『超絶の本格ミステリ!』という帯の文言は、偽りはないのか⁈読んでみて確かめてみたのである……。
ということで、まずは西澤保彦氏の『幽霊たち』の目次を記載すると、
- 現在、2018年から
- 過去、1960年から1979年まで
- 未来、2018年まで
上記のとおり三部構成である。それと、巻頭に家系図が記載されている。家系図を見たとき、いやな予感はあったが、それは的中してしまった……。
現在、2018年から
「加形野歩佳(かなた・のぶよし)を知っているか?」
そののように刑事に訊かれたのは、主人公の横江継実(よこえ・つぐみ)である。加形家のことは知っていたが、(のぶよし)という男のことは知らない。
それなのに、殺人に手を染めて自首した加形野歩佳に犯行の動機を訊ねると、「横江継実という人物に訊いてほしい」と言っているのだとか……。
主人公としては、意味がわからないのである。会ったことがない人にそんなことを言われるのだから……この冒頭の謎は魅力的なので、「これはおもしろくなるぞ!」とわたしは思ったのだが……。
それからは主人公の娘が登場し、つづいて幽霊が登場し、この章は終わるのである。
過去、1960年から1979年まで
この章が大半を占めていて、『起承転結』の『承』の部分である。さいごに感想を書くので、ここでは説明しないでおく。
未来、2018まで
『起承転結』の『転結』となり、幽霊たちがつぎつぎとあらわれ、真相があかされていく。
感想
登場人物が多すぎる、個性的な名前ばかりなので憶えにくい、このふたつのせいでかなり損している。読んでいる途中、なん度も家系図を見なければならない。そのため、集中できないのである。
わたしは2度読んだ。斜め読みと拾い読みをして読了した2度目のあと、理解することはできたが、だからといって「ふ〜ん」という感じである。それほどおどろかされることはないのに、理解するための労力が大きすぎるからだろう。
そして、「西澤保彦氏のおすすめは?」と訊かれた場合、好き嫌いがはっきりわかれる作品なので、本書をおすすめすることはない。
『幽霊たち』は西澤氏らしい作品だが、わたしの好みではなかったということである。
死んだ者たちと交信可能な特殊能力を持つミステリ作家・横江継実のもとを刑事が訪ね「加形野歩佳(33)を知っているか?」と訊く。加形野歩佳は多治見康祐(57)を殺害し、早々に自首。殺された多治見は横江の元同級生で、加形は横江の親戚の息子だった。彼は、自首はしたが動機を語らず、ただ「理由を知りたければ横江継実に訊いてくれ」と語っているという。横江は加形とは面識もなく存在も知らなかったが、加形の父や多治見と過ごした40年前、幾つもの血族の婚姻が相関する岩楯一族と暮らした子ども時代を思い出す。すると記憶とともに饒舌な幽霊たちが入れ替わり立ち現れたのだった。見えなかった復讐と、さらなる復讐。しなくていい殺人の果てしない果て。40年前、資産家・岩楯一族を壊滅した秘密と嘘と誤解が、今、再び血の惨劇を引き起こす!超絶の本格ミステリ!
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