ユーモアミステリー小説といえば、だれの作品を思いうかべるだろうか?
わたしの頭にうかんだのは、黒川博行氏の疫病神シリーズと、伊坂幸太郎氏の死神シリーズだ。そのふたりをぬきそうなほどの作品を書くのが藤崎翔氏である。
藤崎翔氏のおすすめ作品を、ランキング形式で発表していく。そのため、さいごまでつきあってもらえたら、わたしが小躍りするだろう。
藤崎翔氏の作品リスト
【改題】殺意の対談 (2017年4月 角川文庫)
藤崎翔氏のユーモアミステリーをランキング
ストーリー性とユーモア度をわけて評価していきたいと思う。そして、ふたつをあわせた結果を順位にしていく。
6位.おしい刑事
ストーリー性
ユーモア度
8〜9割ほどの推理は正しいが、画竜点睛を欠き、後輩の刑事に手柄を横取りされてしまう。そのおしい刑事の名前が「押井(おしい)」なのである。
名前のつけ方が安易であるため、稚拙に感じてしまう。少年マンガであれば許されるかもしれない。だが、小説でやるのはいかがなものか。そうわたしは思ってしまうので、減点せざるをえない。
内容は稚拙ではないのだが……。
推理力抜群なのに、いつも最後の最後で事態が大逆転、手柄をあと一歩で逃し、同僚に横取りされてしまう押井刑事。周囲の呼び方はもはや「惜しい刑事」としか聞こえない。次こそ事件を完全解決し、汚名を返上するべく邁進する押井だが、ああ、やっぱり今日もまた…。
5位.恋するおしい刑事
ストーリー性
ユーモア度
上記の続編である。灰田絵奈という後輩女性刑事とコンビを組むが……。
【灰】田【絵奈】。その名前を聞いて、不吉な予感がするらしい。遊び心があるのか、それとも幼稚なのか……。好みの問題かもしれない。
冴えた推理を披露するものの、必ずあと一歩で周囲に手柄を奪われる、もはや神業的能力を持つ押井刑事。絶望の淵にいる彼を救ったのは、同じ署に配属された美しい後輩女性刑事だった。ただ、彼女の灰田絵奈という名前を聞いて、押井の胸に不吉な予感がよぎる―。
4位.お隣さんが殺し屋さん
ストーリー性
ユーモア度
内容は想定していたとおりだった。しかし、それなりに楽しめるはずだ。
1位の作品がなかったら、この作品の評価はちがっていたかもしれない。
専門学校入学のために田舎から上京した美菜は、隣人に挨拶することに。お隣さんの雄也はどこか陰のある長身の青年で、美菜は好意を抱く。一方、雄也は美菜にある物を見られ動揺する。それは一発の銃弾だった。雄也はそれを使った「仕事」を思い出す。ある弁護士を闇に葬った、恐るべき出来事を。さらに雄也の今度の仕事場は、美菜が通う専門学校で…。純朴女子学生と危険な殺し屋が交錯する、衝撃的ラストのユーモアミステリ!
3位.神様の裏の顔
ストーリー性
ユーモア度
デビュー作である。そのためこの作品を基準にし、評価している。
藤崎翔氏の作品を読んだことがない人は、まずこの作品を手にとればいいだろう。
神様のような清廉潔白な教師、坪井誠造が逝去した。その通夜は悲しみに包まれ、誰もが涙した。…のだが、参列者たちが「神様」を偲ぶ中、とんでもない疑惑が。実は坪井は、凶悪な犯罪者だったのではないか…。坪井の美しい娘、後輩教師、教え子のアラフォー男性と今時ギャル、ご近所の主婦とお笑い芸人。二転三転する彼らの推理は!?どんでん返しの結末に話題騒然!!第34回横溝正史ミステリ大賞“大賞”受賞の衝撃ミステリ!
2位.こんにちは刑事(デカ)ちゃん
ストーリー性
ユーモア度
おっさん刑事が輪廻転生し、部下の子どもとして産まれてくるのである。
部下の捜査に協力するのだが、赤ちゃんなので言葉はうまくしゃべることができないし、歩いたり走ったりすることもできないのだ。
笑いあり涙ありの、いい作品である。
ベテラン刑事・羽田隆信は後輩の鈴木慎平と殺人事件の捜査中、犯人に撃たれ殉職した―はずだった。目がさめると、なんと鈴木家の赤ちゃんに生まれ変わっていた!?最高にカワイイ赤ちゃんの身体と、切れ味鋭いおっさんの推理力で、彼は周囲で巻き起こる難事件に挑む!笑って泣ける衝撃のユーモア・ミステリー、誕生!
1位.私情対談(殺意の対談)
ストーリー性
ユーモア度
まちがいなく傑作!未読の人のために、説明はしないでおこうと思う。
周辺に人がいないところで読むことをおすすめする。わたしは30秒ほど笑いがとまらず、読みすすめることができなかった。
そして、しっかり練られたプロットに感動することだろう。ブラックユーモアが好きな人には、とくにおすすめである。
人気作家・山中怜子と、若手女優・井出夏希。新作映画の原作者と主演女優の誌上対談は、表向きは和やかに行われたのだが、笑顔の裏には忌まわしい殺人の過去が…。同様に、ライバル同士のサッカー選手、男女混成の人気バンド、ホームドラマの出演俳優らが対談で「裏の顔」を暴露する時、恐るべき犯罪の全貌が明らかに!?ほぼ全編「対談記事+対談中の人物の心の声」という前代未聞の形式で送る、逆転連発の超絶変化球ミステリ!
2作品を追記(2019年5月1日)
「指名手配作家」(2019年4月16日)が発売されたので、前回の「時間を止めてみたんだが」という作品と、新作の「指名手配作家」、ふたつの順位を追記。いまのところ、おもしろくないものを書いていないため、どの作品も楽しめるはずである。
4位.時間を止めてみたんだが
ユーモア度はかなり高めなので、笑い転げたい人におすすめの作品!詳しくは下の記事を参考にしていただければ幸いである。
3位.指名手配作家
他の作品と比較すると、ユーモアは控え目であるものの、ハラハラドキドキさせられるピカレスク・サスペンスである。
さいごに
藤崎翔氏の欠点はタイトルがダサいことだと思う。「ちゃん」や「さん」をつけるのは、やめたほうがいいのではないだろうか?
『お隣さんが殺し屋さん』は『隣人の殺し屋』でよかったような気がするのである。
たとえば、伊坂幸太郎氏の『死神の精度』が、『死神さんの精度』や『死神ちゃんの精度』だったら、あきらかに稚拙なタイトルだなと思ってしまうだろう。
まあ、売れっ子作家の伊坂幸太郎氏であれば、ダサいタイトルをつけたとしても、ある程度は売れるだろうけれど……。
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