今回は、ドイツミステリーの女王と呼ばれているネレ・ノイハウス氏の「刑事オリヴァー&ピア」シリーズを紹介していく。3作目の『深い疵』という作品でネレ・ノイハウス氏のことを知った人は多いだろう。
まず、翻訳出版された順番は、
『深い疵』
『白雪姫には死んでもらう』
『悪女は自殺しない』
『死体は笑みを招く』
『穢れた風』
『悪しき狼』
上記のとおりだが、執筆順ではない。上記を執筆された順に列挙すると、
(3)『悪女は自殺しない』
(4)『死体は笑みを招く』
(1)『深い疵』
(2)『白雪姫には死んでもらう』
(5)『穢れた風』
(6)『悪しき狼』
()内は翻訳出版された順番の数字
すべて未読の方であれば、執筆順のとおりに読むことをおすすめする。
またシリーズを通して張り巡らされてきたいくつかの伏線が、今作あたりから回収されはじめます。
P573(訳者、酒寄進一氏のあとがきより)
それに、執筆順を参考にして読んだほうが人物模様などもわかりやすくなるだろう。ということで、つづいて『悪しき狼』のあらすじと感想を書いていく。
身元不明の少女の遺体がマイン川で発見される。少女の遺体は火傷、挫傷、擦過傷血腫がはっきりと見てとれ、何年にもわたって虐待されていたことがわかった。そして、顔面、肋骨、手足の合計24箇所の骨折が確認されるとともに、
「ただこの事実に肌の白さや、レントゲン写真からわかる多孔質(たこうしつ)の骨構造を重ね合わせれば、この少女は長期にわたって日の光から遮断されていたとみなせるだろう。つまり監禁されていたことになる」
P111
9年前にもおなじような事件があったという。そして事件の捜査をはじめるが、半分ほど読んでも、まったく捜査が進んでいないことに気づくのである。だが、あらゆる事件が起きるので読者を退屈させることはない。
それから3/4ほど読んだときも、靄がかかった状態であり、「どこにたどり着くのか」と必死に頭をめぐらせることになるだろう。つまり、構成がうまいのである。
しかし、子供への虐待、少児性愛、母娘関係などをテーマにしているので、どうしても虐待や少児性愛がムリだという人は、読むのをやめたほうがいいかもしれない。
それと、この作品の欠点は登場人物が多いことだろう。巻頭に登場人物一覧があるので数えてみたら、37人だったのである。
そのため人物を記憶するのに四苦八苦する。しかし、おもしろい作品なので読んでみてほしい。さいごにもう一度、執筆順を書いておくので参考にしていただければ幸いである。
川で少女の死体が発見された。長期間にわたって虐待された痕があり、死因は溺死だと判明する。だが不可解なことに、少女は川の水ではなく塩素水で溺れていた。おぞましい犯罪に、刑事オリヴァーとピアたちは必死の捜査をはじめるが、二週間たっても少女の身元が判明しない。さらに殺人未遂事件も発生。警察関係者の想像を絶する凶悪犯罪の全貌とは。欧州席捲の大人気警察小説!「刑事オリヴァー&ピア」最新作!
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