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『沼の王の娘』カレン・ディオンヌ氏-バリー賞-最優秀作品-

カレン・ディオンヌ氏の、沼の王の娘という本海外ミステリー
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「父を狩る。生き延びるために。」「衝撃のサバイバルスリラー」「映画化決定!」と帯に書かれている。これこそほんとうのオヤジ狩りである。

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女性主人公は、夫と娘ふたりの4人で暮らしている。ある日、主人公がラジオをつけると、

「繰り返します。州警察によると、児童誘拐、強姦、ならびに殺人の罪で仮釈放なしの終身刑に服していた受刑者がミシガン州マーケットにある最重要警備の刑務所から脱走しました。この脱走犯は、移送中の看守ふたりを殺害したうえ、
(中略)
脱走犯のジェイコブ・ホルブルックは、誘拐した娘を十四年にわたって監禁するという、その凶悪性の高さで全国的に注目を集めた……」P21

誘拐した娘を14年にわたって監禁……その娘の子どもが主人公なのである。そして脱走した父親のせいで、警官が事情を訊くために主人公の自宅にやってくる。

母親と逃げだした15年まえから現在までのあいだ、父親とは1度も会っていないし話してもいない。そのことを告げられた警官たちは帰ったが、秘密にしていた父親のことが夫のスティーブンに露見してしまう。

「入ってください」スティーブンがついに言う。わたしにではなく、警官たちに。彼はわたしの手を放すと、警官たちを玄関のポーチへ導き、家に入っていく。わたしが入念に積みあげてきた第二の人生はこうしてもろくも崩れ去った。P43

家族に危険が迫っていると感じた夫は、家族全員で夫の両親のところに避難することを提案する。しかし、主人公はひとりだけ残ることを伝える。父親のことを秘密にしていたことで夫の信頼を失ったため、

この状況を正したければ、そう、家族を取り戻したければ、方法はひとつしかない。父を捕まえることだ。なによりも誰よりも家族が大事。そう思っていることをスティーブンにわかってもらうには、それしかない。P57

ということで、脱獄した父親を捕まえる物語である。だが、7割くらいは父親と暮らしていたときのことを回想し、現在の父親を追う描写がほとんどすすまない。それに、現在のほうはあっさり終わってしまう。

そのため、『父と娘の緊迫の心理戦』という文言を鵜呑みにして読むと、がっかりするかもしれない。ほかにも『鳥肌が立つほどの衝撃のクライマックス!』と帯に書かれているが、終わり方はストレートなので衝撃的ではない。

しかし回想シーンは、ぶっとんだサイコ父親との暮らしぶりが描かれているため、とても楽しめるだろう。

現在のほうがあっさりしているのでをひとつ減らして、おすすめ度はという感じである。

拉致監禁犯の男とその被害者のあいだにできた娘―それがわたしだ。原野の沼地で生き抜く術を熟知した父を太陽のように崇めながら、12歳まで電気も水道もない小屋で育った。そう、あの日までは。そして今日、終身刑の父が看守を殺して逃走した。父を捕まえられる人間がいるとしたら、父から手ほどきを受けたわたし以外にいない。父と娘の緊迫の心理戦、究極のサバイバルゲームがいま始まる!

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