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『クサリヘビ殺人事件 蛇のしっぽがつかめない』〜越尾圭氏〜2019隠し玉!

越尾圭氏のクサリヘビ殺人事件という本国内ミステリー
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今回は、越尾圭氏の『クサリヘビ殺人事件 蛇のしっぽがつかめない』を紹介する。「これがデビュー作とは思えない。最後はまさかの方向にジャンプ」「ラストに待ち受ける読者唖然の大展開‼」「事件の背後にある、希少動物をめぐる違法売買の闇を獣医が追う!」と帯に書かれている。

本書は第17回の【このミステリーがすごい!】大賞の隠し玉である。

▼大賞は、ぶっ飛んだ設定の『怪物の木こり』▼
『怪物の木こり』【このミステリーがすごい!】第17回大賞受賞作
倉井眉介氏の「怪物の木こり」は、2019年(第17回)『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作である。【感情のないサイコパス弁護士VS斧で襲い、脳を奪うシリアルキラー】と帯に書かれていて、サイコパスものが大好物であるわたしは本書をすかさず手にとった。
▼優秀賞の『盤上に死を描く』は、史上最年長65歳の井上ねこ氏の作品▼
『盤上に死を描く』-井上ねこ氏-『このミス』大賞-優秀賞受賞作-
井上ねこ氏の「盤上に死を描く」は、『このミステリーがすごい!』大賞の第17回優秀賞を受賞した作品である。そして本作は受賞時、「殺戮図式 猫吉」というタイトルと筆名だった。史上最年長の65歳だという著者の「盤上に死を描く」を紹介していこうと思う。
▼隠し玉(1)の『偽りの私達』は、「現役女子高生17歳、鮮烈デビュー!」という作品▼
『偽りの私達』〜日部星花氏〜【(このミス)大賞2019隠し玉】
「ループものにまだこの手があったか!」「現役女子高生17歳、鮮烈デビュー!」と帯に書かれた、日部星花氏の『偽りの私達』を紹介する。本書は第17回の【このミステリーがすごい!】大賞の隠し玉である。大賞は『怪物の木こり』で、優秀賞は『盤上に死を描く』だ。

ということで、『クサリヘビ殺人事件 蛇のしっぽがつかめない』のあらすじと感想を書いていく。

主人公の遠野とおの太一たいちは、「遠野動物診察所」という動物病院を営んでいる。父が4年まえに肝硬変で他界し、26歳という若さで動物病院の跡を継いだのである。

そしてある日の午前3時すぎ、スマートフォンに幼馴染の小塚こづかきょうへいから電話があった。

しかし、わずかに息づかいが聞こえるだけで、なにもしゃべらない。主人公が問いかけても無音のままで応答がないため、異変を感じて幼馴染の自宅マンションへ向かうのだ。

窓ガラスを割ってマンションの一室に入ると、うつ伏せに倒れていた友人を発見する。心肺が停止していたので、心臓マッサージを開始した直後、

駄目なのか。そう思ったとき、今度は恭平の左手首が目に入った。出血している箇所を見て違和感を持った。傷口が二つ。小さな点状の傷跡から血が流れている。おかしいと思った瞬間、二つの傷が目のように見え、その直後に思い当たった想像に、今度は全身が凍りつくほどの恐怖に襲われた。
動きを止め、室内を見渡す。推測どおりのことが起きたのなら、恭平は自分で病院に連絡するはずだ。
『中略』
動く物体が視界に入った。反射的に顔を向ける。
目が合った。
鎖模様の斑点をまぶした茶褐色の細長い胴体から、逆三角形の頭部が伸び上がっていく。
ヘビ――。
大きなヘビが頭をもたげて威嚇の体勢に入ろうとしていた。一メートルは超えていると思われる身をうならせ、舌を頻繁に出し入れしている。P18〜19

部屋に蛇がいて、蛙がおどろいてジャンプしている

主人公は急いで部屋をでるのだった。そのあと、通報をうけた警察署の生活安全課の警官たちが防護服で身を固め、捕獲網を手に友人の自宅へ入り、ヘビを捕獲するのである。

「ラッセルクサリヘビ?確かに警察はそう言ったの」
「ワシントン条約で規制されているとか」
「そう。インドやパキスタンを中心に生息しているんだけど……。あのヘビはとてつもない猛毒を持ってる。コブラよりも」
「そんなにか」
「LD50って知ってる?」
「昔、習ったかもしれんが忘れた。俺の仕事は毒とは無縁だしな」
「実験動物の五十パーセントが死亡すると推定される、投与した物質や薬物の量のこと。たとえばマウスが二十四時間以内に半数が死ぬ毒の量を表すとすると、ラッセルクサリヘビは約〇・〇三五ミリグラム」
「その数値だけじゃ、ぴんとこないな」
「キングコブラは約〇・一ニ五ミリグラム。ラッセルクサリヘビの四倍の量が必要なの。算出方法は多々あるけど、だいたいこのくらいの違いがある」
その数字を聞いて背筋に悪寒が走った。コブラの四倍?恭平はそんな毒をまともに食らったのか。P29〜30

そして、警視庁捜査一課の武藤という男が「遠野動物診察所」にやってきて、このように言うのである。

「小塚さんの自宅の玄関ドアに郵便受けがあるのですが、郵便物の投入口からヘビの皮膚粘膜が採取されました」
「それはつまり……ヘビは郵便受けから侵入したと?」
武藤は黄ばんだ前歯を見せ、黙ったまま口の端を吊り上げた。どうやら笑ったらしい。
「侵入ではありませんよ。投入されたと見るべきでしょう」
「えっ」P41

幼馴染は殺されたのか……殺されたとしたら、理由はなんなのか……主人公と、

  • 小塚恭平の妹である、東京税関で働いている利香
  • 出版社で働いている、小塚の事件のことを主人公に取材にきた男(樋口)

上記のふたりが加わり、その3人が真相を追うという物語である。

「これがデビュー作とは思えない」はさすがに誇張している。それなら、「大賞」か「優秀賞」を受賞しているはずである。しかし、「最後はまさかの方向にジャンプ」「ラストに待ち受ける読者唖然の大展開‼」という惹句は、まさにそのとおりだろう。

「結局、身元はわからずじまい。これはしょうがないけど、気になる点としては、その傷跡からどんな銃が扱われていたかが判明したってこと」
「どういう種類なんだ」
「ライフルみたいな、遠距離から狙撃するタイプの銃だったみたい」
「そうなのか。そのホームレスは運が悪かったな」P165

東京湾の埠頭の岸壁に、男性の遺体が浮かんでいたという事件があった。被害者は年老いたホームレスである。本筋と関係ないわけがないので、どこかでつながるだろうと予想しつつ読んでいたが、「そうつながるのか!」とおどろかされるだろう。

それに、スリリングな展開なのでページをめくる手がとまらない。一読の価値はあるため、おすすめの作品である。

動物診療所を営む獣医・遠野太一の幼馴染で、ペットショップを経営する小塚恭平が、自宅マンションでラッセルクサリヘビに噛まれて死んだ。ワシントン条約で取引を規制されている毒蛇が、なぜこんなところに?死に際に恭平から電話を受けて現場に駆けつけた太一は、恭平の妹で今は東京税関で働いている利香とともに、その謎を解き明かそうとするが、周囲に不穏な出来事が忍び寄り…。

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