今回は、伊岡瞬氏の作品を紹介しよう。おもしろい作品が数多くあり、そのなかから5作品を選んだのである。未読の人は読んでみてほしい。
1.いつか、虹の向こうへ
少女との出会いをきっかけに、警察、ヤクザと関わることになる。元刑事の主人公は、お節介とも思える戦いに挑んでいくのである。
筋金入りのお人好しであることと、異様なタフさがうまくいかされている。作中にででくる「虹売り」の話がグッとくるのだ。この作品がデビュー作であり、傑作である。タイトルもすばらしい。
尾木遼平、46歳、元刑事。ある事件がきっかけで職も妻も失ってしまった彼は、売りに出している家で、3人の居候と奇妙な同居生活を送っている。そんな彼のところに、家出中の少女が新たな居候として転がり込んできた。彼女は、皆を和ます陽気さと厄介ごとを併せて持ち込んでくれたのだった…。優しくも悲しき負け犬たちが起こす、ひとつの奇蹟。第25回横溝正史ミステリ大賞&テレビ東京賞、W受賞作。
2.代償
伊岡瞬氏といえばこの作品だろう。読む人を選ぶ作品なので、イヤミスが苦手な人は読まないほうがいいかもしれない。
平凡な家庭で育った小学生の圭輔は、ある不幸な事故をきっかけに、遠縁で同学年の達也と暮らすことに。運命は一転、過酷な思春期を送った圭輔は、長じて弁護士となるが、逮捕された達也から依頼が舞い込む。「私は無実の罪で逮捕されました。どうか、お願いです。私の弁護をしていただけないでしょうか」。裁判を弄ぶ達也、巧妙に仕組まれた罠。追いつめられた圭輔は、この悪に対峙できるのか?衝撃と断罪のサスペンスミステリ。
3.もしも俺たちが天使なら
詐欺師、元刑事、ヒモの3人で大きな犯罪に立ち向かうストーリーである。イケメン詐欺師を中心として、大きな悪と立ち向かうクライムサスペンスなのだ。軽い感じなので読むやすく、万人うけする作品だろう。
セレブからしか金を獲らない詐欺師・谷川涼一。〝ヒモ歴〟更新中だが喧嘩は負け知らずの松岡捷。不始末で警察を追われた元刑事・染井義信。はみだし者三人の前に美しい娘が現れ、「変な男に実家が乗っ取られそう」と助けを求めてきた。彼女は何者? 怪しい男の背後で動く組織とは? 最高にクールでタフな男たちの、友情と闘いのクライムノベル。
4.痣
妻を殺された真壁刑事に挑戦するように起きる連続冷凍殺人事件。さりげなくはられた伏線を見逃さないようにしてほしい……。
個性的な刑事たちが活躍するため、警察小説が好きであれば満足できるはずである。
文庫化(2018年11月)された。下のリンクは、
【上→文庫本】
【下→単行本】
となっている。
真壁を引き止めるかのように、奥多摩分署管内で連続美女冷凍殺人事件が発生。浮き足立つ署員たちの中で、ひときわ動揺している刑事がいた。二週間後、妻の命日を機に辞職すると決めている真壁修だ。被害者の左胸にあった木の葉のような印。それが、在りし日の妻の左胸にあった痣と酷似していたのだ。妻を殺した犯人は、死んだはずだった…。なぜ犯人は、俺を挑発するのか―。
5.悪寒
予想外の展開を楽しみたいのであれば、この作品である。『痣』の主人公だった真壁刑事がでてくるので、より楽しむために『痣』をさきに読んでおくほうがいいだろう。
2019年8月21日文庫化。下のリンクは、
上→文庫版
下→単行本
となっている。
大手製薬会社「誠南メディシン」に勤める藤井賢一は、会社の不祥事の責任を一方的に取らされ、東京から山形の片田舎にある関連会社「東誠薬品」に飛ばされた。それから八か月ほど経ったある夜、東京で娘・母と暮らす妻の倫子から、不可解なメールを受け取る。賢一の単身赴任中に、一体何が起きていたのか。その背景には、壮絶な真相があった。
さいごに
伊岡瞬氏の作品をはじめて読む人は、『いつか、虹の向こうへ』か『もしも俺たちが天使なら』のどちらかを最初に選ぶことをおすすめする。強烈な『代償』を1作目に読むと、
①つぎの作品のハードルがあがり、つぎに読む作品が薄味に感じてしまう。
②伊岡瞬氏のことが嫌いになり、つぎの作品を読む気がなくなってしまう。
上記の可能性があるからだ。それほど『代償』は強烈な作品である。そして、『痣』と『悪寒』は文庫化されていないのであとまわしにしてもよいだろう。
もし、『代償』を読了して嫌いになったとしても、ほかの作品を読んでほしいのである。きっとあなた好みの傑作にたどり着くことができるはずだから……。

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