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【2019年9.10月発刊】裏社会や事件を扱った4冊の書籍を紹介する!

一橋文哉氏の『外国人ヒットマン』溝口敦氏の『教養としてのヤクザ』北尾トロ氏の『なぜ公務員はいっぺんにおにぎり35個を万引きしたのか』野口和樹氏の『半グレと金塊』という4冊の本小説以外の本
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一橋文哉氏の『外国人ヒットマン』、溝口敦氏と鈴木智彦氏の『教養としてのヤクザ』、北尾トロ氏の『なぜ元公務員はいっぺんにおにぎり35個を万引きしたのか』、野口和樹氏の『半グレと金塊 博多7億円金塊強奪事件「主犯」の告白』という4冊の本を紹介する。

一橋文哉氏の『外国人ヒットマン』という本
1.5

タイトルを見れば推測できるとおり、外国人ヒットマンについて書かれた書籍である。帯の「未解決事件の陰に」という文言を見たときのわたしは、

5RIRA
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ほんとうかいな?

さすがに言いすぎてはないかい?

そのように思いながら読みはじめたのだ。悪い予感が的中した。まったくおもしろくない。過去の著者の出版物を宣伝するための書籍という感じだ。

ヒットマンの薄い情報をさらに引きのばし、過去の書籍の内容につけたして終わりなのである。それに、蛇足が多すぎて辟易させられるのだ。

本書の内容に関連しているのは以下のとおりである。

上記の5冊の書籍を紹介してくるのだ。ところどころに「詳しくはこちらの本を」というように……。あげくの果てには、巻末の参考文献の箇所にも、上記の5冊の書籍だけを列挙しているのである。

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自分が書いた本を参考文献って……

わたしは呆れてしまった。

ヒットマンについて書いてあるところは全体の1/4ほどで、残りの1/4が蛇足、残りの2/4が過去の書籍に書いてあること……という感じなので、わたしのように上記の5冊を読んだことがある人におすすめすることはできない。5冊のなかに未読のものがあったとしても、『外国人ヒットマン』以外の本をさきに手にとったほうがいいだろう。

どうしても気になるのであれば、文庫化されるのを待つことである。『経済ヤクザ (角川文庫)』はおもしろいので、一読の価値があると思う。

外国人ヒットマン…彼らはいかに作られるのか?香港、フィリピンなどの裏社会事情に迫る。

2.教養としてのヤクザ

溝口敦氏の『教養としてのヤクザ』という本
4.5

取材を始めて25年……ヤクザはずいぶん変わった。インターネット全盛の今、組織によっては、連絡や通達がLINEで送られてくるし、抗争現場の凄惨な動画や、組織事務所内の貴重な映像さえ、ネットに流出するようになった。ある若い衆に「親分のどこに惚れていますか?」と質問したところ「(LINEの)スタンプの使い方がうまいというか、泣けるというか、じーんときます」という答えが返ってきたこともある。P5(鈴木智彦氏のはじめにより)

冒頭の「ツカミ」がすばらしいのである。

5RIRA
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スタンプの使い方がうまく、泣けるのか……そりゃ〜親分に惚れてしまうのは頷けるよ

そして、第1章の〈ヤクザと食品〉では、新たな資金源はタピオカドリンクだという。

まったく暴力団経営には見えないから、客も知らずにタピオカドリンクを買っている。たぶん、働いている店員も、自分が暴力団のフロント企業でアルバイトをしているとは思っていないでしょう。
試しに買ってみたんですが、うす茶のドリンクの底に黒いタピオカが溜まっていて、経営者の幹部に「黒い人間たちの集合体である犯罪組織の暗喩あんゆですか?」と茶化したら、「たまたま黒い方が若者にウケるから使っているだけだ。こじつけにもほどがある」と呆れられました(笑)。
【中略】
これから暴力団経営のタピオカドリンク屋が増えるんじゃないですか。
溝口 ヤクザでも目端が利いて商才のある人間は、そうやって儲けられるんだけどね。P16〜18

この話題に関連した書籍は、高級海産物の密漁が暴力団のシノギになっているということが書かれた『サカナとヤクザ: 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』だったり、大阪の食肉卸大手(ハンナングループ)の元会長である浅田満と暴力団の関係を暴露した『食肉の帝王 (講談社+α文庫)』だったりと、どちらも「ヤクザと食品」についての内容であり、そして2冊ともおもしろい。おすすめである。

溝口氏と鈴木氏の対談形式で書かれた本書も、ヤクザを知るための入門書としては良書なので、興味がある人は読んでほしい。

わたしが気になった箇所を引用し、『教養としてのヤクザ』のところを締めくくりたいと思う。

鈴木 もし東大出のヤクザがいたら、それだけでスクープになりますよね。だから、私、東大出のヤクザをずっと探しているんです、この20年くらい(笑)。だけど、まだ見つかっていない。
溝口 世間とは逆で、暴力団では大卒は出世できないとされている。良くて二次団体の幹部が頭打ちです。
鈴木 まさに逆学歴差別ですね。山口組の直参に大卒っていましたっけ?P126〜127

5RIRA
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たしかに東大出のヤクザがいたら、びっくりするよな〜

芸人の闇営業問題で分かったことは、今の日本人はあまりにも「反社会的勢力」に対する理解が浅いということだ。反社とは何か、暴力団とは何か、ヤクザとは何か。彼らと社会とのさまざまな接点を通じて「教養としてのヤクザ」を学んでいく。そのなかで知られざる実態が次々と明らかに。「ヤクザと芸能人の写真は、敵対するヤクザが流す」「タピオカドリンクはヤクザの新たな資金源」「歴代の山口組組長は憲法を熟読している」―暴力団取材に精通した二大ヤクザライターによる集中講義である。

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3.なぜ元公務員はいっぺんにおにぎり35個を万引きしたのか ビジネスマン裁判傍聴記

北尾トロ氏の『なぜ元公務員はいっぺんにおにぎり35個を万引きしたのか』という本
4.0

「なぜ元公務員はいっぺんにおにぎり35個を万引きしたのか」というタイトルを見たと同時に魅了されたわたしは、内容を確認することはなく、すぐに購入してしまったのである。

過食症だろうか、クレプトマニアだろうか、はたまた『裸の大将』の山下清氏に憧れていたのだろうか……そのように考えながら読みはじめたのだ。

本書は数ある裁判のなかから、ビジネスマンが起こした事件を中心に傍聴したものだ。サブタイトルには“ビジネスマン裁判傍聴記”とあるが、裁判にそんなジャンルはなく、内容を表すための造語である。
【中略】
だから、『プレジデントオンライン』からビジネスマンが起こした事件の傍聴記を書いてほしいと依頼されたときは戸惑った。ビジネスマンが被告人で、事件の内容にもコクがあるような裁判に遭遇する確率は低いと思ったからだ。
しかし、それは杞憂だった。さまざまな職業に就いていた被告人が、犯罪に至るまでのやむにやまれぬ事情をトツトツと話す。ある被告人は家族を思う気持ちをにじませ、ある被告人は犯罪者になることと引き換えにしても守りたかったポリシーを訴える。
一方で、会社から不正な金をダマし取って捕まったのに開き直って堂々としている被告人や、職業を転々としながら罪を重ね、更生の機会を失ってホームレス生活を余儀なくされた被告人もいる。
【中略】
でも、被告人席に座る彼らも、少し前まではあなたと同じ側にいて、ふとした邪心や油断、運命の悪戯によって犯罪に手を染めた人たちだとしたら……。P3〜4

一寸先は闇である。わたしたちはいつも危険と隣合わせの生活を送っているのだ。ということで、本書を読んだあとにもっとも記憶に残った裁判の内容を紹介する。

110ページからの『“忖度夫婦”だから専業主婦は援交に走った』の内容は、30代の専業主婦が被告人で、罪状は売春防止法違反である。

被告人は風俗店などの組織に属さず、出会い系サイトなどで相手を探して援助交際という形の売春行為を重ねていた。

しかし捕まった日は、約束した相手が現れず、やむなく道行く人から男を選んで声をかけた結果、その相手が刑事だったために捕まってしまったのだ。

スリムな美人、子どもはいない、夫はある企業の中堅社員、専業主婦として不自由なく暮らしていた。にもかかわらず、どうして売春行為に手を染めたのか……。

原因は忖度の連鎖である。リストラされた夫は、妻を不安にさせたくなかったことを理由に、職を失ったことを黙ったまま転職先を探しはじめた。

働いていたときのように毎朝家を出る。夜になってから帰宅する。そのような生活を繰り返しながら、次の仕事を探していたのだった。これが夫婦間の最初の忖度である。

一方、妻は夫が職を失っていることに気づいていたが、プライドを傷つけてはいけないと思い、気づいていないふりをするのだ。第2の忖度である。しかし、夫は気づいていないふりをしてくれていることを知り、それに感謝しつついままでどおりの生活を送るのだった。3つ目の忖度である。

そして、そんな生活が1年ほどつづくと、通帳の残高に不安を覚える。精いっぱい頑張っている夫のために、妻は自分が内助の功を発揮する番だと決心するのだった。4つ目の忖度だ。働いていることがバレてはいけないと思い、売春にたどり着くのである。

そのあと、なにかしらの収入があることに気づいたが、妻がなにをして稼いでいるのかを訊かず、5つ目の忖度となるのだった。忖度の連鎖である。

そして捕まってしまい、「いまの気持ちはどうか」と弁護人に訊かれたとき、「捕まってホッとした」と被告人である妻は答えたという。

最初の夫の忖度がなかったら……どこかの時点で話し合っていたら……このような結末になっていなかっただろう。しかし、最初の夫の行動は、男性であればかなり理解できてしまうのではないだろうか……。「リストラされたが、つぎの就職先は決まったから」と事後報告をして安心させたい。その気持ちは痛いほどわかってしまう……。

そして、タイトルの件は読んでたしかめてほしい。

第2章の[法廷の人に学ぶビジネスマン処世術]は、「被告人(表情・外見)編」「被告人(言い訳・答弁)編」「弁護士編」「裁判長編」「検察その他編」の5ジャンル、15本の原稿を収録した。
前口上はこのくらいにしておこう。「現在は無職」の被告人たちが起こした、悲喜こもごもの事件と、法廷で垣間見た話術や駆け引きをぜひ読んでほしい。
めくるめくビジネスマン裁判の世界へようこそ!P5(まえがきより)

第2章は上記のとおりビジネスマン処世術が書かれている。対人関係やビジネスシーンに役立つことなので、興味があったら手にとってほしいのである。

公務員、税理士、部長・課長、タクシー運転手、専業主婦…善良な人が罪を犯し、まさかの転落した切ない実話33。人には誰にも「別の顔」がある。

4.半グレと金塊 博多7億円金塊強奪事件「主犯」の告白

野口和樹氏の『半グレと金塊』という本
3.0

宮迫博之氏の、半グレとの「親密写真」が話題となった博多7億円金塊強奪事件。ほとんどの人が記憶にあることだろう。

その事件の主犯である野口和樹氏は、なにを語るのか……読んでみたのである。

半グレで前科者の意見など、世間の方々は聞きたいと思わないかもしれない。
しかし、私にも語るべき真実がある。いまなお多くの謎が残されている事件の、核心部分についてである。
多くの人は、報道を見て私たちが「強奪」した7億5000万円分の金塊がどこへ行ってしまったのかが気になっていたのではないだろうか。いったい何があって、誰が得をしたのか。
結論を言えば、私やその仲間たちの手もとに金塊が残ることはなかった。全ては霧散してしまったのだ。
本書では、その「真相」をすべて明かしたい。P11〜12(プロローグより)

『私やその仲間たちの手もとに金塊が残ることはなかった。全ては霧散してしまったのだ。』って……。

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えっ? なにがあったんだ!

プロローグを読んだときはそのように思ったが、読了したときには著者の言い訳が多いことに疲れてしまうのである。

たとえると、スピード違反で捕まった人が、「ほかにも交通違反している人たちがいるのに、どうして俺だけを捕まえるんだよ!不公平だろ」と言っているような感じだ。

本書の出版により、知られざる詐欺事件が解明される契機になってくれればと思う。そして、身をもって痛感した、真実を追求しようとしない警察、司法の歪みが正される一助なれば幸いである。P245〜247

『一助』のあとの「と」が抜けている?

本書に記載されているのを、ここではそのまま引用している。

そして話を内容にもどす。上記の引用文はラストのページの一部である。「1.税金対策のために金塊を盗まれたことにしたいので、盗む役をやってくれと依頼される。報酬は盗んだ金塊の半分。警察沙汰にもならないし、ヤクザも関わっていない。このような条件である。」→「2.(1)が成功して60キロの金塊を得た結果、4億数千万円を手にした。しかし、投資詐欺に遭ったため、金塊で得たお金以上に損をする。」→「3.(1)と(2)の黒幕は同一人物?」

(1)と(2)には、その怪しげな話に乗らないという選択肢があったにもかかわらず、著者はやることを選択して行動したのである。自分も騙されたから、すべてを明るみにしてほしいと言っているのだ。すべてを明るみにしたところで、著者が「黒色→灰色」「黒色→白色」になるわけではない。罪が軽くなることもないだろう。

しかし、これがフィクションの小説として読んだとしたら、かなりおもしろいのではないだろうか。闇社会の暗部を書いた、謎、謎、謎の連続にきっと楽しめるはずである。

どんな犯罪小説をも超越する驚愕の手記。博多7億円金塊強奪事件「主犯」の告白。「伝説の半グレ」首領が明かした芸能人脈、宮迫博之との「親密写真」、そして消えた金塊7億円のゆくえ。

さいごに

4冊すべて読んでもらえれば、最低でも1冊くらいは好みの本に出会えるはずである。裏社会や事件を扱った書籍が苦手な人はまったくダメかもしれないが……。

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