の重役になっている男(元ロス市警副本部長)である。大企業のオーナーである富豪のヴァンスが、ボッシュに依頼したいことがあると言っている。そう告げられるものの、依頼内容はボッシュにのみ教えるらしく、クライアントには教えられていないのだという。
そのためヴァンスに会いにいくと、
「わたしになにをやらせたいんです?」ボッシュは再度訊いた。
「わたしのためにある人を捜してもらいたいのだ」ヴァンスは言った。「けっして存在しなかったかもしれない人間を」P40
上記の依頼内容をだれにも知られずに調査してほしいのだという。知られてしまうと、ヴァンスとボッシュの身に危険が迫ってくる可能性があるからだ。大金に群がる悪党に目をつけられてしまうのである。
その調査に乗りだす一方、同僚刑事と連続婦女暴行事件の捜査を並行して進めるが……という物語である。
上巻の終わりごろに、ビッグサプライズがある。「このタイミングでそのカードをきるの?」となるはずである。
上巻を読んだあと、すぐに下巻を手にとりたくなるだろう。わたしは就寝予定の直前に読み終わってしまった。そのためかなり後悔したのだ。
「これは絶対におもしろくなるぞ」と下巻に期待して就寝し、就寝後の仕事中に下巻を読んだのである。その結果、やはりおもしろさは急加速したのだった。
とうぜん上巻もおもしろい。欠点は婦女暴行事件を扱っているので、そのような内容がどうしてもダメという人にはおすすめできない。
しかし、その場面を詳しく描写しているわけではないため、不快になる人はすくないと思う。ニュース番組の報道くらいの説明である。
『訣別』だけを読んでも楽しめるが、せめて「ハリー・ボッシュ・シリーズ」を順番に読んでおいたほうがいいし、ほかのシリーズなども含めて出版順に読むことが理想的である。
なぜなら本書では、ボッシュの過去にふれている。『訣別』をより楽しむためには、過去の作品を読んでからのほうがいいだろう。「ハリー・ボッシュ・シリーズ」の順番、それと「English Edition」も下の記事にまとめてあるのでどうぞ〜。

老い先短いことを悟った富豪には学生の頃知り合い妊娠させながらも、親に仲を裂かれたメキシコ人の恋人がいた。その子どもが生きていれば捜してほしいと頼まれたボッシュは調査を引き受ける。一方、同僚刑事と連続婦女暴行事件捜査を進めるなか、同一犯によると思しき暴行未遂事件が起こり、事態が急展開する。

コメント