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宇佐美まこと氏の『展望塔のラプンツェル』ミステリー好きがうなるラスト!

宇佐美まこと氏の『展望塔ラプンツェル』という本国内ミステリー
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宇佐美まこと氏の『展望塔ラプンツェル』を紹介する。「弱者に光をあてる書き下ろし長編ミステリー」「驚きのラスト‼」という帯の文言は、まったく嘘偽りのない惹句だったのである。

ということで、あらすじと感想を書いていく。

灯台と喜ぶカエル

  1. 児童相談所の職員の男性
  2. 高校を中退してアルバイトで稼いでいる男性
  3. 不妊治療をしている女性

上の3人の視点で多摩川市を舞台とした物語が進んでいく。未読の人が楽しめるように、ここからさきは『2』の視点のあらすじだけにふれることにする。

廃屋の倉庫の外階段で、那希沙なぎさは震えていた。その震えがかいにも伝わってくる。海は双眼鏡を目に当てて、東の空を眺めていた。
「貸してよ」
那希沙は双眼鏡に手を延ばす。
「待てよ」
海は、すっと双眼鏡をずらす。
「ケチ」
「ええと、うお座とみずがめ座の間だろ?」
「知ってんの?カイ。そんな星座」
「知るか。でも調べたんだ。ちゃんと雑誌に出てた」
その科学雑誌を、海は昨日書店で万引きしたのだった。P36

上記が『2』の冒頭である。そしてカイとナギサは、5.6歳の男の子が膝を抱えて座り込んでいるのを見つけるのだ。

ふたりはすぐに男の子の傍らにいき、話しかけてみる。しかし、なにもしゃべらないし、無反応なのである。ふたりが言っていることは理解しているようだが、いっさい反応しないのだった。

「お前、ほんとにしゃべらねえな。名前くらい言えよ」
それでも男の子は無表情でのろのろと立ち上がった。
「そんなら俺が名前をつけてやるよ。名前がないと、不便だもんな」
手に持ったままだった双眼鏡を、思い出したように目に当てて、空を眺めた。すっかり明るくなった青空が見渡せた。
「お前の名前は、ハレだ」
那希沙が「何?それ。まんまじゃん」と言ってケラケラ笑った。
「漢字を当てたら『はれ』。晴れるの晴れ」
「この人はカイっていうの。海っていう字でカイ」P44

ふたりは男の子にご飯を食べさせたり寝る場所を提供したりするが、カイが寝ているあいだに忽然と姿を消してしまったのだ。自宅に帰ったのだろうと推測し、ふだんの生活にもどったのだった。

だが、ハレはふと現れ、すぐに黙って姿を消すのだ。子どもが夜中にいなくなるのに、親はいったいなにをしているのだろうか……。

カイはお金を貯めてナギサといっしょに多摩川市を出ていくことを目標にしている……その目標は叶うのか……という内容である。

『2』の視点の箇所を読み進めるのがもっともつらい。暴力、性犯罪、児童虐待、育児放棄などのオンパレードなのである。ナギサのおかれた状況の描写は、目を背けたくなるほどだ。

コンクリ事件の被害者を思いだしてしまうほどなので、かなりきついのである。男性でもきついのに、女性ならそうとう不快感を覚えるだろう。

「その子は死ぬために生まれてきたんじゃない」と帯に書いてあるので、明るい内容ではないことは読むまえに予想していたが、それでも予想以上に暗くて重い内容なのである。

しかし、ミステリー小説が好きな人は読んたほうがいいだろう。一読の価値はじゅうぶんにある。

  1. 児童相談所の職員の男性
  2. 高校を中退してアルバイトで稼いでいる男性
  3. 不妊治療をしている女性

冒頭に記した上記の3つの視点が複雑にからみ合っていて、それがラストに明かされたとき、読者はきっと読んでよかったと思うはずである。

何日もかけて小刻みに読むことはおすすめしない。それに、斜め読みや流し読みもやめたほうがいいだろう。

真相が明かされたあとに説明のようなものがあるが、「そんな描写あったっけ?」とか「複雑でわからん」ということになりかねない。

ふつうに読めば理解できるはずである。暴力、性犯罪、児童虐待、育児放棄などがどうしてもダメな人にはおすすめできないが、すばらしい作品なので、ぜひ手にとってほしいものである。

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