4人の関係者、3つの遺体、2人の刑事、そして1人の女。その女と関わった人間は、すべてを失う――
『本性』の目次
『本性』の【目次】
- 第1章.お見合いパーティー『梅田尚之』
- 第2章.無垢材のローテーブル『小田切琢磨』
- 第3章.サボテンの花『青木繁子』
- 第4章.同窓会『小谷沙帆里』
- 第5章.ドロッと濃いアイスコーヒー『宮下真人』
- 第6章.スポーツ新聞と仕出し弁当『安井隆三』
- 第7章.アンケート『宮下真人』
- 第8章.団地の獲物『安井隆三』
第1章.お見合いパーティー
梅田尚之は教師である。40歳、独身。親の資産はそこそこあり、伴侶を見つけるためにお見合いパーティーに参加しつづけている。
たしかにこの会は――とくに男性は、10万円を超える年会費を一括前納することが条件の――それなりの収入があることを前提とした会員で、構成されている。P14
そのため、社会的地位が高い人たちがあつまるので、ネームプレートはカタカナで表記されている。インターネットネットで氏名を検索されたとき、特定しにくくするためである。
そこで出会ったのが「サトウミサキ」という女性だった。その女性とカップルになることに成功した梅田尚之は、交際経験が少なく、ソープランドの女性と体の関係になったことはある。
しかし、素人を相手にしたことはないのだ。つまり、素人童貞である。
厳密にいえば素人童貞ではない。一度だけあるその経験が、この話の重要な部分になっている。本人はその経験を認めるくらいなら、素人童貞と言われたほうがマシだという。
そして、女性経験の少ない梅田尚之は手玉に取られ、サトウミサキにのめりこんでいく。梅田尚之と梅田の母親、そのふたりの人生は破滅に向かっていくのである。
30歳の小田切琢磨は転職をくりかえし、最終的にはフリーターに落ち着く。飲食店のアルバイトをやっているが、ろくでなしの店長のせいで責任者のような立場を押しつけられていた。
ほかのアルバイトは使えない人ばかりである。その尻拭いをさせられることに腹を立てつつ、アルバイト生活をつづけていた。それと同時に転職のための就職活動をしていたが、届くのは不採用通知ばかりである。
尻拭いのひとつがクレームの処理であり、いつものように頭を下げに行くと、謝りに行った客の女性にデートに誘われる。食事代、ホテル代、20万円のテーブル、それらの代金をすべて支払ってくれる女性だった。
しかし、どのような仕事をしているのか、どこに住んでいるのか、名前以外の情報はいっさい教えない女性なのである。わかっていることは、サトウミサキと名乗ったことだ……。
青木繁子は独居老人であり、そこに世話役として入りこむのがサトウミサキである。この章がもっとも衝撃をうけると思う。どのように書いてもネタバレになりそうなので、これ以上は書かないでおく。
あることについての脅迫状が届くのである。これから読む人の楽しみを奪うことになってしまうので、「あること」の内容を書くことはひかえたいと思う。
脅迫者が接触してくるのは同窓会だろうと推測し、小谷沙帆里は待ちかまえていた。その推測は的中したのである。トイレの鏡のまえで化粧をなおしていると、サトウミサキが接触してきたのだ。そこから女性同士の争いがはじまる……。
あとは読んでたしかめていただきたい。
宮下真人と安井隆三はともに刑事であり、コンビを組んでいる。若手刑事の宮下は、ただの運転手としてあつかわれる。安井に呼び出され、目的地に連れていく。捜査に同行させてもらうことはできないのである。
単独捜査をする安井の足あとを、宮下が追っていく。その結果、徐々に真相に近づいていくのである。
まとめ
短編集ではなく、長編小説である。悪女ものが好きな人は楽しめるはずだ。下ネタが多めなので、苦手な人は避けたほうがいいだろう。伊岡瞬氏はほかにもおもしろい作品を書いているので、未読の人は下の記事を参考にしていただければ嬉しいのである。

4人の関係者、3つの遺体、2人の刑事、1人の女。クライムサスペンス! 他人の家庭に入り込んでは攪乱し、強請った上で消えてゆく正体不明の女〈サトウミサキ〉。別の焼死事件を追っていた刑事の元に15年前の名刺が届いたことから、過去を探り始めた刑事たちは、ミサキに迫ってゆくが。
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