『今年度ベスト級の謎がここに。完全無欠のフェアプレイ精神でおくる奇妙奇天烈な三つの殺人事件。』という帯の惹句に嘘偽りはなかった。
『ドッペルゲンガーの銃』の目次
【目次】
- 文豪の蔵〜密閉空間に忽然と出現した他殺死体について〜P5〜
- ドッペルゲンガーの銃〜二つの地点で同時に事件を起こす分身した殺人者について〜P131〜
- 翼の生えた殺意〜痕跡を一切残さずに空中飛翔した犯人について〜P259〜
- それからP379〜
ミステリー小説家の女子高生が小説のネタを見つけるために、キャリア警察官僚の兄に頼る。事件の現場に連れていってもらい、3つの事件の真相を追う。事件の真相を解明するのは、兄なのか妹なのか、それとも……。
サプライズがあり、予想できない内容である。
文豪の蔵
絞殺された遺体が蔵のなかで発見される。蔵は南京錠で施錠されていて、その鍵を持っているのはひとりだけだった。
コピーされたり盗まれたりしないように、鍵をネックレスのようにつねに首にぶら下げていた。それに、風呂のときは視界に入るところに置き、寝るときは枕の下において寝るほどの徹底ぶりだ。
つまり、その男が犯人でなかった場合、どのようにして密室殺人がおこなわれたのかということである。
ミステリーを好む人であれば、楽しめるだろう。
ドッペルゲンガーの銃
離れたふたつの場所でほぼおなじ時刻に、コンビニ強盗と射殺事件が発生する。コンビニ強盗の犯人は拳銃を所持していて天井に2回発砲し、コンビニ店員に差し出された3万円を奪って逃げたのである。
コンビニ強盗と射殺事件はほぼ同時刻に起きたにもかかわらず、線条痕が一致し、同一の拳銃が使用されたことが判明する。
魅力的な謎である。ぜひ、この本を読んで謎を解明してほしい。
翼の生えた殺意
積雪したある日、父親が首を吊って死亡した。その現場は母屋ではなく、離れのような場所だった。母屋から離れに向かう父親の足跡と、第一発見者の往復した足跡。自殺にしては不審な点があるが、犯人の足跡がない……。
自殺なのか他殺なのか、他殺だとしたら……どのようなトリックなのか……。
それから
3つの事件のあとの、ふたりの日常が書かれている。
さいごに
さすがは倉知淳氏である。フェアすぎるほどフェアであり、読者にやさしすぎるのだ。情報を隠すようなことをしないので、真相を解明できなかったときのくやしさは半端ない。かなりおすすめの作品である。ぜひ、一読を!
密閉空間に忽然と出現した他殺死体について―「文豪の蔵」。二つの地点で同時に事件を起こす分身した殺人者について―「ドッペルゲンガーの銃」。痕跡を一切残さずに空中飛翔した犯人について―「翼の生えた殺意」。この謎を解くのはキャリア警察官僚の兄か、女子高生ミステリ作家の妹か、それとも…?
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