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このミステリーがすごい!2019年版【国内】本当にすごい21作品!

このミステリーがすごい!2019年版おすすめ作品
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「このミステリーがすごい!2019年版」が発売されて20日ほどが経過し、2018年も残り数時間となった。そして本書の目玉であるランキングが発表されたため、それを参考にする人もいるだろう。

順位を知りたくてここにたどり着いた人もいるかもしれないが、次号が出版されていないうちに最新号の内容を転載するのはよろしくない。

『わたしがここにランキングを記載する→来年も載せてくれるだろうと期待して来年は購入しない→売上が下がる』ということになってしまったら、責任をとることができない。ほかの人も記載しているからいいだろう。そういうわけにはいかないのである。

そのため、一部であっても順位をここで列挙することはできないが、わたしが厳選したおすすめの21作品を紹介していきたいと思う。

『このミステリーがすごい!2019』1〜20位のおすすめ10作品

国内ミステリー10冊
1.宝島

1950年から1972年までの、アメリカ統治下時代の沖縄を舞台にしている。男女3人の青春群像小説である。

この物語はフィクションだが、実際に起きた事件が次々と現れる。頻発する米兵による暴行事件、交通事故、米軍機の小学校への墜落、毒ガスでの住民被害など、沖縄の人々が米軍基地の存在によってどれほど人権を侵されたのか。犠牲を強いられ、悲しみを背負って生きてきたか。

第9回山田風太郎賞を受賞している。そして、多くの人に読まれるべき作品だろう。

英雄を失った島に、新たな魂が立ち上がる。固い絆で結ばれた三人の幼馴染み、グスク、レイ、ヤマコ。生きるとは走ること、抗うこと、そして想い続けることだった。少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになり―同じ夢に向かった。超弩級の才能が放つ、青春と革命の一大叙事詩!!

2.雪の階

二・二六事件の前夜、華族の家に生まれた主人公は友人が情死した事件を追うなか、自身の出自にかかる因縁と向き合うことになる。

きな臭さが漂う時代背景の描写はすばらしく、緊迫した空気に支配されてすすんでいく物語を堪能してほしい。

昭和十年、春。数えで二十歳、女子学習院に通う笹宮惟佐子は、遺体で見つかった親友・寿子の死の真相を追い始める。調査を頼まれた新米カメラマンの牧村千代子は、寿子の足取りを辿り、東北本線に乗り込んだ―。二人のヒロインの前に現れる、謎のドイツ人ピアニスト、革命を語る陸軍士官、裏世界の密偵。そして、疑惑に迫るたびに重なっていく不審な死。陰謀の中心はどこに?誰が寿子を殺めたのか?昭和十一年二月二十六日、銀世界の朝。惟佐子と千代子が目にした風景とは―。戦前昭和を舞台に描くミステリーロマン。

3.凍てつく太陽

終戦間際の北海道を舞台にアイヌ、朝鮮、日本人の民族問題をからめ、当時の世相や歴史的背景などを踏まえつつ展開する本作は傑作である。

『W県警の悲劇』と『Blue』-葉真中顕氏は飛ぶ鳥を落とす勢いだ!
去年の傑作である、葉真中顕氏の『凍てつく太陽』は、第21回大藪春彦賞受賞、第72回(2019年)日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)を受賞した。すばらしいことである。いま、もっとも飛ぶ鳥を落とす勢いの作家と言っても過言ではない。

昭和二十年―終戦間際の北海道・室蘭。逼迫した戦況を一変させるという陸軍の軍事機密「カンナカムイ」をめぐり、軍需工場の関係者が次々と毒殺される。アイヌ出身の特高刑事・日崎八尋は、「拷問王」の異名を持つ先輩刑事の三影らとともに捜査に加わることになるが、事件の背後で暗躍する者たちに翻弄されてゆく。陰謀渦巻く北の大地で、八尋は特高刑事としての「己の使命」を全うできるのか―。民族とは何か、国家とは何か、人間とは何か。魂に突き刺さる、骨太のエンターテイメント!

4.ベルリンは晴れているか

舞台は第二次世界大戦直後のドイツである。17歳の少女・アウグステは、恩人夫妻の夫を殺した容疑をかけられて取り調べをうけるが、容疑はすぐに晴れる。

彼の死を報せるために、彼女はひょんなことから知り合った男とともに甥の少年を捜す旅にでる。夫を殺したのはだれなのか……なぜ、彼女はそこまでして少年を捜すのか……。

それと、当時のドイツ国民が置かれた過酷な状況を描いた場面は、強く印象づけられることだろう。そして各章のあと、「幕間」としてアウグステの過去が語られる。そのタイミングが絶妙なのである。読み応えのある傑作だろう。

総統の自死、戦勝国による侵略、敗戦。何もかもが傷ついた街で少女と泥棒は何を見るのか。1945年7月。ナチス・ドイツが戦争に敗れ米ソ英仏の4カ国統治下におかれたベルリン。ソ連と西側諸国が対立しつつある状況下で、ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が、ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた毒により不審な死を遂げる。米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、彼の甥に訃報を伝えるべく旅出つ。しかしなぜか陽気な泥棒を道連れにする羽目になり―ふたりはそれぞれの思惑を胸に、荒廃した街を歩きはじめる。最注目作家が放つ圧倒的スケールの歴史ミステリ。

5.沈黙のパレード

ガリレオシリーズ第9弾である。殺人事件の元容疑者が殺害され、湯川がその真相に挑む。全体のテンポはよく、トリックとさきを読ませない展開に圧巻させられるだろう。

【沈黙のパレード】東野圭吾氏のガリレオシリーズ9作目!
『沈黙のパレード』は「これぞ東野圭吾氏だ」という作品である。東野圭吾氏の初期のころの作品は読んでいたが、作風がかわってしまったために読まなくなった。そのような人たちにもおすすめできる作品であり、ミステリー小説のおもしろさを再確認できるはずである。
東野圭吾氏の『希望の糸』−あたしは誰かの代わりに生まれてきたんじゃない−
東野圭吾氏の2019年7月8日時点の最新刊である『希望の糸』を読了したとき、わたしは複雑な気持ちにさせられてしまった。なにかの犯罪の被害者に遭遇したにもかかわらず、同情できなかったり味方になりたくなかったりすることがあるだろう。そのような感じである。

突然行方不明になった町の人気娘が、数年後に遺体となって発見された。容疑者は、かつて草薙が担当した少女殺害事件で無罪となった男。だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。さらにその男が堂々と遺族たちの前に現れたことで、町全体を憎悪と義憤の空気が覆う。秋祭りのパレード当日、復讐劇はいかにして遂げられたのか。殺害方法は?アリバイトリックは?超難問に突き当たった草薙は、アメリカ帰りの湯川に助けを求める。

6.破滅の王

毒性を持つ細菌をめぐり複雑に絡み合う、国家、組織、人間関係が非常に細かく描かれている。あまりのリアルさはノンフィクションなのかと思わされるほどである。

戦時下の中国、満州を舞台にし、日本人だけでなく中国人、ドイツ人が数多く登場するため、地名や組織名などを憶えることに苦戦するかもしれない。しかし、細菌兵器を完成させまいとする、自分の正義を貫きとおす姿に胸を打たれるだろう。

人に利益をもたらすことも危害を加えることもできる力を手にしたとき、その人はどのような行動をとるのか、それぞれの正義によるということを教えてくれる作品である。

一九四三年、上海。かつては自治を認められた租界に、各国の領事館や銀行、さらには娼館やアヘン窟が立ち並び、「魔都」と呼ばれるほど繁栄を誇ったこの地も、太平洋戦争を境に日本軍に占領され、かつての輝きを失っていた。上海自然科学研究所で細菌学科の研究員として働く宮本は、日本総領事館から呼びだされ、総領事代理の菱科と、南京で大使館附武官補佐官を務める灰塚少佐から重要機密文書の精査を依頼される。その内容は驚くべきものであった。「キング」と暗号名で呼ばれる治療法皆無の細菌兵器の詳細であり、しかも論文は、途中で始まり途中で終わる不完全なものだった。宮本は治療薬の製造を任されるものの、それは取りも直さず、自らの手でその細菌兵器を完成させるということを意味していた―。

7.東京輪舞

ロッキード事件、東芝ココム事件、ソ連崩壊、地下鉄サリン事件、國松長官狙撃事件、金正男の不法入国事件という現実の事件を織り交ぜながら、公安警察の砂田とKGBのクラークの42年にも及ぶ特殊な運命を描いている。

奥付に記載されている発行日は2018年10月30日なので、『このミステリーがすごい!2019年版』の期間(2017年11月〜2018年10月)ギリギリだったにもかかわらず、上位にランクインしたのだ。それだけでこの作品のすばらしさは理解できるだろう。わたしの2018年のベスト5に入るほどの作品である。

田中角栄邸の警備をしていた警察官・砂田修作は、公安へと異動し、数々の事件と関わっていく―圧倒的スケールで激動の時代の暗闘を炙り出す。

8.ネクスト・ギグ

演奏中に刺殺体として発見されたボーカルの事件を発端に、メンバーとそれをとり巻く人々の秘密が暴かれる。

登場人物はロックに対してアツい思いを持っていて、事件を解決する人物も魅力的である。ミステリーとロックの歴史を絡めて論じているシーンもあり、精密な犯人当てを楽しんでほしい。

逆光を浴びながらステージに登場したボーカルは、突如悲痛な叫び声をあげるとその場に頽れた。彼の胸には千枚通しが突き刺さっていた。衆人環視の中でのボーカルの不可解な変死により、ロックバンド“赤い青”は活動休止に追い込まれる。事件直前、カリスマ的なギタリストが演奏中に冒した、彼に似つかわしくないミスは事件と何か関係があるのか?ライブハウスのスタッフである梨佳は、あの日なにが起こったのかを考え始める。やがて起きた第二の悲劇―ロックは、果たして人を殺すのか?無冠の大型新人が満を持して贈る、感動の第一長編。

9.グラスバードは還らない

マリア&漣シリーズ第3弾である。ビル爆破テロに巻きこまれたマリアたちの章と、そのビルを所有する大富豪の会社関係者が密室に閉じこめられて次々と殺害される章。そのふたつが交互に進んでいく。

結末はこれまでと同様に大掛かりな仕掛けが待っている。そして、すべてのヒントは前半で示されているので、ミステリー好きにはたまらない作品だろう。

1作目『ジェリーフィッシュは凍らない (創元推理文庫)
2作目『ブルーローズは眠らない

マリアと漣は、大規模な希少動植物密売ルートの捜査中、得意取引先に不動産王ヒュー・サンドフォードがいることを掴む。彼にはサンドフォードタワー最上階の邸宅で、秘蔵の硝子鳥や希少動物を飼っているという噂があった。捜査打ち切りの命令を無視してタワーを訪れた二人だったが、あろうことかタワー内の爆破テロに巻き込まれてしまう!同じ頃、ヒューの所有するガラス製造会社の社員とその関係者四人は、知らぬ間に拘束され、窓のない迷宮に閉じ込められたことに気づく。傍らには、どこからか紛れ込んだ硝子鳥もいた。「答えはお前たちが知っているはずだ」というヒューの伝言に怯える中、突然壁が透明になり、血溜まりに黄たわる社員の姿が…。鮎川哲也賞受賞作家が贈る、本格ミステリーシリーズ第3弾!

10.漂砂の塔

北方領土の島を舞台に、ロシア、中国、日本の3ヶ国が開発プロジェクトに参加する。そこで殺人事件が起き、敵と味方が入り乱れて二転三転し、読み応えのある長編小説なのである。

大沢在昌氏の『漂砂の塔』
レアアースを生産する合弁会社が北方領土にある。領土を主張するロシア、生産技術の中国、エネルギー供給の日本、この3か国が合弁会社に携わっている。その島で両目を抉られた日本人の死体が発見された。
【新宿鮫シリーズ以外の文庫本】大沢在昌氏のおすすめ9作品!
今回は、大沢在昌氏の「新宿鮫シリーズ」だけを読んだ人や、大沢在昌氏のことをなにかで知ったが、どの作品を手にしたらいいのかわならない人に向けて書いたのである。そして、大沢氏のハードボイルド小説を堪能するために、すこしでも参考になればうれしい。
大沢在昌氏の『帰去来』
作家生活40周年記念、執筆10年に及ぶ大長編、パラレルワールド警察小説、と帯に書かれている。そうはいっても帯の文言は関係がなく、わたしは大沢在昌氏の作品であれば購入して読むのだが……。<ということで「帰去来」のあらすじと感想を書いていく。

二〇二二年、雪と氷に閉ざされた北方領土の離島。日中露合弁のレアアース生産会社「オロテック」で働く日本人技術者が、死体となって発見された。凍てつく海岸に横たわる体。何者かに抉りとられていた両目。捜査権がなく、武器も持てない土地に送り込まれたのは、ロシア系クォーターで中国語とロシア語が堪能な警視庁の石上だった。元KGBの施設長、美貌の女医、国境警備隊の若き将校、ナイトクラブのボス…敵か、味方か?信じられるのは、いったい誰だ?日中露三ヵ国の思惑が交錯し、人間たちの欲望が渦を巻く!

『このミステリーがすごい!』21位以下のおすすめ11作品

国内ミステリー11冊
1.凶犬の眼

舞台が暴対法以前という絶妙な時代に設定されているため、迫力がまったくそがれることはない。そして、日岡は所轄署から田舎の駐在所に異動となり、やくざとの駆け引きや友情が描かれている。

それと、前作の『孤狼の血 (角川文庫)』をさきに読んでおいたほうがいいだろう。

所轄署から田舎の駐在所に異動となった日岡秀一は、穏やかな毎日に虚しさを感じていた。そんななか、懇意のヤクザから建設会社の社長だと紹介された男が、敵対する組長を暗殺して指名手配中の国光寛郎だと確信する。彼の身柄を拘束すれば、刑事として現場に戻れるかもしれない。日岡が目論むなか、国光は自分が手配犯であることを認め「もう少し時間がほしい」と直訴した。男気あふれる国光と接するにつれて、日岡のなかに思いもよらない考えが浮かんでいく…。警察VSヤクザの意地と誇りを賭けた、狂熱の物語。日本推理作家協会賞『孤狼の血』シリーズ最新刊!

2.黙過

それぞれ独立した4つの短編がさいごにすべてつながりひとつになる。臓器移植、パーキンソン病、養豚場など、それぞれの話が、命の選択と軽重を問うてくる。

重いテーマだが、たくさんの人に読まれるべき作品である。

下村敦史氏の【悲願花】一家心中の生き残りでも私を愛せますか?
下村敦史氏は、デビュー作品はもちろんのこと、それ以降も良作を書きつづけている。つまらないと思うようなものはなく、作品の水準は安定している。今回の『悲願花』もすばらしいので、多くの人に読んでいただきたい。そのため、すこしだけ気合を入れてあらすじと感想を書いていく。
『絶声』-下村敦史氏-3人の骨肉の争いの果てに待っているものは……
下村敦史氏は早いペースで作品を発表してくれるのでありがたいことである2018年12月〜2019年8月のあいだに、3冊も発刊されている。3か月に1冊のペースである。2018年12月に発刊された『悲願花』は、作中の仕掛けに驚かされることだろう。

移植手術、安楽死、動物愛護…「生命」の現場を舞台にしたミステリー。意識不明の患者が病室から消えた!?(『優先順位』)。なぜ父はパーキンソン病を演じているのか(『詐病』)。母豚の胎内から全ての子豚が消えた謎(『命の天秤』)。真面目な学術調査団が犯した罪(『不正疑惑』)。この手術は希望か、それとも絶望か―(『究極の選択』)

3.夏を取り戻す

団地で小学生の児童が次々と失踪する。その事件は相次ぎ、やがて意外な展開を見せはじめる。

事件を追っていたふたりの記者がたどり着いた真実は……どのようにして不可能な状況で失踪したのか……大人と子どもの知恵比べである。

失踪の背後に隠された意外な真実、そして二重三重に張りめぐらされた伏線におどろかされることだろう。

これは、もうすぐ二十一世紀がやってくる、というころに起きた、愛すべき子供たちの闘いの物語。―不可能状況下で煙のように消え去ってみせる子供たちと、そのトリックの解明に挑む大人の知恵比べ。単なる家出か悪ふざけと思われた子供たちの連続失踪事件は、やがて意外な展開を辿り始める。地域全体を巻き込んだ大騒ぎの末に、雑誌編集者の猿渡の前に現れた真実とは?いま最も将来を嘱望される俊英が新境地を切り拓く、渾身の力作長編。ミステリ・フロンティア百冊到達記念特別書き下ろし作品、遂に刊行!

4.ヘブン

まともな人物はほぼ出てこず、イカれた人ばかりが登場する。この作品は、『キングダム (幻冬舎文庫)』の続編なので、より楽しむために『キングダム』をさきに読んでおくことをおすすめする。

そして、詳しくは下記の記事を参考にしてしていただければ幸いである。

【ヘブン】待望の『キングダム』の続編!暴力団への復讐を企てる傑作
新野剛志の『ヘブン』は、『キングダム (幻冬舎文庫)』の続編である。多摩川の河川敷で現役暴走族と乱闘事件を起こした結果、相手のひとりを殺害してしまった。それから4年後を描いたのが本作の『ヘブン』で、タイに逃亡していた真嶋が暴力団への復讐のために、東京の覚醒剤ビジネスを暴力団から奪いとることを企てる。

東京の裏社会に王国を築いた元「武蔵野連合」の真嶋貴士。暴力団に歯向かい多くの犠牲者と復讐者を生み出し姿を消した。数年後、真嶋の姿は、タイのジャングルの奥深く、麻薬王のアジトにあった。覚醒剤ビジネス、大物政治家との癒着、アイドルの黒い噂、売春斡旋、当籤金詐欺、宗教団体の罠、暴力団の報復…タブーに挑んだ怪物的エンタメシリーズ第二弾!

5.彼女の恐喝

奨学金をもらう女子大生がクラブで働き、そこで出会った客のひとりを偶然目撃して恐喝する。それぞれの人が第一印象とちがい、意外なことをしている。

ストーカー、不倫、恐喝、殺人、子の親殺し、スマホ遠隔操作、偶然の出会い、といろいろなことが起きる。良質のエンターテイメントサスペンスだろう。

都内の女子大に通う圭子は、出版社の編集者を目指す大学4年生。奨学金を利用し、六本木のクラブで働きながら、大学生活を送る。大型の台風が東京を襲った夜、マンションから男が飛び出してきた。クラブの客で、人材派遣会社社長の国枝だ。翌日ニュースを見ると、そのマンションで殺人事件が起きたという。就職が決まらず鬱屈していた圭子は、国枝に脅迫状を送る…。人々の感情が交錯し、火花を散らす犯罪×心理サスペンス!今勢いに乗る直木賞作家が贈る、大人の傑作エンターテインメント!!

6.路上のX

3人の女子高生が経験する悲惨な話である。親のエゴがきっかけで、味わう必要のない思いをする。少女達があまりにも不憫で可哀想になる。

自暴自棄になったり嘘を繰りかえしたりしながら、それでも生きていくために身体を張る。3人しか仲間がいない状況であっても、ときにはぶつかり合ったり罵り合ったりと、少女達の人物描写は秀逸である。

ネグレクト、虐待、DV、レイプ、JKビジネスなど今時の世相が反映されている。救いようのない大人たちもたくさん登場するが、多くの人に読んでほしい作品である。

幸せな日常を断ち切られ、親に棄てられた女子高生たち。ネグレクト、虐待、DV、レイプ、JKビジネス。かけがえのない魂を傷めながらも、三人の少女は酷薄な大人たちの世界をしなやかに踏み越えていく。最悪な現実と格闘する女子高生たちの肉声を物語に結実させた著者の新たな代表作。

7.PIT特殊心理捜査班・水無月玲

凄惨な殺され方をする場面があるため、グロいのが苦手な人におすすめできない。

しかしおもしろい作品なので、予想できない結末を楽しんでいただきたい。

五十嵐貴久氏の【PIT特殊心理捜査班・水無月玲】捜査に必要なものは?
今回は、五十嵐貴久氏の『PIT特殊心理捜査班・水無月玲』という傑作を紹介したいと思う。上野駅(うえの)のコインロッカーで十一個の肉塊が発見されたのが、V事件の始まりだった。殺害した女性を解体し、それぞれのパーツをコインロッカーに並べて配置するという異常な猟奇殺人だ。
【コヨーテの翼】暗殺のプロVS警備のプロ……標的は総理大臣!
五十嵐貴久氏の「コヨーテの翼」の舞台は、2020年の東京である。約4箇月後の7月24日、第32回夏季オリンピック競技大会がはじまる。そのため、テロや事件が発生した場合の模擬訓練を兼ねて、新国立競技場の付近で検問をおこなっていた。
五十嵐貴久氏の『マーダーハウス』∼シェアハウスの止まらない殺戮!∼
『敷金0・礼金0、命の保証もありません。入居者募集、豪華シェアハウスの止まらない殺戮!震撼のイッキ読みサイコミステリー!』と帯に書かれている。その文言と、「マーダーハウス」というタイトルに惹かれて購入したので、あらすじと感想を書いていく。
『アンサーゲーム』愛か打算か裏切りか……究極の心理ゲームが開幕!
今回は、五十嵐貴久氏の「アンサーゲーム」を紹介する。別々の場所で監禁された男女が、強制的にゲームに参加させられる。そのゲームの内容は、ふたりの答えを一致させるというものだ。全部で10問あり、3回まちがえるとゲームオーバーだという……。

ビッグデータ解析による犯罪予測システムの開発をしている蒼井俊は、連続猟奇殺人事件“V事件”の犯人を突き止めるため、プロファイラーの水無月玲率いるPITへの異動を命じられた。刑事の勘を信じ、俊に反感を抱く川名基三、玲を信奉する春野杏菜らとVを追っている最中、現職の刑事が惨殺される事件が発生して―。ノンストップ警察ミステリー!

8.道具箱はささやく

原稿用紙20枚ほどの作品が18編収録されている。この短さでここまで満足させられることに、ただおどろくことしかできない。

ちょっとした隙間時間に読むのに適した良作だろう。

資産家の娘・早百合に意中の相手がいるのか。調査を依頼された探偵の木暮と菜々は、最後の候補者と早百合がスクランブル交差点ですれ違うよう仕向ける。だが、その寸前に、なぜか木暮は早百合に電話を入れた…(「意中の交差点」)。借金苦から、休暇を利用して質屋に押し入った刑事の角垣。逃走中に電柱に衝突するも目撃者はなく、無事逃げおおせた。だが、なぜか上司の南谷は、角垣が犯人だと見抜くのだった…(「ある冬のジョーク」)。とっておきのアイデアを注ぎ込み、ストイックに紡がれた贅沢な作品集。

9.ファーストラブ

第159回直木賞受賞作の本作は、男性に傷つけられることが当たりまえだった女性の父親殺しにスポットを当てている。美談が好きな人に、とくにおすすめしたい作品である。

なぜ娘は父親を殺さなければならなかったのか?多摩川沿いで血まみれの女子大生が逮捕された。彼女を凶行に駆り立てたものは何か?裁判を通じて明らかにされる家族の秘密とは?

10.ポストカプセル

ポストに入れたはずのラブレターや遺書、脅迫状などが15年後に届いたらという話。ラストを含めた構成はとても凝っているので、ミステリー好きにはたまらない作品だろう。

【ポストカプセル】折原一氏/騙りの名手の傑作!
ラブレター、謝罪文、脅迫状、小説新人賞の受賞通知などの手紙を15年後に届けたら、受けとった人はどのような反応をするのか?悲しんだり憤りを感じたり様々な反応があり、大きな事件に結びつく。ひとつひとつの事件の裏を理解したとき、きっと読者は驚愕するだろう。

15年遅れで届いた手紙が、思いもよらない騒動を引き起こす!心温まるはずの善意の企画(?)の裏に、驚愕の真相が…!?

11.その先の道に消える

SM世界に緊縛師として生きた男の殺害事件。その捜査を担当する刑事は、殺害された男と関わった女を通して事件に巻きこまれる。

二転三転するストーリーもよく、タイトルにこめられた意味を読後に考えさせられる。性描写がかなり多いため、そのような描写が苦手な人にはおすすめできないが、わたしの2018年のベスト5に入るほどの作品である。

僕は今、正常だろうか?僕が求めているものは、何だろう?アパートの一室で発見されたある“緊縛師”の死体。重要な参考人として名前があがる桐田麻衣子は、刑事・富樫が惹かれていた女性だった。疑惑を逸らすため、麻衣子の指紋を偽装する富樫。全てを見破ろうとする同僚の葉山。だが事態は、思わぬ方向へと突き落とされていく。犯人は誰か。事件の背後にあるものとは、一体何なのか。やがて、ある“存在告白”が綴られた驚愕の手記が見つかり―。

さいごに

原尞氏のそれまでの明日という本

原尞氏の『それまでの明日』は、各ランキングの上位を総なめしている。しかし、「それほどすごい作品なのか」と期待して、これからこの作品を読む人は肩透かしを食うかもしれない。

「沢崎シリーズ」「14年ぶりの最新作」「デビュー30周年記念作品 」この3つが重なったため、高評価となったのだろう。ハードルを上げずに読んだほうがいい。「つまらない」とは言わないが……。

というわけで、この記事で2018年を締めくくりたいと思う。

【2019年上半期】国内ミステリーの面白くて面白くてふるえる17選‼
1週間ほど経過すると、2019年の8月になる。わたしが嫌いな夏は、冷房で部屋をキンキンにひやして読書をしたいものである。そんなわけでおもしろくておもしろくてふるえる『2019年上半期の国内ミステリー(2018年11、12月分を含む)』17選を紹介する。

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