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久坂部羊氏の【介護士K】は衝撃の大傑作!殺すのは慈悲なんです!

久坂部羊氏の介護士Kという本国内ミステリー
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久坂部羊氏(くさかべよう)は、『廃用身』で作家デビュー。このデビュー作を読んで、わたしは衝撃をうけたのだ。大傑作だからである。『廃用身 (幻冬舎文庫)』を未読の人は絶対に読んだほうがいいだろう。

そして2作目の『破裂〈上〉 (幻冬舎文庫)』の帯の「医者は、三人殺して初めて、一人前になる」という惹句を見て、ふたたび衝撃をうけたのだ。内容もすばらしい。

それからふたたび、今回の『介護士K』の帯の「死なせるのは慈悲なんです」という文言に惹かれたのである。その結果、またしても大傑作を読んでしまったので、あらすじと感想を書いていこうと思う。

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84歳の女性が、深夜に老人ホームの4階のベランダから転落し、首の骨が折れて死亡した。その女性は入所者である。認知症があり、ふだんから「死にたい」と洩らしていた。

そのため、事故と自殺の両方の可能性があるという。しかしルポライターの女性主人公は、その情報をテレビのニュースを観て知り、「4階から落ちたのに、首の骨を折るとはどういうことだろうか。頭から飛びこんだのか。自殺だった場合、そんなことができるだろうか」と違和感を覚えたのだった。

そしてこの老人ホームでは、1年まえにも介護士による暴行事件があった。その取材をおこなったのは先月のことで、そのときに話を聞かせてくれた介護士の男性が第一発見者だということに気づく。医者や介護士たちに取材をして調査をすすめていくなか、第2、第3の事故が発生する。

「おかしくないです。朝倉さん、”殺す”と”死なせる”のちがいはわかってますか」
「同じよ。どちらも命を奪うんだから」
「いいえ。殺すのは悪意や怒りだけれど、死なせるのは慈悲なんです。死にたいと願う高齢者はたくさんいます。しかし、自力で死ねなくて困ってるんです。だから手を貸してあげる。人助けじゃないですか」
P156

【直撃!シンソウ坂上SP】という番組が12月13日に放送され、出演者は橋田壽賀子氏だった。安楽死宣言の真相に迫るためである。

「脳梗塞、認知症になった、自分の楽しみがなくなった、そのときには死なせてください、と生前の元気のうちに書いておく。生まれるのは自由じゃないけど、死ぬときくらいは自分で選ばせてほしい」と橋田壽賀子氏は語っていた。

それに、「いますぐにでも死にたいということですか」という坂上忍氏の質問に、「明日、安楽死しましょうか、と言われたら、はい、ありがとうございます、と言いますよ」と答えていた。

「自殺幇助になる」「家族の気持ちを考えろ」という批判があったようだが、わたしは橋田壽賀子氏の意見に賛成である。

この番組を観ていたとき、M-1グランプリ2018の、「おれがゾンビになったら殺してくれよ。こんなこと、おまえくらいしか頼めないし……」という『和牛』の1本目のネタを思い出した。

死ななければ軌跡が起きて、ゾンビからふつうの人間にもどれるかもしれない。植物人間や認知症になっても、軌跡が起きて治るかもしれない。そんな確率の低いことを楽観的に考えて主張することはできないだろう。

――真理亜は自分の言っていることがわかっていない。床ずれを治したいのも、祖父に死なないでほしいと思うのも、すべて自分のエゴなのに。ほんとうに祖父のことを思うなら、祖父の望む通りにしてあげるべきなのに――。
しかし、それは言えなかった。なぜなら自分もエゴで、真理亜を悲しませたくなかったから。P226

上記の内容は、寝たきりの祖父が介護施設にいる、真理亜という姉をもつ、男性介護士の心理描写である。自分の人生の幕の引き方を、自分で決められないのは苦痛だと思う。

『介護士K』は、介護と安楽死をテーマにしているためとても重たい作品だが、多くの人に読まれるべき大傑作なのである。

「死なせるのは慈悲なんです」―高齢者医療と介護の実態をえぐり出し、生と死のあり方を問う衝撃作!有料老人ホーム「アミカル蒲田」で入居者の転落死亡事故が発生した。ルポライターの美和は虐待の疑いを持ち、調査をはじめる。やがて虚言癖を持つ介護士・小柳の関与を疑うようになるが、彼にはアリバイがあった。そんななか、第二、第三の事故が発生する―。なぜ苦しむ人を殺してはならないのか。現役医師でもある著者が、人の極限の倫理に迫った問題作。

廃用身とは、脳梗塞などの麻痺で動かず回復しない手足をいう。神戸で老人医療にあたる医師漆原は、心身の不自由な患者の画期的療法を思いつく。それは廃用身の切断だった。患者の同意の下、次々に実践する漆原を、やがてマスコミがかぎつけ悪魔の医師として告発していく―。『破裂』の久坂部羊の、これ以上ない衝撃的かつ鮮烈な小説デビュー作。

過失による患者の死に平然とする医師たちに怒りがたぎる元新聞記者・松野。心臓外科教授の椅子だけを目指すエリート助教授・香村。「手術の失敗で父は死んだ」と香村を訴える美貌の人妻・枝利子。医療の国家統制を目論む“厚労省のマキャベリ”佐久間。医療過誤を内部告発する若き麻酔科医・江崎。五人の運命が今、劇的にからみ転がり始めた。

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