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真保裕一氏の『おまえの罪を自白しろ』∼誘拐犯の要求は罪の自白∼

真保裕一氏の「おまえの罪を自白しろ」という本国内ミステリー
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【「代議士の孫が誘拐された。犯人の要求は、前代未聞、記者会見での「罪の告白」。政治家としてのすべての罪を明らかにせよ!」「圧倒的なリアリティで迫る誘拐サスペンス」】と帯に書かれた、真保裕一氏の『おまえの罪を自白しろ』のあらすじと感想を書いていく。

公園

自宅には充分な広さの庭があっても、三日に一度はママ友と誘い合わせて公園にくり出している。
こうした近所づきあいも、あの女には仕事のうちなのだった。夫のため、父や兄のため、ひたすら笑顔を振りまく。ひと目で高価とわかるアクセサリーは身につけていない。娘が腕白小僧に倒されても、目を吊り上げもしない。妻の人柄までが一族の評判に直結する。
夫は市会議員の二期目。兄は県議の三期目で、早くも党県連幹事長の座に就く。父親は地元では名をしらね者はいない衆議院議員――宇田清治郎(うだ せいじろう)。P4

プロローグの犯人視点である。しかし、上記の時点では誘拐を実行していないので、厳密にいうと犯人ではないのだが……。そして、誘拐を計画している男のプロローグは、このように締めくくられるのである。

残る問題は、子どもの始末だ。
ひと思いに息の根を断つのが最も安全だろう。が、いくら三歳児でも、遺体の処理には危険がつきまとう。四肢の切断には手間がかかるし、血痕が現場に残りかねない。昨今は、街中に防犯カメラがあふれる。迂闊な行動は身の危険につながる。
事件のほとぼりが冷めたあとで、海へ投げ捨てるのが最も安全に思えた。それまで、腐敗臭をどう抑えたらいいか……。
効率と安全性と成否の公算を秤にかけ、着実に計画を実行していくのみだった。P5

3歳の女の子を誘拐したのち、生きたままかえす気はないらしい。「ツカミ」は抜群におもしろいのである。

それから、男が計画していたとおりに誘拐は成功し、埼玉県警の刑事が動きだす。だが、すぐに横槍が入るのだった。

今度は刑事部長直々の伝令だった。しかも、警察庁指定事件になる――。
社会的影響の大きい凶悪または特異な事件で、複数の地域にまたがって組織的な捜査が必要と見なされた場合、警察庁は都道府県警と協議し、捜査方針を決定する。要するに、県警はこの先、警察庁の下働きをせよ、というのだった。P23

おおかた宇田清治郎が国家公安委員長に泣きついたのだ。埼玉県警の田舎刑事では頼りにならない。警察庁のエリートを総動員して、必ず孫娘を救い出せ、と。暗躍を得意とする政治家であれば、苦もなく策は打てる。
通報からまだ一時間ほど。誘拐と決まったわけでもない。この動き出しの早さが、のちのち問題になるおそれはありそうだった。P24

そして宇田清治郎の事務所のホームページに、犯人の書き込みがあった。『明日の午後5時までに記者会見をひらき、罪をすべて自白しろ』と……。

「○○について」ではなく、「すべて」を明らかにしなければならないのである。そうなると、政治生命を絶たれるだけではないのだ。刑務所に入ることになるかもしれない。それに、総理大臣を含め、あらゆる人に迷惑をかけることになる。

一方、警察組織はお手上げ状態なのである。女児がさらわれたのは農道だったため、目撃者はいないしカメラもなかった。脅迫文は匿名ソフトを使って書きこまれたので、犯人を特定することができない。

「宇田一族、総理官邸、警察組織、犯人の頭脳戦!」なのだが……。

誘拐ものの醍醐味は、身代金の受け渡しだと思う。どのようにして奪取するのか……それがないので不満を感じる人がいるかもしれないが、これはこれでありである。

犯人の動機が明かされたときは、「いや、いや、それはねーだろ」とツッコミを入れたくなる。「リスクの高い誘拐に手を染めるより、ほかの方法を選択したほうがよかったのでは?」と……。動機は重要でないため、べつにいいのだが……。

さいごに宇田清治郎のセリフを紹介したいと思う。

「相手が困っている時、直ちに動こうとするのは、本物の友人か、取り繕った偽善者と決まっているからだ。――」P61

清治郎の次男(父の秘書)に言ったセリフである。この言葉には納得してしまった。

クズ男たちの言動、とくに清治郎のクズっぷりを楽しむ作品である。清治郎のような人が父親だったら……憂鬱になるだろうな……。

衆議院議員の宇田清治郎は、総理がらみの疑惑を糾弾されていた。その最中、三歳になる孫娘が誘拐された。犯人の要求は、罪の自白!タイムリミットは、翌日の午後五時。犯人の動機は宇田家への怨恨か。総理の罪を暴くことにあるのか。保身のための駆け引きを模索する官邸サイドと戦う宇田一族。幼き少女を救うための「家族の戦い」が始まる!

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