所轄魂シリーズは笹本稜平氏の警察小説で、所轄署の現場の刑事である父は警部補、その息子はキャリア警官で警視という、父子が活躍する物語である。
そして『最終標的』までの順番は下記のとおり。
所轄魂シリーズの順番
1作目の『所轄魂』は2015年にドラマ化された。
ということで、『最終標的: 所轄魂 (文芸書)』のあらすじと感想を書いていこうと思う。
「最終標的」のあらすじと感想
都内でひき逃げ事件が発生する。
「新しい目撃証言が出てきたんだよ。現場からニ〇〇メートルほどの狭い裏道を、猛スピードで走り抜けていった車を見た人がいてね。シルバーグレーのベンツなんだが、スポーツタイプのけっこう値の張る車種らしい」
「メルセデスAMG C43という車で、足立ナンバーでした。その目撃者がえらく車好きでしてね。車種は一目で特定できたそうです」
p14
その結果、8人ほどまで絞りこむことができ、最有力候補の男にたどり着く。しかし、男の父親が面倒な人物だったのである。与党所属の国会議員で、党三役もやったことのある大物だった。被疑者はその三男の彰夫(あきお)、絵に描いたようなろくでなし……。
近隣で聞き込みをしてみると、彰夫の評判は芳しいものではなかった。中学のころから万引きや自転車泥棒で何度も補導され、高校に入ってからは暴走族に所属して、人身事故や暴力沙汰を起こしたが、すべて父親の財力で示談にしたという。
大学もそこそこのところに金の力で押し込んだものの、ほとんど通いもせずに二年で退学。以後は親のすね齧りのパラサイト生活で、齧っても齧りきれないほどそのすねが太いから、素行が改まることもけっきょくなかった。親の力を笠に着て近隣の人間ともしばしば諍いを起こし、地元の鼻つまみ者の筆頭だという評判だった。
p20〜21
そして、父親もクズなのである。若いころは名古屋でワルをやっていて、暴力団と組んでえげつない地上げをやっていた。
政界入りしてからも、暴力団とのつながりを匂わせて政敵をビビらせている。そんな父親が、国家公安委員長に就任する可能性が高いという。
その話が浮上するとともに、ろくでなしの三男が参議院に立候補するという話をつかむのだった。
「その彰夫が、そのうち参議院に立候補するってわけですか。殺人未遂の犯人が、なんのお咎めもなく国会議員になるなんて世も末ですよ」
p67〜68
父親が国家公安委員長に就任した場合、警察庁長官、警視総監をはじめとする警察のトップ人事にも深く関与することになる。
そのため、警察組織の人間たちはそれを阻止することに注力し、息子の犯罪を立証するための証拠を集めようとする。
しかし相手は手を替え品を替え、先まわりして、捜査を妨害してくるのである。政治家の鉄板である『入院→病院の個室→面会謝絶』という方法は使用されない。
エンターテイメント小説としては硬い文章なので、読みづらいと感じてしまう人がいるかもしれない。だが、勧善懲悪ものを好む人であれば、楽しめるはずである。
今野敏氏の警察小説が好きな人にはおすすめしたいシリーズであり、
より楽しむためにも、上記の順番どおりに手にとったほうがいいだろう。
今野敏氏のユーモアあふれる、おすすめのシリーズに興味がある方は下記の記事をどうぞ!

それと、笹本稜平氏のほかの作品には、『越境捜査シリーズ』がある。最新刊のシリーズ7作目である「転生」が2019年04月16日に発売されたので、下記の記事を参考にしていただければ幸いである。

贈収賄事件を追っていた城東署の強行犯捜査係長・葛木邦彦と、警察庁のキャリア組である邦彦の息子・俊史の父子。しかしあと一歩のところで黒幕の国会議員が射殺され、真相は闇に葬り去られてしまう。警察に政治家から様々な圧力がかかるなか、城東署管内で轢き逃げ事件が起こる。目撃者の証言により、事件はすぐに解決するはずだったが、容疑者が大物衆議院議員の息子と判明。捜査はまたもや警察VS.政治の様相を呈してきて…。
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