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横山秀夫氏の『ノースライト』「64」から6年!待望の長編ミステリー

横山秀夫氏のノースライトという本国内ミステリー
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横山秀夫氏の「ノースライト」が出版されたことで、「64」から6年が経過していたことを知った。そんなにまえだったかと思いつつ、月日が流れるのは早いものだと感じたのである。

横山氏の作品には駄作がない。そのため、安心して読むことができる。心待ちにしていた本書の発売日に、わたしはさっそく書店へ駆けつけたのである。

「横山ミステリー史上、最も美しい謎」と帯に書かれた『ノースライト』の冒頭は、主人公の青瀬という男性が駅のホームにいたところ、携帯電話が着信を告げるのである。電話をかけてきた人物は所長の岡嶋という男だった。

毎度のことで、労いの言葉を掛けられると内心苦笑する。歳は同じ四十五歳。ともに一級建築士で、大学の建築学科も同期とくれば、片や卒業、片や中退が、所長と雇われの差になったと誰もが納得する。P5

冒頭の数ページを読んだだけで切なくなる。若かりしころは同程度だったのに、数十年後の現在は差をつけられている……。自分が現状に満足している場合はいいが、そうではないときはとてもつらいだろう。

しかし、「人間万事塞翁が馬」「禍福は糾える縄の如し」である。つまり、「腐らずに前向きにがんばろう!」ということだ。わたしはなにを書いているのだろうか……。

そして電話の内容は、

大手出版社が年明けに出した『平成すまい二〇〇選』はオールカラーの豪華本だった。ここ十四年間に建てられた日本全国の個性的な住宅を厳選したと謳い、その巻末近くに「Y邸」のイニシャル名称で信濃追分の家が載った。P5

浦和の夫婦が「Y邸」を見たいということで住所を教えた。だが、その奥さんから「誰も住んでいないようすだった」という内容のメールが送られてきたのだと伝えられる。

「Y邸」は、4か月前に吉野一家に引き渡している。

吉野は何も言ってこなかった。実際に住んでみての感想も、クレームの類の電話も、入居しましたの葉書一枚寄越さなかった。だが――。
初めは違った。設計を依頼しに来た時の吉野は、ある意味「友達以上」だった。
〈すべてお任せします。青瀬さん、あなた自身が住みたい家を建てて下さい〉
魔法でもかけられたかのような、脳が痺れる一瞬があった。本に取り上げられたから特別なのではなく、仕事を引き受けた時の気持ちが特別だった。そのY邸を「なかった仕事」にされた。
吉野の築後の長い沈黙は、青瀬の心を曇らせ、熱を奪い、頑なにさせた。P9

無反応はもっともつらい……。そのため青瀬はY邸を見に行ったが……家のなかには電話機と「タウトの椅子」が置いてあっただけで、引っ越してきたようすはなかったのである。

吉野一家はどこにいったのか、もしかして事件に巻きこまれてしまったのか……。

その謎を追うという内容である。物語の大半は、建築士の仕事の話がゆっくりすすんでいき、「ブルーノ・タウトについて」「元妻と娘、そのふたりとの関係」「小さな謎」の3つの話がところどころにある。

「『64』から六年、待望の長編ミステリー」と帯に書かれている。しかしミステリー色の薄い作品なので、『64』などの警察小説をイメージして読むと、期待ハズレと思うかもしれない。

『ノースライト』は、「再生」をテーマにした、上質な大人向けのミステリー小説なのである。

一級建築士の青瀬は、信濃追分へ車を走らせていた。望まれて設計した新築の家。施主の一家も、新しい自宅を前に、あんなに喜んでいたのに…。Y邸は無人だった。そこに越してきたはずの家族の姿はなく、電話機以外に家具もない。ただ一つ、浅間山を望むように置かれた「タウトの椅子」を除けば…。このY邸でいったい何が起きたのか?

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