『敷金0・礼金0、命の保証もありません
入居者募集
豪華シェアハウスの止まらない殺戮!
震撼のイッキ読みサイコミステリー!』
と帯に書かれている。
その文言と、「マーダーハウス」というタイトルに惹かれて購入したのであらすじと感想を書いていく。
主人公は女性である。合格した大学に通うために、ひとりで新潟から鎌倉に引っ越すことになった。
鎌倉市内のワンルームマンションの平均的な相場は六万五千円だが、サニーハウスは光熱費込みで四万五千円だった。見間違いではないかと、何度も確認したほどだ。
サニーハウスのスペック説明文は、暗記するほど読んでいた。今も頭に思い浮かべることができる。
『――サニーハウス鎌倉は敷地面積五〇〇平米、建物の総面積は六〇〇平米、ひと部屋は三〇平米のワンルーム、ベッド、デスク、チェア、その他ひと通りの家具が備え付けられており、最低限必要なものさえあれば、その日からでも暮らすことができます』
三〇平米というと、約十八畳の広さだ。実家の自分の部屋は六畳だから、その三倍になる。しかも室内にあるバスルームは別だという。まさに夢の物件だ。
その他、庭には十メートルのプール、ジャクジー、サンデッキがあり、地下一階にはシアタールームも完備されていると書いてあった。むしろ妙だ、と思ったほどだ。P18
暮らすところをサニーハウス鎌倉というシェアハウスに決め、そこから大学に通うことにしたのである。サニーハウス鎌倉に住んでいるのは、男女4人ずつだという。
そのうちのひとりが事故死……そしてまたひとり……という話なのだが、ページの90%ほどが女子大生の日常で、大学、アルバイト、シェアハウスの人間模様が描かれている。プロローグは人間をバラバラに解体し、
用意していた黒いビニール袋に頭部と眼球を押し込んだ時、チャイムが鳴った。P6
だれの描写かわからないように書かれているが、新しい入居者の男性がサニーハウスに訪ねてくるところで終わるのだ。プロローグ、タイトル、帯の文言、この3つが物語の足を引っ張っている。
シェアハウスの人間が事故死、そしてもうひとりが事故死……「ただの事故死か」とストレートに受けとる読者は少ないだろう。
サイコパスのだれかが仕組んだのでは?そう思うのは当然である。
にもかかわらず、女子大生の日常がゆるやかに進んでいくので、茶番に付き合わされているように感じるだろう。
そして、後半の10%のところで「やっとおもしろくなるぞ」となるのだが、駆け足で走り抜けてしまうのである。つまり、長い茶番に付き合わされたあげく、サクッと終わるのだ。
そうであれば、プロローグはいらない、「シェアハウス」を「マーダーハウス」に改題したようだが「シェアハウス」のままでよかった、帯の文言をぼやかす……そのようにしていればもっと楽しめたはずである。
「女子大生の日常を読まされて退屈だな」と思わせておいて後半で急展開し、「あれも、あれも、あれも……サイコパスの仕業だったのか」となったほうがよかったと思う。
つまらないわけではないが、強くおすすめすることはできない。「物足りないな」と感じる作品である。
つぎの作品である『アンサーゲーム』(2019年05月27日時点の最新刊)の記事はこちら

希望の大学に合格し、引っ越し先を探していた藤崎理佐は、ネットで偶然シェアハウス「サニーハウス鎌倉」を見つけ、暮らすことになる。そこは海外セレブの別荘のように豪華な外見、充実した設備、格安の家賃と好条件ばかり。しかも同居するのはテレビの某番組に出てきそうな美男美女だった。憧れの地で楽しい日々を送っていたが、同居人が立て続けに死亡する。不安を抱いた理佐は高校時代の同級生、高瀬弘に相談する。違和感を覚えた弘はサニーハウスを調べることにするが、そこから恐怖は一気に加速していく!予想外の結末、震撼のサイコミステリー!
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