国内ミステリー小説の傑作を集めてみたのである。ここでいう傑作とは、
- 魅力的な謎
- 魅力的な登場人物
- 予想できない結末
上記の3つだ。ミステリーというジャンルは幅が広いため、読了したとき、人によってはミステリーなのかと違和感を覚えてしまう作品があるかもしれない。しかし、人によってちがうことなので、それは理解していただきたい。
それと、叙述トリック、どんでん返し、二転三転することなどを知っていたとしても、楽しむことができる人はいるだろう。だが、知らないほうが楽しめるのはまちがいないし、知りたくない人は多いはずである。
そのため上記の3つに該当する場合は、「予想できない結末」とか「かならず騙される」という説明をしている。もし、作品のことをもっと知りたいのであれば、
上記のように検索し、ほかの人の感想を読んでみるか、もしくはここのページからアマゾンなどにいき、レビューを読んでいただければいいだろう。
大晦日の特番「ミステリー・アリーナ」に出演するのはミステリーオタクである。正解すれば二十億円を手に入れることができるが……。多重解決ものの傑作だろう。
ブラックユーモアたっぷりのすばらしい作品である。詳しくは下の記事に書いてあるので参考にしていただければ幸いだ。

嵐で孤立した館で起きた殺人事件!国民的娯楽番組「推理闘技場」に出演したミステリー読みのプロたちが、早い者勝ちで謎解きに挑む。誰もが怪しく思える伏線に満ちた難題の答えは何と15通り!そして番組の裏でも不穏な動きが…。多重解決の究極にしてミステリー・ランキングを席巻した怒涛の傑作!!
中学校の野外活動部が訪れたキャンプ場に半グレ集団が侵入する。他の客を皆殺しにした結果、対抗する別グループやチャイニーズマフィアも乱入し、そのキャンプ場に隠されている40億円を奪い合うのだ。
そこに居合わせた女テロリストが生徒を守って半グレたちに反撃を開始する。どんだけ人が死ぬんだと言いたくなるものの、エンタメ小説としてはおもしろい作品である。
水楢中学校野外活動部の弓原公一らが合宿で訪れた湖畔のキャンプ場で、惨劇は起こった。隠された大金を捜す半グレ集団・関帝連合がキャンプ場を封鎖し、宿泊客を虐殺し始めたのだ。囚われの身となった公一たち。だが絶体絶命の状況下、突然何者かが凶悪集団に反撃を開始した!謎の闘士と中学生たちが決死の脱出に挑む。今最も旬な著者による戦慄と興奮の物語。
アメリカで起こった連続殺人犯サックマンの話から、一気に30年前、80年代の台湾へ。 前作の「流」とも重なるが、登場人物が少ないので読みやすい。
13歳の少年たち3人は、喧嘩、万引き、喫煙をする悪ガキだ。それぞれ家族に悩みを抱えている。彼らの切なさが溢れ、ついにとり返しのつかないことをしてしまう。それが、そのあとの彼らに影をおとすことになる。
3人の誰かがサックマンなのだろうか……。スタンド・バイ・ミーを思いうかべてしまう、青春ミステリーである。
1984年。13歳だった。夏休みが終わる2日前、ぼくたちの人生はここから大きく狂いはじめたんだ。少年時代は儚く、切なく、きらめいている。台湾が舞台の青春小説
『OUT』は、日本人初のエドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)にノミネートされた作品である。2004年のことだ。その二年後に、東野圭吾氏の『容疑者Xの献身』がノミネートされたが、どちらも受賞をのがしている。これだけで作品の説明はいらないだろう。傑作であることはまちがいない。
2018年発刊の『路上のX』は、ネグレクト、虐待、DV、レイプ、JKビジネスなどを題材とし、今時の世相が反映されている作品である。

そして『とめどなく囁く』は、2019年の作品。
失踪して8年が経過した元夫は生きているのか……元義母が息子(元夫)を見たと言っているのは、再婚したことへの嫌がらせなのか……それとも、ほんとうに生きているのか……生きているとしたら、なぜ8年のあいだ、一度も連絡をしてこなかったのか……という物語である。
30代のほとんどの時間を奪われて苦しみ、再婚してやっと第2の人生を歩みはじめた矢先、一難去ってまた一難……。
読みはじめると、ページをめくる手をとめることができず、夢中になって読んでしまう。そのため、まちがいなく傑作である。

深夜の弁当工場で働く主婦たちは、それぞれの胸の内に得体の知れない不安と失望を抱えていた。「こんな暮らしから脱け出したい」そう心中で叫ぶ彼女たちの生活を外へと導いたのは、思いもよらぬ事件だった。なぜ彼女たちは、パート仲間が殺した夫の死体をバラバラにして捨てたのか?犯罪小説の到達点。’98年日本推理作家協会賞受賞
『このミステリーがすごい!1996年版』の2位の作品。ちなみに1位は真保裕一氏の「ホワイトアウト」である。長い話なのだが、のめり込むことはまちがいないだろう。
第二次大戦直前、世界中にキナ臭い空気が漂う1935年。左翼運動に挫折しパリにやって来た、子爵家出身の日本人青年がいた。偶然、目にしたトリポリ・グラン・プリに魅せられ、青年はレーサーを目指す。ナチスの足音、スターリンの影に震える欧州で、国際諜報戦に巻き込まれつつも疾走する熱い青春―。冒険小説の枠を超えた面白さで圧倒する超大作2500枚。’95年、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会特別賞受賞。
希望を失って香港にたどり着いた日本人、暗黒街のボス、訳ありの男女、麻薬、殺人……。ハードボイルド小説である。
香港。この地には、観光客を標的に窃盗する『スリ』、その盗品を売りさばく『露店』、出回った盗品を探し出し、持ち主から手数料を得る『回収』とそれぞれグループが存在し、そこには三者共存の掟があった。ある日、回収側の人間である劉巨明が、何者かによって殺害された。仲間であった新田悟は、巨明の妻からあるメモを渡された。メモには巨明の文字で「任家英に気を付けろ」と謎のメッセージが残されていた。そして新田は、香港の闇社会に渦巻く悲しみの深淵に巻き込まれていく―。
パニック小説の傑作。第20回大藪春彦賞および第39回吉川英治文学新人賞受賞。わたしはもっと上位になると思っていたが、『このミステリーがすごい!2018年版』では、25位だった作品である。
上→単行本
下→文庫本
2026年、多数の死者を出した京都暴動。ウィルス、病原菌、化学物質が原因ではない。そしてテロ攻撃の可能性もない。発端となったのは一頭の類人猿。東アフリカからきた「アンク(鏡)」という名のチンパンジーだった―。
ハッピーエンドが好きな人におすすめすることはできないが、泣ける作品である。
辞令がなければ、函館に戻るつもりなどなかった。刑事田原稔は、函館西署着任の前日、殺人事件発生の報を受ける。被害者は、かつて愛情をかわした女、水野恵美だった。反故にされた約束。忘れたことはない。忘れられるはずがない。この事件に関わることは、二十年前に彼が故郷を捨てざるを得なかった、ある事情を追うのと同じこと。田原は黙々と捜査を続けていく。警察小説の傑作!
ブラジルからきたマーリオは、どん底から這いあがろうと必死にもがく。だが、更なる深みにはまっていく。女、金、シャブ、ヤクザ、マフィア。これでもかってほどに救われない話である。
反対する祖父を殴り倒して日本に出稼ぎに来た、日系ブラジル人マーリオ。しかし希望は裏切られた。低賃金で過酷な労働を強いる工場から抜け出し、今は風俗嬢の送迎運転手をやっている。ある日マーリオは、中国マフィアと関西やくざの取引の隙に、大金と覚醒剤を掠め取ることに成功。怒りと絶望を道連れに、たった一人の闘い―逃避行がはじまった!第1回大藪春彦賞受賞作品。
乱歩賞受賞作のうち、ベスト5を教えてほしい。そのような質問をしたら、この作品がかなりの高確率で入ってくるだろう。ミステリー小説が好きでなくても、小説が好きであれば読むべき作品である。
犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。二人は、無実の男の命を救うことができるのか。江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。
冒頭の部分は小難しいことが書かれているため、苦痛を感じるかもしれない。だが、徐々におもしろくなるのはまちがいない。そして、ページをめくる手がとまらなくなるだろう。
イラクで戦うアメリカ人傭兵と、日本で薬学を専攻する大学院生。まったく無関係だった二人の運命が交錯する時、全世界を舞台にした大冒険の幕が開く。アメリカの情報機関が察知した人類絶滅の危機とは何か。そして合衆国大統領が発動させた機密作戦の行方は―人類の未来を賭けた戦いを、緻密なリアリティと圧倒的なスケールで描き切り、その衝撃的なストーリーで出版界を震撼させた超弩級エンタテインメント、堂々の文庫化!
沖縄を舞台にした、笑いあり涙ありの小説である。読了したとき、ほっこりするだろう。
九十七歳の生年祝い「風車祭」を翌年に控えたオバァ・フジの楽しみは長生きと、迷惑をかえりみない他人いじり。あの世の正月と云われる節祭の日、島の少年・武志はオバァのさしがねで美しい盲目の幽霊・ピシャーマと出会い、恋におちてしまう。そのせいでマブイ(魂)を落とした武志の余命は一年弱。彼は無事、マブイを取り戻すことができるのか!?沖縄の祭事や伝承、歌謡といった伝統的世界と現代のユーモアが見事に交叉する、沖縄版「真夏の夜の夢」。
『孤狼の血 (角川文庫)』をさきに読んでおくことをおすすめする。
所轄署から田舎の駐在所に異動となった日岡秀一は、穏やかな毎日に虚しさを感じていた。そんななか、懇意のヤクザから建設会社の社長だと紹介された男が、敵対する組長を暗殺して指名手配中の国光寛郎だと確信する。彼の身柄を拘束すれば、刑事として現場に戻れるかもしれない。日岡が目論むなか、国光は自分が手配犯であることを認め「もう少し時間がほしい」と直訴した。男気あふれる国光と接するにつれて、日岡のなかに思いもよらない考えが浮かんでいく…。警察VSヤクザの意地と誇りを賭けた、狂熱の物語。日本推理作家協会賞『孤狼の血』シリーズ最新刊!
作者は不幸なのかもしれない。デビュー作でこれだけの傑作をうみだしてしまったのだから……。
【追記】第2弾の『魔眼の匣の殺人』が2019年2月20日に発売された。どちらもおもしろく、ミステリー好きにはたまらないシリーズである。

『魔眼の匣の殺人』は上の記事に書いたとおり、2019年のおすすめの1作である。前作のようなぶっ飛んだ感じではないものの、すばらしい仕上がりなので手にとってみるといいだろう。後悔はしないはずだ。
上→単行本
下→文庫本
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。
合宿一日目の夜、映研のメンバーたちは肝試しに出かけるが、想像しえなかった事態に遭遇し紫湛荘に立て籠もりを余儀なくされる。
緊張と混乱の一夜が明け――。部員の一人が密室で惨殺死体となって発見される。しかしそれは連続殺人の幕開けに過ぎなかった……!!
究極の絶望の淵で、葉村は、明智は、そして比留子は、生き残り謎を解き明かせるか?!
奇想と本格ミステリが見事に融合する第27回鮎川哲也賞受賞作!
「あと二日で四人死ぬ」閉ざされた“匣”の中で告げられた死の予言は成就するのか。『屍人荘の殺人』待望のシリーズ第2弾!!
宮部みゆき氏の最高傑作だと思っている。そうとうまえに読んだが、いまだに記憶に焼きついている。
それと、2018年の12月に発刊された『昨日がなければ明日もない』は、「杉村三郎シリーズ」の5作目である。
未読の人や、シリーズの順番を知りたい人は下の記事を読んでみてほしい。

それぞれは社会面のありふれた記事だった。一人めはマンションの屋上から飛び降りた。二人めは地下鉄に飛び込んだ。そして三人めはタクシーの前に。何人たりとも相互の関連など想像し得べくもなく仕組まれた三つの死。さらに魔の手は四人めに伸びていた…。だが、逮捕されたタクシー運転手の甥、守は知らず知らず事件の真相に迫っていたのだった。日本推理サスペンス大賞受賞作。
心地よい話ではないが、目をそむけてはいけない。社会派ミステリーとしては傑作である。
そして、葉真中顕氏は2019年も絶好調なのだ。発刊されたのは2作品ある。どちらもすばらしい作品なので、楽しめるだろう。詳しくは下の記事をどうぞ!

戦後犯罪史に残る凶悪犯に降された死刑判決。その報を知ったとき、正義を信じる検察官・大友の耳の奥に響く痛ましい叫び―悔い改めろ!介護現場に溢れる悲鳴、社会システムがもたらす歪み、善悪の意味…。現代を生きる誰しもが逃れられないテーマに、圧倒的リアリティと緻密な構成力で迫る!全選考委員絶賛のもと放たれた、日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
風上に立っているときは他人事である。深く考えることができるのは風下に立たされたときだ。そのことに気づかせてくれる作品である。
元裁判官で、現在は大学教授を務める梶間勲の隣家に、かつて無罪判決を下した男・武内真伍が越してきた。愛嬌ある笑顔、気の利いた贈り物、老人介護の手伝い…武内は溢れんばかりの善意で梶間家の人々の心を掴んでいく。手に汗握る犯罪小説の最高傑作。
小野川のキャラがウザイのである。だが、それがおもしろい。楽しめる作品だろう。
新進作家、待居涼司の出世作『凍て鶴』に映画化の話が持ち上がった。監督・脚本に選ばれた奇才・小野川充は独自の理論を展開し、かつて世間を騒がせた自殺系サイト「落花の会」を主宰していた木ノ瀬蓮美の“伝説の死”を映画に絡めようとする。一方、小野川に依頼されて蓮美の“伝説の死”の謎に迫り始めたライターの今泉知里は、事件の裏に待居と似た男の存在があると気づき―。その企み、恐怖は予測不能。待望の文庫化。
「正義とはなにか」を考えさせられる作品である。
雫井氏の大人気シリーズの【犯人に告ぐ】、その第3弾である『犯人に告ぐ3』が2019年08月20日に発刊された。詳しくは下の記事をどうぞ!

蒲田の老夫婦刺殺事件の容疑者の中に時効事件の重要参考人・松倉の名前を見つけた最上検事は、今度こそ法の裁きを受けさせるべく松倉を追い込んでいく。最上に心酔する若手検事の沖野は厳しい尋問で松倉を締め上げるが、最上の強引なやり方に疑問を抱くようになる。正義のあり方を根本から問う雫井ミステリー最高傑作!
偽札をつくる話。名作である。

2019年04月12日発刊の『おまえの罪を自白しろ』は、真保裕一氏の誘拐ミステリーで、「誘拐ミステリーが好きだ」という人や、「真保氏のファンだが、読んでいない」という人は、詳しくは上の記事を参考にしていただければうれしい。
一千二百六十万円。友人の雅人がヤクザの街金にはめられて作った借金を返すため、大胆な偽札造りを二人で実行しようとする道郎・22歳。パソコンや機械に詳しい彼ならではのアイデアで、大金入手まであと一歩と迫ったが…。日本推理作家協会賞と山本周五郎賞をW受賞した、涙と笑いの傑作長編サスペンス。
主人公は葬儀屋である。身元不明の遺体をひきとりにいくと、自分の父親だった……。結末を知ったとき、おどろかされるだろう。
葬儀屋の矜持、刑事の矜持が絡み合う、衝撃&慟哭のサスペンスミステリー!
廃ビルで中年男性の死体が発見された。身元が判明しない中、葬儀屋が遺体を引き取りにくるが、葬儀屋・御木本悠司は、その遺体を目にした瞬間、刮目した。「これは俺の親父だ」。その偶然に疑問を持った刑事・滝沢圭は、単なる事故死と判断する本部に反発するようにその遺体に固執する。世の中を賑わす幼女連続殺人事件、葬儀屋の葛藤と苦悩、不遇な警察官を親に持つ刑事のトラウマ・・・・・・様々な要素が絡み合う中、意外な犯人と動機が明らかに! 平和な生活を犠牲にしてでも守らなければならない、刑事と葬儀屋の誇りとは・・・・・・慟哭の社会派ミステリー。
予想できない結末を楽しんでいただきたい。
弟・襾鈴の失踪と死の謎を追って地図にない異郷の村に潜入した兄・珂允。襲いかかる鴉の大群。四つの祭りと薪能。蔵の奥の人形。錬金術。嫉妬と憎悪と偽善。五行思想。足跡なき連続殺害現場。盲点衝く大トリック。支配者・大鏡の正体。再び襲う鴉。そしてメルカトル鮎が導く逆転と驚愕の大結末。一九九七年のNo.1ミステリに輝く神話的最高傑作。
流し読みをしないこと。きっと後悔するだろう。
神降市に勃発した連続猫殺し事件。芳雄憧れの同級生ミチルの愛猫も殺された。町が騒然とするなか、謎の転校生・鈴木太郎が犯人を瞬時に言い当てる。鈴木は自称「神様」で、世の中のことは全てお見通しだというのだ。鈴木の予言通り起こる殺人事件。芳雄は転校生を信じるべきか、疑うべきか。神様シリーズ第一作。
読んでいるとき、左手で残りのページ数が推測できるが、『造花の蜜』ほど不安になった小説はない。「残りのページ数が少ないのにこれだけ大風呂敷を敷いといて、たたまずに終焉する気か?」そんなふうに思うはずである。読んで確かめてほしい。まったく先が読めず、予想できない結末におどろかされることだろう。
歯科医の夫と離婚をし、実家に戻った香奈子は、その日息子の圭太を連れ、スーパーに出かけた。偶然再会した知人との話に気をとられ、圭太の姿を見失った香奈子は、咄嗟に“誘拐”の二文字を連想する。息子は無事に発見され安堵したのも束の間、後に息子から本当に誘拐されそうになった事実を聞かされる。―なんと犯人は「お父さん」を名乗ったというのだ。そして、平穏な日々が続いたひと月後、前代未聞の誘拐事件の幕が開く。各紙誌で絶賛を浴びたミステリの最高傑作がついに文庫化。
短編集のなかでトップクラスの傑作である。何人ものプロの作家がおすすめするほどの作品であり、この作品を読んだあとは、ほかの短編集では満足できなくなるかもしれない。それほどの傑作であるため、必読書と言っていいだろう。絶対に読むべき作品である。
大正歌壇の寵児・苑田岳葉。二度の心中未遂事件で、二人の女を死に迫いやり、その情死行を歌に遺して自害した天才歌人。岳葉が真に愛したのは?女たちを死なせてまで彼が求めたものとは?歌に秘められた男の野望と道連れにされる女の哀れを描く表題作は、日本推理作家協会賞受賞の不朽の名作。耽美と詩情―ミステリ史上に輝く、花にまつわる傑作五編。
言葉を交わすことの重要性を教えてくれる作品である。道尾氏の最高傑作だと、わたしは思っている。
添木田蓮と楓は事故で母を失い、継父と三人で暮らしている。溝田辰也と圭介の兄弟は、母に続いて父を亡くし、継母とささやかな生活を送る。蓮は継父の殺害計画を立てた。あの男は、妹を酷い目に遭わせたから。―そして、死は訪れた。降り続く雨が、四人の運命を浸してゆく。彼らのもとに暖かな光が射す日は到来するのか?大藪春彦賞受賞作。
詐欺師をテーマにした作品にほぼハズレはないだろう。
待望の続編がついに発刊!
最初から最後までの、多くの伏線。
どんでん返しの連発に楽しめるはずである。詳しくは以下の記事をどうぞ!

人生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年二人組。ある日、彼らの生活に一人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、5人と1匹に。「他人同士」の奇妙な生活が始まったが、残酷な過去は彼らを離さない。各々の人生を懸け、彼らが企てた大計画とは?息もつかせぬ驚愕の逆転劇、そして感動の結末。「このミス」常連、各文学賞総なめの文学界の若きトップランナー、最初の直木賞ノミネート作品。第62回日本推理作家協会賞受賞作。
貴志祐介氏の最高傑作と言う人もいる。おもしろい作品である。
藤木はこの世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を覆う、深紅色の奇岩の連なり。ここはどこだ?傍ら携帯用ゲーム機が、メッセージを映し出す。「火星の迷宮へようこそ。ゲームは開始された」
想像力の豊かさにびっくりすることだろう。文庫本だと上・中・下とある。かなり長い物語だが、夢中になって読むことができるはずである。
1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。周囲を注連縄で囲まれたこの町には、外から穢れが侵入することはない。「神の力」を得るに至った人類が手にした平和。念動力の技を磨く子どもたちは野心と希望に燃えていた…隠された先史文明の一端を知るまでは。
不幸に不幸が重なりつづける話である。読了したとき、「マジか!」と叫んでしまうことだろう。読後感はよろしくないが、そのような作品が嫌いでなければおすすめである。
広大な干拓地と水平線が広がる町に暮す中学生のシュウジは、寡黙な父と気弱な母、地元有数の進学校に通う兄の四人家族だった。教会に顔を出しながら陸上に励むシュウジ。が、町に一大リゾートの開発計画が持ち上がり、優秀だったはずの兄が犯したある犯罪をきっかけに、シュウジ一家はたちまち苦難の道へと追い込まれる…。十五歳の少年が背負った苛烈な運命を描いて、各紙誌で絶賛された、奇跡の衝撃作、堂々の文庫化。
乱歩賞受賞作のなかで1、2位をあらそう作品だろう。ミステリー小説が好きな人に訊くと、この作品か、それとも下にでてくる藤原伊織氏の『テロリストのパラソル』である。
奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき―百人一首にも登場する伝説の歌人、猿丸太夫が詠んだ歌に秘められた謎。そして“いろは歌”に隠された千年の暗号とは?友人の不可解な死に遭遇した、後の民俗学の巨人・折口信夫の若き日の推理が、歴史の深い闇をあぶりだす。江戸川乱歩賞受賞の永遠の傑作。
ミステリー小説が好きなのに、この作品を読んていないのはかなり損している。かならず騙される傑作である。
ヌードダンサーのミミイ・ローイこと漣子は八島財閥の御曹司・杉彦と恋に落ち、玉の輿に乗った。しかし幸福な新婚生活は長くは続かなかった。義父である当主・龍之助が何者かに殺害されたのだ。真犯人は誰なのか?弁護側が召喚した証人をめぐって、生死を賭けた法廷での闘いが始まる。「弁護側の証人」とは果たして何者なのか?日本ミステリー史に燦然と輝く、伝説の名作がいま甦る。
ミステリー小説初心者のうちに読んでおくべき作品のひとつである。読了した直後、タイトルに眼をやると、ニヤリとしてしまうことだろう。
美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作。
乱歩賞&直木賞を受賞した作品。この偉業を成し遂げたのは、いまだにテロリストのパラソルだけである。
アル中バーテンダーの島村は、過去を隠し二十年以上もひっそり暮らしてきたが、新宿中央公園の爆弾テロに遭遇してから生活が急転する。ヤクザの浅井、爆発で死んだ昔の恋人の娘・塔子らが次々と店を訪れた。知らぬ間に巻き込まれ犯人を捜すことになった男が見た真実とは…。史上初の第41回江戸川乱歩賞・第114回直木賞受賞作。
ハードボイルドというジャンルが好きな人にとってはたまらない作品だろう。
飲料会社宣伝部課長・堀江はある日、会長・石崎から人命救助の場面を偶然写したというビデオテープを渡され、これを広告に使えないかと打診されるが、それがCG合成である事を見抜き、指摘する。その夜、会長は自殺した!!堀江は20年前に石崎から受けたある恩に報いるため、その死の謎を解明すべく動き出すが…。
藤原伊織氏の作品をなん冊か読んだあと、この作品も読んでみてほしい。タイトルはふざけた感じだが、ほかの作品とはちがうおもしろさを体験させてくれるはずだ。
羽音と不思議な声がすべての始まりだった…。陸上競技への夢を断念し、水道職人となった若者・達夫の頭の中に、ある日奇妙な生物が侵入してくる。その名も蚊トンボ・シラヒゲ。超人的能力を得た達夫は、アパートの隣人・黒木を理不尽な暴力から救う。しかし、それは恐るべき闇社会との対決を意味していた。
アガサ・クリスティ氏の『そして誰もいなくなった』を読んだあとにこの作品を読むと、より楽しむことができるだろう。
名門女子校の式典の最中、演劇部による『そして誰もいなくなった』の舞台上で、服毒死する役の生徒が実際に死亡。上演は中断されたが、その後も部員たちが芝居の筋書き通りの順序と手段で殺されていく。次のターゲットは私!?部長の江島小雪は顧問の向坂典子とともに、姿なき犯人に立ち向かうが…。戦慄の本格ミステリー。
上質のホラー&サスペンス短編集である。
現世から冥界へ下っていく道を、古事記では“黄泉比良坂”と呼ぶ―。なだらかな坂を行く私に、登山姿の青年が声をかけてきた。ちょうど立ちくらみをおぼえた私は、青年の差し出すなまぬるい水を飲み干し…。一人でこの坂を歩いていると、死者に会うことがあるという不気味な言い伝えを描く表題作ほか、戦慄と恐怖の異世界を繊細に紡ぎ出す全12篇のホラー短編集。
家族、兄弟の絆を教えてくれる作品だろう。そして読み終わったとき、感動して大泣きするかもしれない。
優太は、父が残した手紙に書かれた“福田ヨシ”を訪ねる。その女性は、優太を待っていたと言い、父から預かったというノートをくれた。そこには、父親の恐るべき告白が書き記されており、三十年前に起きた凄惨な事件が浮かび上がる。あまりに残酷な出自を知った優太は、兄の桐人に助けを求めるが…。二転三転する事実に翻弄される兄弟の嫉妬と確執、親子の絆など深い家族愛が胸にせまる兄弟小説。
死刑と冤罪をテーマにしている。社会派ミステリーが好きな人には大当たりするかもしれない。
15年前、京都。男子学生と十九歳の女性が殺され、一人の男が逮捕された。元弁護士の八木沼悦史は、死刑囚となった息子・慎一の冤罪を信じ、一人活動をしていた。だが、息子は面会を拒絶、弁護士に無罪を訴える手記を手渡す。一方、殺された女性の妹・菜摘に、真犯人を名乗る人物・メロスから電話が。メロスは悦史に自首の代償として五千万円を要求するが―。驚愕のラスト、横溝正史ミステリ大賞の傑作・社会派ミステリ。
司法制度について書かれた小説である。最後までわからない展開にハラハラすることだろう。
「このおっさんが父さんを殺したんだ!」広島でおきた殺人事件の裁判、被害者の息子の叫びもむなしく、被告人は無罪となった。14年後、当時の裁判長が判決を誤ったと告白して殺害され、事態は再び動き出す。真実を追い求める女性弁護士、政界進出を目指す予備校講師、司法官僚の娘、14年前の被害者の息子。事件の関係者は広島に集い、衝撃の真相が明らかになる。司法格差の闇をあばく、本格社会派ミステリー!
過去に殺人などの重罪を犯した人間は更生できるのか。そのことをテーマにしている。そして、ミステリー色の濃い社会派ミステリーである。
それに、『完全無罪』と『両刃の斧』が2019年に発刊された。どちらもおすすめだが、ミステリー好きであれば、とくに『完全無罪』は必読である。絶対に楽しめるだろう。

レトルト食品工場に勤める若宮は鬱屈を感じていた。花火大会の夜、少女・花歩を殺めてしまう。花歩は母・理絵とともに、被害者が加害者と向き合う修復的司法に携わり、犯罪被害者支援にかかわっていた。13歳の娘を殺された理絵のもとに、犯人逮捕の知らせがもたらされる。しかし容疑者の供述内容を知った理絵は真犯人は別にいると確信。かつて理絵の教え子であった若宮は、殺人を告白しようとするが…。驚愕のラスト、社会派ミステリー。
テーマは児童虐待である。予想できない結末に、かならず騙されることだろう。
第9回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞作品。長崎県南児童相談所の所長が語る、ある少女をめぐる忌まわしい事件。10年前にいったい何が起きたのか―。小学校教師や小児科医、家族らの証言が当時の状況を明らかにしていく。さらに、その裏に隠されたショッキングな真実も浮かび上がる。関係者に話を聞いて回る男の正体が明らかになるとき、哀しくも恐ろしいラストが待ち受ける。
死刑囚である実の父は本当に殺人犯なのか。それに、警察権力のドロドロとした話を組み合わせている。身勝手すぎる主人公の言動に苛立ちを覚えるが、おすすめできる作品だ。
そして、下村敦史氏は2019年もあいもかわからずコンスタントに作品を発表しつづけ、ヒットを打っている。下記の記事に3作品を紹介しているので、すくなくとも1作品は“アタリ”の作品にであえるはずである。


1994年、現職の検察官が殺人犯として逮捕され、死刑判決を受けた―2015年、大学生の石黒洋平は、母が遺した写真から実の父がその死刑囚・赤嶺信勝であることを知ってしまう。苦悩する洋平は冤罪の可能性に賭け、雑誌記者の夏木涼子と私的な調査を開始する。人はいかにして罪に墜とされてゆくのか、司法とは本当に公正なものなのか、そして事件の真相は!?『闇に香る嘘』の新鋭がおくる、迫真のリーガルミステリ!!
スリの天才「僕」が世を動かす力を持つ木崎と名乗る男に運命を握られてしまう。自身の技巧を尽くし、綱渡りなスリに挑むという話である。
東京を仕事場にする天才スリ師。ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎―かつて仕事をともにした闇社会に生きる男。木崎は彼に、こう囁いた。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す」運命とはなにか、他人の人生を支配するとはどういうことなのか。そして、社会から外れた人々の切なる祈りとは…。大江健三郎賞を受賞し、各国で翻訳されたベストセラーが文庫化。
お腹いっぱいにさせてくれる作品である。
突然自分の前から姿を消した女性を探し、楢崎が辿り着いたのは、奇妙な老人を中心とした宗教団体、そして彼らと敵対する、性の解放を謳う謎のカルト教団だった。二人のカリスマの間で蠢く、悦楽と革命への誘惑。四人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国を根幹から揺さぶり始める。神とは何か。運命とは何か。絶対的な闇とは、光とは何か。著者の最長にして最高傑作。
自動車電話、伝言ダイヤル、ダイヤルQ2、ワープロ。時代の古さを感じてしまうものの、傑作であることはまちがいない。
「私を誘拐してください」小宮山佐緒理は潤んだ瞳で俺の手を握りしめた―。報酬は百万円、夫の愛を確かめるための“狂言誘拐”を頼みたいというのだ。便利屋の俺は完璧なプランを練り、見事に“誘拐”を成功させる。しかし、身を隠していた佐緒理が部屋で殺されているのを発見し…。偉才・歌野が放つ、誘拐ミステリーの白眉。
経済小説の傑作!株式相場を扱った小説で、この作品を抜くことは容易でないだろう。
時はバブル期。三十七歳の梨田雅之は、投資顧問会社社長の見崎に見込まれて『兜研』に彷徨い込むが、仕手戦に出た恩師・見崎を土壇場で裏切る。手にした大金を浪費した後、自ら仕手集団『群青』を率いて再び相場の世界に戻った梨田は、知人からの極秘情報を元に、一か八かの大勝負に乗り出した…。危ない夢を追い求めて流星のように輝く男達を描いたハードボイルド傑作長編。
この作品のことは調べないほうがいいだろう。あらゆるところでネタバレされていて辟易する。
精魂こめて執筆し、受賞まちがいなしと自負した推理小説新人賞応募作が盗まれた。―その“原作者”と“盗作者”の、緊迫の駆け引き。巧妙極まりない仕掛けとリフレインする謎が解き明かされたときの衝撃の真相。鬼才島田荘司氏が「驚嘆すべき傑作」と賞替する、本格推理の新鋭による力作長編推理。
予想できない結末を楽しんでいただきたい。
8歳で児童文学賞を受賞し天才少年と呼ばれた小松原淳は、なぜ富士の樹海に消えたのか?母親の依頼で淳の伝記を書くことになった作家志望の島崎は、膨大な資料を読み、関係者に取材して淳の人生に迫るが、やがて不気味な“異人”の影が彼の周辺に出没するようになり…。著者畢生の傑作がここに復活!
グランドマンションを舞台とした奇妙な事件を集めた短編集である。
「グランドマンション一番館」には、元「名ばかり管理職」の男、元公務員、三世代同居の女所帯から独居老人、謎の若者、はてはかなり変わった管理人までと、アクの強い人たちが住んでいる。騒音問題、ストーカー、詐欺、空き巣―次々に住人が引き起こすトラブル。そして、最後に待ち受けていた大どんでん返しとは…。希代の名手が贈る必読の傑作ミステリー連作集。
読了したとき、「まさか、そんなことはないよな」と思いながら、あることを試すと……。そのまさかなのである。そしてあまりのすごさに驚愕し、言葉がでないだろう。
二代目教祖の継承問題で揺れる巨大な宗教団“惟霊講会”。超能力を見込まれて信者の失踪事件を追うヨギガンジーは、布教のための小冊子「しあわせの書」に出会った。41字詰15行組みの何の変哲もない文庫サイズのその本には、実はある者の怪しげな企みが隠されていたのだ―。マジシャンでもある著者が、この文庫本で試みた驚くべき企てを、どうか未読の方には明かさないでください。
三角関係の男女のうち、2人が不審な死。誰が誰を殺したのか……。トリックは驚くほど単純である。その効果的なトリックにおどろくことはまちがいないだろう。
太平洋を航海するヨットの上から落とされた女と、絶海の孤島に吊るされていた男。一体、誰が誰を殺したのか?そもそもこれは、夢か現実か?男の手記、関係者の証言などで、次々と明かされていく三角関係に陥った男女の愛憎と、奇妙で不可解な事件の、驚くべき真相とは!?
犯人をあてることができる人はいないだろう。すばらしい作品である。
“やりすぎミステリー”の旗手が贈る、100パーセントの推理小説!“血の池”に浸かった死体には両手首がなかった。難事件に挑むのは、孫におんぶされたおばあちゃん!名刑事の未亡人・城沢薫の“位牌推理法”が炸裂する!?
石田衣良氏の池袋ウエストゲートパーク系が好みであれば、楽しめるはずである。
そして『ヒートアイランド』のつづきは、
『ギャングスター・レッスン (文春文庫)』
『サウダージ (文春文庫)』
『ボーダー ヒート アイランドIV (文春文庫)』
このシリーズは全部で4作、順番は上記のとおりである。
渋谷でファイトパーティーを開き、トップにのし上がったストリートギャング雅。頭のアキとカオルは、仲間が持ち帰った大金を見て驚愕する。それはヤクザが経営する非合法カジノから、裏金強奪のプロフェッショナルの男たちが強奪した金だった。少年たちと強奪犯との息詰まる攻防を描いた傑作ミステリー。
さいごに
上記の55作品は、わたしはどれも傑作だと思っている。ひとりでも多くの人に、一作でも多くの傑作に出会えることを願っている。
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